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会社にも家庭にも自分の知らなかった驚異の真実が隠されており、それが露わになった瞬間から事態は徐々に動いて行く。
不勉強でこの作者の著作はあまり読んでいなかったが、こんなに魅力的なストーリーを紡ぎ出す作家とは知らなかった。
ある日偶然に妻が巨額の財産を持ってしまうことから生じる家族の崩壊と再生のストーリー。想像を超えたストーリーが展開する気持ち良さは絶品。
間違いなく連続テレビドラマになる作品。
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途中のストーリーはそこそこ面白いのだが、結末は意味無い。今までの苦悩はなんだったのか。その後が書かれていないので断言できないが、1億程度には負けなかった鉄平といえども、結局40億に抗うことは出来なかった、という人間の悲しさを書いたものなのだろうか?
色々闇の心を持った幼馴染の代議士や美しい女将(この人も唐突に本性が明らかに・・・)、そして何より鉄平が、その闇を発露すること無く完結してしまったのも残念。
鉄平の美貌の妻も良くわからない。長い話の中に出てくる、金沢の町や料理やベンツやらのくどい説明も必要性がわからない。様々に広がった末節の話も?
だれることなく一気に読みきったのだから、つまらなくは無いのだが、この読みきった感の無さは何なのだろうか。
やはり著者は、所詮人間なんぞ数十億円の前には、ひれ伏すだけの存在なのだと言いたかったのだろうか。
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話が粛々と進みながら最後にさわやかな終わり方をした。残り数ページで「このまま終われるのか?」と心配になったけど杞憂でした。
自分は宮本輝が好きなのだけど、読み進めるうちに白石一文さんのこの小説は私の好きな内容と展開でした。ビジネスで政治的に追いやられ、地方に移り住んで門外漢の仕事を始める。その経緯などとても興味深い。
読後に、この後の彼らの人生について想像する時間が必要で、いい意味で後を引く作品です。
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鉄平、夏子夫妻の若き日その後の因縁として影を落とすも結婚後、何処にも居る普通の家族生活を送っていた、結婚後2人子供に恵まれ最近珍しくも無くなったサラリーマン人生でのリストラ、会社生活での左遷、親の死、子供の進学等の波風を夫婦2人で乗り越えて来た。鉄平は51歳となり叔父の中堅化学会社の左遷部署の部長職で親族会社の行く末を案じながら平凡な生活を送っていた。そこから自分の知らない怒濤の家族、会社の事実(妻夏子の30億にも上る遺産相続、息子の従姉妹との同棲、娘の身篭り、会社工場の不祥事の火消し内幕)を知る事になり、今までの生活が何だったのか?思い悩み最後に有る事実(昔の恋人が起業したカナダの会社への3億円の出資)を知る。夏子は夏子なりの考え&状況判断があるのだが、鉄平は夏子への過去からの不信から別れを決意して1人金沢の地に移住を決意する。金沢には幼少期の友人の妹が居り料亭を営んでいてそのきっかけで手巻き寿司屋を夏子から渡された1億の資金で開店させ軌道に乗り家族と別れて生きる決意を固める。1年後、音沙汰のない夏子が金沢に連絡も無く逢いに来て出直しを提案されるも鉄平の気持は変わらず空港迄見送る。途中、夏子から30億を(鉄平の叔父社長が亡くなり力不足が否め無い従兄弟が後を担う)化学会社の株を買った事を伝えられ家族に加え会社共に出直しを進めた夏子に脱帽して終える。
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最初冴えないリストラ中年男かと思ったら、ビジネスに長けてるわ、人を見る目はあるわ、チャンスを掴む大胆さはあるわ、のスーパーマンだった、ついでに犯罪者…
どうにも更生しない真性の悪人が出てくるも、大した対決もなく、自分と自分の周りだけが幸せになっていく。
妻との関係も、信頼関係がどうのこうの言いながら、自分が妻を信じられないだけじゃないか。
母の入院費も妻の財産どうのの前に、自分がケチっただけでは?地方の看護大学と歯科大に通わせる経済力って平均以上だから。
1億渡されて家族とさよならした中年男って最初の設定に期待したけど、結局前より幸せに元鞘ってねえ…
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500ページ越えの読み応えのある作品で、読んでいて、どうオチをつけるのか気になっていたが、まさかこうくるとは…。
そして登場する女性陣の強さ(つよさ・したたかさ)たるや。
夫に隠していた遺産の存在が発覚し夫婦関係が破綻するも、鉄平への想いは変わらずラスト数ページに仕掛けてくる、妻の夏代。
