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ビッグヒストリー、面白かった。自分も著者と同じく、偶然こそ面白いと思う。エピローグで自分が生まれた確率という偶然に言及するのがとても印象に残った。
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現在ある世界が様々な偶然の結果生じた、膨大な可能性の中の一つに過ぎないということを、主には地質学・生物学的観点から説いた一冊。6章までは宇宙物理学・地質学の観点から、7章以降は生物学の観点からの記述。アメリカ史や大航海時代と地球科学的イベントの関係についての記述は、どこか「ブラタモリ」的なところがあった。今ある地形を形成した氷河期の氷床や、大陸移動が少しでも違っていれば、全く異なる人類史が展開され得たという一連のストーリーは興味深かった。一つ一つの選択が後々大きな違いを生み出すかもしれないということを考えると、その重さに圧倒されそうになるが、結局のところ最善を知ることなどできないので、あまり深く考えても仕方ないのかもしれないと思う。
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著者は、恐竜絶滅隕石衝突説でその分野では有名な方らしい。地球物理学が専門だが、そこから拡げた地球の歴史を含む全物語を「ビッグヒストリー」と呼ぶ。著者は、「世界」の物語を、宇宙、地球、生命、人間の4つの領域の組み合わせで過去全体をパノラマ的な視点から説明する、と最初に宣言する。自らをビッグヒストリーの研究者と任じるのを読み、相当に期待が高まった。
最初に大まかな感想を書くと、期待が大きかっただけに少し肩透かしではあった。著者にはまだまだ抽斗がありそうなので、もう少し分厚い内容の本にしてもよいのではとも感じた(無駄に長い本が多く、そう感じる本は珍しいが)。宇宙、地球、生命、人間の領域を総合的に解説するというが、宇宙の成り立ちでいうとビッグバン後や宇宙の膨張はもっと詳しく解説されている本がいくつもある。例えば、ローレンス・クラウスの『宇宙が始まる前には何があったのか?』や『偉大なる宇宙の物語』などを挙げることができる。この本の特長は地球の歴史にあるのかもしれないが、その部分でも例えば、主要成分である酸素、マグネシウム、ケイ素、鉄という宇宙では希少な元素がなぜ地球に固まってあるのかという疑問の説明について、ケイ素は詳しい説明があるが、他の元素については若干手が抜かれている感じがする。著者の専門分野である地球物理学からケイ素の話が一番しやすかったのかもしれない。リサ・ランドールの『ダークマターと恐竜絶滅』が簡単に紹介されているが、彼女の推測の方が宇宙と地球・生命の歴史の意外な関連を感じさせて、荒唐無稽さもあって面白い。
生命の話でいうと、これは参考文書にも挙げられているが、ニック・レーンの『生命の跳躍 – 進化の10大発明』がハードな本だが絶対的に面白い。この本で紹介されている熱水噴出孔の話などはそこから取られていて、実際に海洋で発見されたところは著者の専門分野と重なるのかもしれないけれども、少しでも深く理解をしようと思うとこの本の内容では足りないだろう。また、三葉虫の目の話など生命進化の話に関しては『眼の誕生』などがよいだろう。
人間については、これもまた他に良い本がたくさんある。最近の有名どころでも、ジャレッド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』やユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を挙げることができる。ネアンデルタール人との混血含めた遺伝学に基づいた人類進化の話であれば、ステファン・ペーボの『ネアンデルタール人は私たちと交配した』やさらに最新の情報が含まれる『交雑する人類』の方を読むべきだろう。
少し期待外れだったのは、宇宙・地球・生命・人間、の中でもしかしたら自分の興味が一番低いのが地球だからなのかもしれない。幅広いテーマについて、比較的コンパクトにまとまっていて、特に専門のプレートテクトニクスを絡めたところなどでは単純に面白いなと思うところもあり、よい本と言えるかもしれない。個人的な志向からは、もしかしたら領域を拡げずに、4つの領域の中で「地球」によりフォーカスして寄り添った方がさらに面白くなったかもしれないなと思うところ。もしかしたら、遺伝子という鍵が見つかった生命や人間に比べて、また物理学の法則がある��宙に比べて、岩石くらいしか手に入る鍵がない地球にはまだまだあいまいなところがたくさんあるのかもしれず、それがこの分野に自分がまだ興味を惹かれていない理由なのかもしれない。
最初に抱いた期待と、生まれた若干の不満と、補完するであろう引用した本たちのことを考えると、自分が求めているものは著者のいうビッグヒストリーそのものなのかもしれない。ビッグヒストリーは、かつてないほどピースが埋まってきている。もちろん、まだ探るべきスペースはそこかしこに残っている。そこには、われわれはどこから来て、どこに行くのか、といういまだ問いになる以前の言葉が横たわっているのかもしれない。
いずれにせよ、またそれにしても、今自分がここにいてこんなことを書いているのは、とても不思議なことだ。そして、その話題が出るのであれば、人間原理にも触れねばなるまい。ましてや「ありえない」と書名にその意味を含んでいるのであるから。少し評価が微妙な本。
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『宇宙が始まる前には何があったのか?』
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/416376870X
『偉大なる宇宙の物語 ―なぜ私たちはここにいるのか?―』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4791770390
『ダークマターと恐竜絶滅 新理論で宇宙の謎に迫る』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4140816953
『眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く』
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4794214782
『ネアンデルタール人は私たちと交配した』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/416390204X
『サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福』
