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時効が成立した事件。元国家犯罪捜査局長官ラーシュは、犯人を見つけ出すことができるのか?そして犯人は裁かれるのか?
物語の始まりから、ラーシュは危機的状況である。
「状況を受け入れろ」彼は戸惑いながらも、順応し仲間達と捜査を開始する。
北欧ミステリらしい作品ではあるのだが、ウィッドに富んだ会話、ユーモアセンス、読み心地が抜群にいい。
お気に入りの介護士マチルダ(家庭的な刺青っ子)も含めた彼ら彼女らの正義。それに向かうまっすぐな希望と断罪の戦い。
幼女殺害、時効成立、初動捜査の失敗。スウェーデンの社会問題に言及し、現実感のある事件。
安楽椅子探偵、名探偵の挫折と復活。
着実に証拠を集める。読者は終盤における決断に期待するだろう。
私としては、展開の落とし所が予想通りだったので、そこまで過度な期待はしてはいけない。
なんと母国では、派生したシリーズがたくさんあるらしい。翻訳が望まれる。
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面白かった。幕切れも潔いです。リスベットみたいに、とかカッレくんとか、ミレニアムネタが放り込まれるところなど、北欧ミステリーの懐の深さを感じました。しかし、北欧ものにはこういう犯罪ストーリーが多いですね。陰鬱になります。目には目を、で終わらないところも印象に残りました。この作者の初の邦訳とのことですが、また読みたいです。
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定年退職した老刑事が、時効を迎えた殺人事件の謎を解く。犯人は分かっても、その先がスリリング。なかなかの収穫だった。
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国家犯罪捜査局の元凄腕長官ヨハンソン。脳梗塞で倒れ、命は助かったものの麻痺が残る。そんな彼に主治医が相談をもちかけた。牧師だった父が、懺悔で25年前の未解決事件の犯人について聞いていたというのだ。9歳の少女が暴行の上殺害された事件。だが、事件は時効になっていた。ラーシュは相棒だった元刑事らを手足に、事件を調べ直す。スウェーデンミステリの重鎮による、CWA賞インターナショナルダガー、ガラスの鍵賞等五冠に輝く究極の警察小説。
これは収穫。ユーモラスな筆致が、事件の悲惨さや理不尽さを和らげている。他の作品もぜひ。
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退職した警官が過去の事件の調査を依頼され‥
スウェーデンの人気シリーズの最終作。
ガラスの鍵賞など、各賞総嘗めにした作品です。
警官と言っても、このラーシュ・ヨハンソン、ただの警官じゃない。
凄腕で知られる、国家犯罪捜査局の長官だったのです。
退職後のある日、脳梗塞で倒れます。
入院先の担当医の女性から、父親が気にしていたという、昔の事件を調べてほしいと頼まれます。
牧師だった父が、犯人を知っているという懺悔を聞いたというのです。
懺悔は本来秘匿すべきものなので、犯人の名前まではわからないのですが。
すでに時効になった、25年も前の未解決殺人事件。
かっての部下にも連絡を取り、少しずつ調べるうちにのめり込んでいきます。
不自由な身となり命の危険を感じつつ、生への執念を燃やすように。
ヨハンソンは兄との共同の事業でも成功しているし、年の離れた美人の妻もいる幸せ者。
頑固なヨハンソンのもとへ、見た目が派手な若い女性の介護士が来たり、ヨハンソンを上回って押しが強い兄が心配して送り込んだ屈強な若い男性が傍に付き従ったり。
思わぬ闘病&安楽椅子探偵生活を描く筆致はユーモラスです。
当初は雲をつかむような話だった昔の事情が、微妙に違った角度で見え始める。
部下たちが全幅の信頼を寄せている様子も微笑ましい。
さぞ豪胆で頼りになる上司だったんだろうな、と。
しかし倒れたというのに、好きなものを食べるのを全然やめないの、この男。
引退したとはいえ、時効とはいえ事件を抱えているのだから、もう少し健康に気を配ったほうが!という気はしますが。
最終作なのでオールスターキャストなのでしょう。
この作品からの翻訳で、これっきり?なのかどうか。
ちょっと、惜しいですねえ。
次はどの作品が翻訳されるか?楽しみにしてますよ。
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どんでん返しもなし、視点人物の交代もなし、二つの時間軸の行ったり来たりもなし。おまけに、時効が成立しているので犯人を見つけても逮捕することができない。今どきこんな小説を書いて、読む人がどこかにいるのだろうか、と思うのだが大勢いるらしい。本邦初訳ながら、作者レイフ・GW・ぺーションはスウェーデン・ミステリ界の重鎮で、本作で探偵役を務めるヨハンソンとヤーネブリングのコンビはシリーズ化されているという。
