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『なにかいってしまったら、言語化してしまったら、その瞬間になにかを「おもってしまう」きがしていたし、その瞬間こそに偏見に近寄る「感想」がうまれてしまうのかもなか、となんとなしに考えていた。』
『実際、かれとしては夜に性的におもいだすことを、すきといっていいのかわからないとこあるな、という感想を毎日考えており、こういうふうに思いを消費している女のこにたいし、かんぜんにどう振る舞っていいのかわからなかった。』
『同級生や親戚、ひいては母親に至るまでの、「ほんとうはこういいたかった」けど、「実際はこういってる」の差異、関係における相手の真意を推理する運動に、草野はつかれていた。』
『なぜなら「好意」の上位互換とおぼしき「恋」、ひいては「愛」「恋愛」となってくると、人間関係の膠着、ままならない性とからだの関係、とめどなく昂り制御不能に至るまで陥る感情の暴走、などをもてあまし多大なストレスをこうむることは明白だからだ。』
『三人に共通する性格として、マンガをよんでいるときなどに、いきなり「なによんでんの?」と声をかけられるのも苦手だし、マンガをよんでいるクラスメイトに「なによんでんの?」と声をかけるのも苦手だった。両者には似て非なる境界があり、両者ともに抵抗がないのならスター生徒となりうるし、後者ができるだけでも愛されるトップクラスメイトの素質があり、前者が得意ならマスコット的にクラスに溶け込めるポテンシャルあり、しかし両者ともむりならクラスの輪にははいれない。ヒエラルキーの内側にすらはいれない愚鈍な存在と成り下がるのだった。』
『クラスの人間がこの時期特有の自意識をたかめあい、無意識の言語を発しあうのにどうしてもなじめなかった。
だれかを誘えばだれかが顔をしかめ、だれかを外せばだれかが正義感をふるわせ、だれかを加えればだれかが疎外され、だれかを失えばだれかがよろこぶ。皆それぞれが、からだの表情と裏腹のことに限って、つよい口調でいうのだ。』
「なにかが欠損していて、それなのにうまくやれている気がするから。だれにも相談するようでもないけど、でもなんかつめたいのかも。なにも起きてないことにすれば、いいのではないかとおもってしまう。誰かが誰かをふかく傷つけても、しらなければすむこと。でも、しってしまったら、どうすればいいんだろう?」
『目の前の人間は裏切っても、すごした時間は裏切らない。』
『きもちを調える。心を合わせて、自由に。ひろやかに、のびやかに踊ろう。』
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思春期という多感な感性を描写するこの方の
捉え方が、なんとも新鮮。
新しい気になる作家さんです。
内面描写が多く、若さや脆さの表現にもうならせられる。デビュー作も読みたくなったので、
即予約しました。
一冊読み終わった時の充実感を味わえました。
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思春期の言語化し難いモヤモヤを独特な文体と構成に乗せて新しい表現を試みている事を理解しつつも最後の最後まで馴染まないまま読み進めた。多分登場人物の何者でもなく幸不幸も無いディスコミュニケーションな日々を送る感覚が共感し難かったからかな。ただ不思議と読了後の爽やかさがあった。新しい。世代の違いか…歳だなぁ。
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高校生のモヤモヤした心情を,踊るふたりの中に分散させて,非常に論理的に分析したもの.手法が面白く,なぜか泣けるという星崎と草野のダンスを見てみたかった.
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ちょっと変わった文体で最初は違和感あったけど、友達やきょうだいの距離感に共感する部分もあったりして気づけば入り込んでいた。
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今どき高校生男子の周辺
春・夏・秋・冬
ネットのダンス画像を取り込んで友人とダンスの練習
この画像を友人に撮影してもらってネットに投稿する・・・
今の高校生じゃないと書けない生々しさ
前回は元ボクサー?と思わせる生々しさがあったし
次回は何を書く?
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ちょっと幼い高校生たちの、モヤモヤした一年間。
過剰に熱く語りがちなこの年代を淡々と、引いた場所から眺めている。反抗期の弟とふくふくとした妹、がいいね。つくも、の今後も気になる。
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ひらがなの多い文章と独特な文体に最後まで慣れなかった…
季節とともに移り変わる高校生の日常と気持ちが描かれており、内容的には読みやすかった。
もっと熱く彼らの思いが描かれていてもよいのになぁ…とちょっと物足りなさもあった。
終わり方はきれいで気持ちよかったです。
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高校時代の「しき」一年の移り変わりが、描かれる。特にキラキラして目立つグループでもないし、大事件が起こるわけでもない。
どこにでもありそうな、だれもが感じたことがありそうな、大人になる前の不安定な存在感。
べったりでもなく、淡白でもない関係性。
最後に一つやり遂げて別々の道を進んでいく。
それは悲しいことではないし、そうやって大人になっていくんだろうな。なにげなく手にとって読んだけど、読感は良かった。
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高校生がダンス動画をSNSに載せるために、夜な夜な公園で練習をする日常を軸にして、学校生活、家庭などでのあれやこれや
これが青春小説というものでしょうか
青春というか、思春期小説とでも言いたい
ともだちのつくもに
子供ができるというのがこの小説の「転」
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こういう書き方があるのかあ、と新鮮な気持ちで読み終えました。瑞々しい!
「クラスに馴染めない系」でも別に気にならない高校生たち。こういう人物像って新鮮ですが、とてもリアリティがありました。
家庭や異性や過去やと、各々に悩みがあったりなかったりします。でも別に、それをイツメン同士でどうこうしません。互いに踏み込まない。
女子トリオは暗黙のルールを察して、男士トリオは干渉の必要性を感じないから。
だからと言って人間関係が希薄かというと、そうでもないし、みんな"つながり"は何となく維持している。
どっちつかずの空気感というか浮遊感を、言葉で掴もうとしているような感じがしました。その方法が【踊ってみた】だったのかもしれません。
大人になるにつれ上手く言えないことばかり増えます。身体は否応なく四季のうつろいや感情の揺れや好き嫌いを感じているのに、全部は言葉にできないし言葉にしようと思わない。
そんな心が表現を否応なく希求する。
世界の片隅に生まれた偶然と必然の「をかし」が、かれらの【踊ってみた】だったのかな、と思いました。
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これを青春と呼んでいいなら彼らの過ごした日々は永遠であり、だが記憶からも消えるほど希薄かもしれない。その二面性に慄く。
「無神経な発話こそ、見過ごせない本質と響きあう。ーー」
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思春期の説明できないわかりにくさみたいなものを追体験できる小説。
章立てもなく、誰の想いか語りなのかもわかりにくい中でストーリーは展開され、不確かな疑問は不確かなままで終わってしまう。
しかし、クセになる
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「自分の思春期、高校時代はどうだったかな?」
って考えながら読んでた。
登場人物のピンポイントな感情を
解像度高く作品で表現されてて読み応えがあった。
私もこの主人公と同じで反抗期が無かった。
学生時代は感情を無意味に他人に向けることを
「ダサい」と思っていて反抗期で
親や先生に反抗してる同級生を醒めた目で見てた。
ただ、作中にあるように反抗期が
大人になるための通過儀礼な気がして焦るような
気持ちもあったなぁ〜なんて
主人公に共感出来て面白かったです。
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うまく言えないけど他にない感じの良い小説だなあと思っていたら、巻末の解説(長嶋有)できちんと言語化されていてぎゃふん。
決して自分の記憶ではないのに、忘れ去ってしまっていたモヤモヤを丁寧に掬い上げてもらったような。とても良い小説だと思います。