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/430922671X
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著者は米国の地質学者。
主に地質学的な観点から地球地理、生命、文明を論じている。
NYからSFまでのアメリカ大陸横断鉄道に乗車してのアメリカ地質史の紹介は圧巻。
地球が今この状態であることが如何に偶然によるものか、という意味でありえない138億年というタイトル。(原題はMost Impossible Journey)。
最後に自分が存在することがいかにありえない確率であるかという数字で締めくくるのだが、これは何となく著者の感動が空回りしてる。
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地球の歴史には夥しい数の偶然が作用している。大きくは、月をもたらした衝突、支配動物が恐竜から哺乳類に変わった小惑星衝突。人間の歴史においても、地質的に形作られた地理的要素が大きく影響を及ぼしている。
地理や地形を所与のものとして捉えるか、多数の可能性の中のひとつとして捉えるかで、見え方が全く変わる。進化が連続的必然ではなかったと、今までの認識が変わりました。
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図書館本。先日読んだ恐竜の世界史に著者の名前が出てきていたので、早速読了。
宇宙誕生から考えると138億年もの歳月が経っているという。人類史から考えると途方も無い時間だ。宇宙が生まれ、地球が生まれ、そして単細胞生物から人類が生まれ、その長い歴史は何か一つでも違っていればわれわれは誕生していない。そのルーツから言うと自分が存在するのは奇跡のように思える。
内容としては宇宙誕生から地球、生物の話、世界の地理の成り立ちなど多岐にわたる。どの話にも共通するのは全ては上記のような唯一無二の存在と言う事だろうか。
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宇宙は138億年前のビッグバンから生まれました。本書は、宇宙の誕生から現在の人類の繁栄までの138億年にわたる壮大な歴史を叙述する一大学術エッセイ。とても面白く読めました。
著者のウォーター・アルバレス氏はカリフォルニア大学の地質学者。6,600万年前の隕石の衝突による地球上の生物の大量絶滅の理論を発表したことで知られています。したがい、本書も大陸移動、プレート・プラトニクス、北米大陸の地質学的特徴に詳細な説明が行われています。面白いと思ったのは、スペイン無敵艦隊の敗北を地質学的に説明している箇所。英仏海峡は氷河期には海峡はなく、歩いて英国まで渡れました。英仏海峡は英国にとっては絶好の砦であり、もし、英仏海峡がなければ、スペインが英国に敗れることはなかったかもしれません。
個人的には第7章以降の生命、人類の歴史についての記述を興味深く読みましたた。生命の起源、骨格の誕生、哺乳類の興隆に関する説明はわかりやすく、誰かに話したくなる内容。人類の誕生はアフリカという説が有力ですが、コロンブス以降の大航海時代、世界中どこの辺境に行っても人間を発見することができました。その理由は壮大な物語であり、ロマンを感じます。
題名の「ありえない」というのは、この138億年は全て偶然の賜物という意味と解釈できます。例えば、人類のような大型の哺乳類が生まれたのは、恐竜が絶滅したからであり、その原因は大隕石の衝突です。この衝突は偶然であり、その確率は著しく低いことを本書は語っています。
本書は天文学、地質学、生物学に留まらない広範囲の学術的エッセイ。ただし、その内容は興味深く、ロマンに溢れています。私は缶ビール片手に寝っ転がって読みました。お勧めの良書です。
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地質学者がしるすビッグヒストリー。ビッグバン直後、生物生成を可能とする世界の物理法則が定まりから超新星爆発、ケイ素、炭素、酸素、鉄を集め、地球の地殻変動によりケイ素は花崗岩に集まり、炭素はその結合のしやすさから様々な形態で存在し、生命の下となった。
その後もチュクルーシブクレーターなど斉一説(緩やかに変化、進化していく)を覆す、発見があり、うんとダイナミズムにより世界、文明は作られてきた。
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地球科学や地学に不慣れな人でも読みやすい。
わっくわくする!引用献文や今後学びを深めたい人に向けて、注釈やおすすめの本を載せてくれるのが、著者と話しているようで嬉しい。
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地質学者の知見から、地球誕生の歴史を時にダイナミックに、時に掘り下げて解説してくれる。
決して学術的な内容ではなく、面白く読めるように工夫されている。
この地球の歴史は、偶然のたまものなのか?
最後に著者の意見が出てくるが、それは人間にとっても言えることで、以下のことばに共感した。
世界全体で次の世代に生まれる子供の数を調べると、およそ10億(10の9乗)人である。
だが、卵子や精子の数を考慮し、その世代に生まれる可能性のある子供がどれだけいるかを調べると、その数は(かなり大雑把な数字だが)およそ10の25乗になる。
細かい砂の量でこの二つの数字を表してみると、10の9乗は手に2すくいほどの量である。一方10の25乗は、グランドキャニオンを10回満たせるほどの量になる。つまり現在生きているのは、実際に生まれたわずか2すくいの人間に過ぎない。それに対し、生まれる可能性があったのに生まれてこなかった人は、グランドキャニオン10杯分もいるのだ。
しかもこれは一世代だけの話だ。複数の世代を考えれば、事態はさらにひどくなる。生まれる可能性のある人は、2世代で10の50乗、3世代で10の75乗、4世代では10の100乗となる。そして10の100乗という数字は可視宇宙の素粒子数の推定値(10の80乗個)をはるかに超えている。
これが、高祖父母が子供を産もうとしているときに、自分の世代に生まれる可能性のある人間の数である。私たちは、その中から実際に生まれた数少ない人間の一人なのだ。
140億年近い宇宙の歴史、40億年を超える地球や生命の歴史、数百万年にわたる人間の歴史―そのすべてが、自然の法則の制約を受けながら、無数の偶然によりまったく予測できない形で展開されてきた。その結果が、現在の人間世界である。私たちは、わずかな可能性の中から幸運にも生を享け、この世界、この状況を受け継いた。その私たちの行動が、ビッグヒストリーの次章を紡ぐことになる。