国家犯罪捜査局の元長官ラーシュ・マッティン・ヨハンソンは二〇一〇年七月五日、スウェーデンいちのホットドッグを食わせる<ギュンテシュ>の屋台に車を停め、ホットドッグを買い求める。車の運転席に座り、食べようとしたとき、後頭部が突然アイスピックで刺されたような痛みに襲われる。脳塞栓だった。発見が早かったので一命はとりとめたものの右半身に麻痺が残り「角の向こう側が見通せる」と噂された頭の切れが戻らない。
主治医のウルリカから相談をもちかけられたのが、事件に関わることになったきっかけだ。牧師だったウルリカの父はある殺人事件の犯人を知っている女性の懺悔を受けたが守秘義務を守り、口を閉ざしたまま死んだ。一九八五年六月に起きたヤスミン・エルメガンという九歳の少女の強姦殺人事件で、初動捜査の遅れにより事件は迷宮入りとなる。事件解決を遅らせる要因となったのが、翌年二月のオロフ・パルメ事件だ。現職の首相が殺され、警察は多くの人員をそちらに割いた。難民のイラン人少女の殺害はその影響をもろに受けたのだ
ヨハンソンは、体の自由が戻らぬままに捜査を開始する。アームチェア・ディテクティブならぬ、ベッド・ディテクティヴだ。その手となり足となるのが元同僚で今は定年退職をした元捜査官のボー・ヤーネブリングであり、義弟のアルフ・フルト。それにコンピュータに詳しい介護士のマティルダと兄が送り込んだ頑強なマックスというロシア生まれの青年だ。警察小説でありながら捜査本部は病室と自宅だが、ヨハンソンを慕う部下は多く、協力を惜しまない。
事件の捜査の進捗とヨハンソンの回復と停滞が日付けとともに日誌のように記されてゆく。淡々とした捜査日誌ではなく、体が思うように動かせない病人の苛立ち、子ども扱いされる不満、大好きなホットドッグや酒を止められ、ヨーグルトやミューズリーといった健康食品を食べさせられる不満が、随所に書き留められる。ほぼヨハンソンの視点で語られているため、会話の後に内言が多用され、言わずに置いたこともすべて語られるので、読者はいやでも主人公と感情を共有することになる。
よくある刑事とちがって、ヨハンソンは資産家だ。長兄とすすめている事業も順調で、歳の離れた若い妻との仲もいい。子どもの頃から狩りをしてきて銃の扱いには長けている。食いしん坊で、不摂生とストレスが心臓に負担をかけており、健康的な生活を心がけねば危険だと医者に言われていても、リハビリ中にもかかわらず、ヤーネブリングやマックスの手を借りて、レストランで好きなものを食べ、酒を飲む。ほぼ同じ年頃なので、気持ちはわかるが妻にしてみれば困った亭主である。
北欧ミステリと���えば、本作もそうだが、幼児性愛や、虐待といった陰惨な事件を扱うことが多い。その反面、それを追う警察仲間の人間関係はけっこう親密で、ユーモアに溢れているのが、ある種の救いになっている。本作もまさしくそれでヨハンソンを囲む人々の元長官に寄せる愛情がひしひしと伝わってくる。もっとも、本人はなかなか回復しない病状の方に気が行って、それをありがたく思うところにまで気が回らない。
純然たるミステリとはいえない。取り寄せた資料を読み解くうちに、ヨハンソンは犯人像をしぼりこむ。特に重要なことは、ヤスミンの両親が知らない人に注意することを徹底していたという点だ。顔見知りの犯行ということになる。しかも、犯行の手口から見て、ふだんはまともな暮らしをしていることがうかがえる「配慮のあるペドフィリア」。撒き散らした精液の量から見て歳は若い。
これだけプロファイルされていたら、巻頭に掲げた登場人物の紹介をあたれば、まだ登場していなくても犯人は分かる。問題は時効が成立済みの犯人にどう対処するか、という点になる。髪の毛一本すら現場に残さない犯人から、どうやってDNAのサンプルを採取するのか。あるいは、万が一それが一致したとして、逮捕できない犯人をどう処罰するのか。正直言って、この解決法は納得のいくものではない。ひねりのないのも善し悪しだ。
二〇一〇年、スウェーデンは殺人罪などの重大犯罪は時効を廃止した。しかし、施行日以前までに起きた犯罪は時効が成立してしまう。その矛盾をどうするのか、という大きな問題を突きつけている。ヨハンソンという人物の魅力と、その周りに集まってくる友人、知人の活躍で持っている作品である。スウェーデン料理についても逐一紹介されていて、料理好きにはちょっとたまらない。これを機に未訳のシリーズ作品が、訳出されると思われる。本作には他のシリーズ物からカメオ出演している人物も多いらしい。何かと愉しみな北欧ミステリの雄の登場である。
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脳梗塞で倒れた元犯罪捜査局長官が未解決で時効を迎えた女子殺人事件の捜査に乗り出す北欧ミステリー。登場人物が多く冗長なので、読了までに大分時間を要した。解説を読むと本作は著者の初邦訳作品ながら、長らく続いたシリーズの完結作らしく、集大成のオールスター作品ゆえの密度のようだ。序盤〜中盤は話が動かずじれったいが、重要参考人に繋がる中盤からギアが入り、犯人との直接対峙に臨む終盤の高揚感は心地良い。主人公のヨハンソンが500頁超の本編を経て導き出した犯人への制裁を一気に覆す結末だが、この無情さも味といえば味なのか。
