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涙あり、笑いあり、さすが円丈師匠。昭和の大名人三遊亭円生は一芸人としては素晴らしい人だったが、組織のトップとしてはダメな人だったらしい。まあ野心家として描かれる円楽と立川談志だってそうなんだろうが。人に頭を下げられない、面子ってのはやっかい。シリアスな場面は多いのだが、ところどころ爆笑してしまう。”円丈は、よくわからん!”とか。
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噺家さんの書くものにハズレはない、それが内幕を暴露するものであればなおのこと。本著に記された事件はまさに落語界のパワー・ポリティクスであり、当事者の混乱ぶりが手に取るように伝わってくる。それが部外者にとっては滑稽でしょうがない。
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今から40年前の昭和53年、東京の落語界を二分する
大騒動が巻き起こった。
その前に東京の落語会システムを簡単に説明。東京には上方落語にはない「真打ち制度」がある。真打ちとは文字通り「真を打つ」、つまりお客を納得させるだけの芸の持ち主を真打ちと認める制度。
この真打ち昇格が分裂騒動の端緒となる。当時の落語協会会長 柳家小さんが行った「大量真打ち」。落語ブームに乗り大所帯になった落語協会。これまでの芸の熟成を待った真打ち昇進の方法では、時間がかかり、中々真打ちが出てず、❛つっかえ状態❜が続く。その打開策として現実主義の柳家小さんは、10人をまとめて真打ちに昇進させる。
そのことに対し「粗製乱造の極み!」と真向反対を示したのが落語原理主義者の三遊亭圓生。圓生は芸に厳しく、落語協会会長時代は実力の伴わない落語家を真打ちにさせなかった。現実主義者VS原理主義者のガチンコ対立のはじまり〜はじまり〜である。
普通なら、理想と現実の齟齬を話し合いを持ち、妥協するところは譲り、よりよい方向を探っていくところだけど、圓生はその手続きを取らず、一門を率いて協会離脱を決意する。
この圓生師匠、名人の誉れ高い圧倒的な芸の力があるものの政治力はなく、そこに加え一言居士の性格も災いし、ついつい不興を買ってしまう可愛くない人柄。
要するに小さんのような包容力もないから、人も寄りつかない、そんな人がクーデターを起こしても賛同を得るなんて夢のまた夢。これを百も承知で御輿に担いだのが立川談志と5代目三遊亭圓楽(歌丸さんの前に笑点の大喜利の司会をしていた巨顔馬面の御仁)。
マスコミは「落語協会分裂騒動」とやんや書き立てはしたが、大勢はあっけなく決着。当初、新協会に参加予定だった古今亭志ん朝・月の家円鏡ら大物落語家も次々と元の落語協会へ復帰となるわ、定席の寄席からは閉め出しを喰らうわ、圓生の理想とする新団体構想は露と消える。
圓生は協会とは袂を分かち、一番弟子の圓楽とも不仲に。一方、名人圓生の芸は枯れるどころか独演会は常に満員、弟子たちを率いて全国を精力的に落語行脚するも過労がたたり、約1年後に急死。
そんな顛末を、この騒動から6年後に上梓。
本人曰く95%事実であり、登場人物はすべて実名表記。また、その多くが現役バリバリの落語家ばかり。
世間は大いに驚き、ある関係者は怒り狂い、別のある人は困惑したり無視を決め込んだりしたというそこまで言って委員会本。
とりわけ著者が大嫌いな兄弟子三遊亭圓楽についての
筆誅は容赦なく、自身が真打に昇進した際の御祝儀額
まで暴露するわ、いかにやな奴であるかを仔細に執拗に描く描く。
僕もテレビ画面を通じてであるが、傲岸不遜な人格と睨んでいただけに、裏付けるエピソード満載で我が意を得た気分。
あくまでもこれは著者から見た「私家版騒動顛末記」。例えば、お茶碗を横から見れば三角形、上から見れば円形に見える。それと同じで今回の場合は、その人のことを好きか嫌いかにより描かれる風景は天と地ほどに差が生じる。
巻末には「���遊鼎談」という、6代目三遊亭圓楽(楽太郎)・三遊亭圓丈・三遊亭小遊三の3人が参集し、40年の時を経て、当時を語る。楽太郎は本書を指して「うちの師匠は破ったか捨てた」と言い、小遊三はこの本を読んだ時の印象を「はじめてエロ本を読んだときの衝撃を受けた!」さすがは笑点のレギュラー、名人圓生師匠の抜いた伝家の宝刀譚をエロ本のドキドキ感に例えるととは…、シャレが効いてますわ。
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ここまで書けるというのは、本当にすごい。落語の世界の懐の深さ、培われてきた歴史は間違いない。
一気に読みました。
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昭和53年に起こった落語協会分裂のお話。
全然知らなかったので、興味深い内容だった。
たまに笑点で見たことのあった、先代の円楽は腹黒かったんだな〜というのが、一番の感想。
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『#師匠 ご乱心』
ほぼ日書評 Day340
昭和53年(1978年)の落語協会分裂騒動、その主人公たる三遊亭圓生と三遊亭円楽(先代)をこれでもか!…とこき下ろす昭和61年刊の一冊。
主要な登場人物はほぼ皆、鬼籍に入られたとは言え、30年の時を経て、手軽に読むことができる機会(再刊行)を作ってくれた出版社(小学館)に感謝だ。
https://amzn.to/3pjsQLo
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円丈師匠、私の中ではドラゴンズ好きなオジさんというイメージしかなかったが、最近落語を聞き出し、いろんな一門を知り、落語協会分裂騒動はwikiだけでなくぜひこの本読まなきゃと手にしてみた。いやー面白かった。
そして先代圓楽が嫌なヤツだなと深く刻まれた。
圓生師匠、噺家としては一流だけど組織の中で動く人としては実に難あり、多くの弟子を預かる身としては実に危なっかしい人であることがよーくわかった。その後の人生が大きく変わった人もいるわけだし。
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これを読むと先代の円楽の印象がガラリと悪いほうに変わる それぞれの言い分があるだろうが、そのうちのひとつの言い分として赤裸々でおもしろい
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どこかで書評を目にしてからずっと読みたかった1冊。
何だこれ、めちゃくちゃ面白いじゃないか!
『赤めだか』を読んで笑って泣いて。落語家の世界の特殊さと懐の深さと才能にずっと感動していた。
これは方向性が真逆!伝統の世界ってこんなにしがらみだらけなの?つまらないプライドや派閥が蔓延るの?
そのせいでこんなに沢山の人が泣いて苦しまなきゃいけないの?面白いのに苦しくて思わず一気読み。
全てを曝け出す覚悟と、そうしなければ自分の心が壊れそうという叫びが書かせた文章。圧巻。そもそも文章が面白いのに、何という作品。
再出版に際しての対談は、その時の熱が冷めていた。そりゃそうなんだけど。でもその対談すら歴史的なものだとは。呑気に笑点観てる場合じゃなかった笑
事実は小説より奇なりを地で行く感じ。
もはやドラマ。創作より創作。
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噂には聞いていたが、読むと非常に面白く、どんどん読み進められる
当事者が語る歴史小説(明智配下の末端幹部が語る本能寺の変?)、のような感じで、混乱と不信の中で動いていたことがよく分かる
五代目圓楽氏についても、最後の会談を読む限り、評価の部分はさておき物事の一面としては間違ってないのだろう。いろいろな人が集まっているのが落語の世界であることはよく分かる