亡き兄が虐められていたにも関わらず、実はその首謀者と隠れて交際し、挙句の果てにそれを知らない鉄平に制裁させる波江。
その波江と不倫している板長を更生?させたい板長の妻である周子や、最早、交際相手のストーカーともなっている鉄平の娘・美嘉など、男性が圧倒される場面がたくさん。
愛が…重い…(さよなら絶望先生風に)
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えー。
ええー。(´Д` )
個人的にはモニョるラスト。
(以外、盛大にネタバレします)
長年連れ添ってきた妻は、実は億万長者だった。
最初は、妻当ての連絡を勝手に聞いたり、おいこの主人公なんだこいつ、と感じたが、妻も妻である。2人の子が人生の岐路のような場所に立っていながら、そのことをちっとも夫に相談しない。
「このお金は私のものじゃないの」とか言いながら、ラストそれ!? いや、使ってるやん!? 完全に「私のもの」じゃん。
他のレビューにあったが、「女性したたか」。うむ、確かに。こんな女、身の回りにいたら嫌だわ(笑)
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1億円という金額はどのくらいのものなのか。
5000万円のマンションなら2軒買える。300万円の車なら33台。仕事では目にしたことのある金額でも自分の財産となるとその価値をいくら想像してもピンとこない。
そんな金額を目の前にすると人はどうなるのか。
この小説はそんな欲に塗れたストーリーではなく、人との繋がりや生きがい、そして人間の種類にも考えを巡らせる機会を与えてくれた。
夫婦が役割を終えるのはどんな時なのか。愛情がなくなっても何となく一緒にいるのは、面倒くさかったり敢えて別れる必要性がないから?当たり前のように一緒にいるという日常と訣別するのがどれほど決心のいることなのか。やはりそこには求め求められるという関係が不可欠なのか。或いは、自分にこれだという手応えを感じる生きがいがあれば、そういう関係は人生に不要なのか。…そんなことをあらためて考えさせられた。
鉄平を含め、自己の欲望を満たすために一般的な感情のスイッチを切ることができる人間がいるという。非情で無慈悲な一面は、普段はきっと巧みに隠していて、相手によって「行ける」と判断すれば、スイッチをオフにして欲望を満たすための作戦を決行するのだろう。そしてそれは恐らく無意識のうちにやっているのだと思う。こういった人間を「更生不能な邪悪な人間」と書いているが、確かにそういう存在は一定数いて、周りがどう接してもその根っこの邪悪さは変わらない。そんな存在に出会ったら。性善説を信じている自分は以前ならきっと、相手が変わることを信じて何とかしようとしただろう。でも今は、そうした人間とは、できる限り関わらないに限ると信じている。
それにしても、最後のどんでん返しというか、有無を言わさない決定的な展開は天晴れだ。夏代のような行動力のある器を持つ、ごく普通の人達も一定数はいるのだ。
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20年一緒に暮らした妻が黙っていたもの。それを知ってから物語は動き出す。結婚、夫婦、家族、会社、仕事、お金。20年の夫婦生活は一体なんだったのか。そういった回顧だったりこの先の生きかた。夫婦としての生きかたと個人としての生きかたのズレ、大切なものへの想いのズレ。ひとつの出来事、言わずにいたことから起こる別々の道の選択。自分の思うように生きよう、新しいことを始めようとする主人公は身勝手かもわからないけれどその姿がなぜかいい。金沢の風景や街、人、美味しそうな食べ物のどれもがとても素敵。この先どうなるかわからない日々の中で、それでも案外楽しく生きていけるんじゃないかという気にさせてくれる。
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こんな目にあってみたいもんだと思いつつ、この主人公はいいやつ?悪いやつ?と煩悶する。主人公の心は、あっちへこっちへフラつき、文末まであとわずかになっても、一体どうやって結末つけるつもり?だったのに、しっかり締めたのは久しぶりでした。
描かれている街並みはいつもながら描写が巧みで、街中の風景を見たことあるやの錯覚に陥る。たまたま、多少知っている場所ではあったにしても、まるで何年か自分も住んでいたことがあったかのように錯覚させてくれるのは作者の力量。長編であってもスラスラと読ませてくれる。
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登場人物のほとんどに共感できない冗長な物語。
まず断っておくと、そもそも小説に物語り以外の要素(景色とかその他諸々の描写)がそんなに必要無いと思ってるタイプです僕。
まるでグルメ本かのようなお店やメニューの詳細な説明もだけど、少なくとも、主人公が購入する車の説明とかあんなに長々と必要?