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時効を迎えた犯罪の犯人を罰することはできるのか。これを主題にしてラーシュ・マッティン・ヨハンソンは捜査に取り組む。ラーシュはすでに引退し、しかも脳梗塞で死の縁から甦った老人。彼を中心にしたチームが、25年前の幼女強姦殺人事件の犯人を追い詰める。健康に不安を抱えた探偵が膨大な資料から推理をし、仲間の助力もあって解決へと相成るのだが、その過程の描写が素晴らしい。緊迫と弛緩の間で、緊張感を持ちながらテンポ良く読める。犯人の確定はあっさりしているが、それ以上に登場人物のドラマに目が釘付けになる。
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7月-1。3.5点。
元警察庁長官。脳梗塞で車椅子となるが、昔の未解決事件を捜査。少女の強姦殺害。
時効を迎えた事件だが、犯人を追い詰めていく。
まあまあ。ラスト100頁辺りからスピード感あり。
結末は結構「あっ」という感じだった。
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特に凝ったプロットではなく、ヒネリがあるわけでもないが、結構楽しんで読めた。シリーズ物かなと思いながら読んでいったら、あらら、これでは続きようがないわという結末。それもそのはず、これは本国では人気のシリーズの最終作なんだそうだ。著者初の邦訳らしいが、さかのぼって刊行されるのだろうか。
探偵役は引退した敏腕刑事。このおじさんがなんだかすごくエラソーで、ちょっと鼻につく。冒頭いきなり急病で入院するのだが、担当医師(女性)を「お前」呼ばわりして言いたい放題。その後も、世話になる介護士の娘さんも「お前」と呼んで、失礼なことを言いまくる。それなのに、若くて別嬪の奥さんとは相思相愛で、周りから愛されてたりして、なんか納得いかんわ~。
これも「ガラスの鍵」賞受賞作品だが、北欧ミステリって日本人に合うのかもしれない。自分としてはよりエキゾチックなヨハン・テオリンや、インドリダソンが好きだが(あ、「ミレニアム」は別格ね)、ちょっとクサしてしまったが、これもおもしろかったです。
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25年前の未解決の某事件を、退職した元犯罪捜査局長官が解く。
しかし、事件はすでに時効。主人公の元長官は、物語の冒頭で右半身麻痺になる…。
どのように真相に辿り着き、その結末をじっと待った。
時効と刑罰。「目には目を歯には歯を」とあるが、結末と、結末の結末…。
本書の著者は、この作品が初邦訳。
後書きによると、海外では人気があるらしく、この『許されざる者』もシリーズものの最終作のよう。
魅力溢れる、登場人物たちの前回までの活躍を読みたいと思った。
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国家犯罪捜査局の元長官ヨハンソン。脳梗塞で倒れ命は助かったが、麻痺が残る彼に、主治医が25年前の少女暴行殺人の未解決事件の捜査を依頼する。有能な捜査官だったヨハンソンは、友人や元部下の力を借りながら、犯人を見つけ出そうとする。
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国家犯罪捜査局の元凄腕長官ヨハンソン。脳梗塞で倒れ、命は助かったものの麻痺が残る。そんな彼に主治医が相談をもちかけた。牧師だった父が、懺悔で25年前の未解決事件の犯人について聞いていたというのだ。9歳の少女が暴行の上殺害された事件。だが、事件は時効になっていた。ラーシュは相棒だった元刑事らを手足に、事件を調べ直す。スウェーデンミステリの重鎮による、CWA賞インターナショナルダガー、ガラスの鍵賞等五冠に輝く究極の警察小説。(アマゾン紹介文)
面白かった…のですが、ちょいちょいと不満というか首をかしげるようなところが。
キャラクターは各々魅力的で、しかも味方サイドは有能ぞろい。これじゃあ犯人相手じゃ役不足かなぁと。
事件の真相に近づいていく興奮はありましたが、基本的に過去の事件なので、二転三転ということもなく。
結果、面白いのに消化不良という微妙なところに落ち着きました。
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原書名:DEN DÖENDE DETEKTIVEN
ガラスの鍵賞
著者:レイフ・GW・ペーション(Persson, Leif G. W., 1945-、スウェーデン・ストックホルム、小説家)
訳者:久山葉子(1975-、兵庫県、翻訳家)
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読んでも読んでも終わらないなかなかの長編だった。でも特捜部の方が断然おもしろい。訳にちょっと違和感、どうして6l0代の主人公にわしとか、かたじけないとか言わせるのかな