だったら、もっと登場人物の考えや気持ちを深く掘り下げて欲しかったと。
だからなのかも知れないけど、主人公をはじめメインキャストに全く共感できない。
主人公、殺人未遂者ですよ、言ってみれば。
奥さん、ちょっと何言ってるかわからない(笑)
主人公の昔の女友達、急に、いきなり、めちゃ悪い子だという事が暴かれる。
板長さん、しょうも無さすぎ。
共感できない人たちがかなり荒唐無稽なストーリーの上に乗っかっていくから全然入り込めなかったです。
作者の特徴なのかもだけど、いったん一つの話を置いておいて後から説明する的な文章の構成も好きになれず。
本の帯に書いてあったけど、この作品で本当に直木賞を取りたかったと言うのであれば、もうこの作者の小説を読むことはないかも。
本の装丁が大好きだったので☆プラス1
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一億円を手にして、哲平とと一緒に
夢を見させてもらいました。
実際、そんな大金持っても
意外と堅実に生活してしまうものかも。
あー、でもなーやっぱり無茶したいよなー。
読んでる最中は面白かったのだけれど
ラストがちょっとなぁ、結局使うんかい!
そりゃそんんだけ資産があれば
なんでもできるよなぁ、
っておいてかれた感はんぱなかった。
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突然奥さんが高資産を持っていると知った男の日記のような独白で進められる話。
少し間延びしている感が否めないが、これが著者によって、毎日日記のように少しずつその日の気分で書き進められていたのなら、それはそれで面白いと思う。
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読んだぞぉー!と言いたくなるくらいの分量、541ページ。帯にある『極上娯楽小説』、そのもの。久しぶりに「長編小説」を堪能した。
人生、恋愛、会社、おカネ、家族、結婚、といったものがごった煮にして入ってるけど、嫌味にならない。
金沢の街並も、気候の様子も目に浮かぶ描写。
最後のオチが、ちょっと短絡的すぎる気がするが、まぁ、このまとめ方が最良か。
あー、私も一億円手にしたら、どうしようかなぁ~って夢見る余韻も与えてもらえる極上な時間を頂きました!(笑)
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読み応えたっぷりなんだけど、ずっと読み続けていたいような文章だった。
急に親戚の遺産が入ってきたら人はどうするだろうか。
大概の人は喜び好きな事に使うだろう。
だけど主人公の妻(遺産をもらった本人)は無いものとして一切手をつけず夫にも内緒にしていた。
ふいに弁護士の電話でそれを知る事になる主人公鉄平。
それだけじゃなく、息子や娘の重大なる出来事を妻は一切言わず、会社も居心地がいい場所でなく、
いろいろあったすえ1人金沢に旅立つ、というより勝手に引っ越す。
どんどんなぞってしまうが、鉄平は金沢で事業を始め、いろんな人と出会い前に進んでいくんだけど、
妻はじっと帰りを待っている。
とにかく賢い妻、の一言。読み進めていくうちに最後は思っていた通りになった。
巨額のお金があるって凄い。使うべきところで使う。
たしかに妻にはかなわない。