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とてもとてもおもしろかった。一頭一頭の牛にまつわるエピソードは人間と同じだなぁ。
児童書でよく動物が擬人化されて描かれるけれど、あれは擬人化なんかじゃないのかもしれない。
先日読んだ『羊飼いの暮らし』といい本作といい、家畜とともに生きている人たちの話は、当然のように野生動物の話とまた違った趣があり、私はどうも前者の方が好きなんだなと気づく。
装丁の感じや本の造りも好もしい。
アラン・ベネットが回想録の中でとりあげたことで注目を集めたとのこと。
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著者は有機農法がもてはやされるずっと前からオーガニック・ファームを営んできた農場主。
本書は短いエピソードを集めたもので、牛を中心に鶏や羊、豚などのあれこれを綴っている。
長年、動物たちと過ごしてきた人ならではの観察と洞察に満ちている。
牛には一頭一頭に個性があり、互いに友情を育んだりときには諍いをしたりする。
注意深く接していれば、人と牛の深いコミュニケーションも可能である。
牛の判断の仕方や、意思表示は、ヒトのやり方とは違うかもしれないが、それは彼らがそれらを行っていないということではない。彼らを理解するには、人の側にも洞察力がいるということになるだろうか。
そこに至るには、工場形式の現代的な農場ではなく、個々の顔がわかるゆったりした環境が必要になるわけだが。
時に頑固、時にチャーミングな牛たちの姿が楽しい。
個体によって餌によって牛乳の味も変わるというのはなるほどそうなのだろうなと思う。この農場の人はどの牛が出した乳が飲めばわかるという。
個人的にはところどころ、著者の憶測が過ぎるのではないかと思われる箇所もあるが、おおむね楽しく読んだ。
素朴な挿絵も味わい深い。
巻末の「○○について知っておくべき20のこと」も秀逸。
ゆったりとした週末の読書によいかもしれない。
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イギリスで、飼育の効率性よりも家畜の健康や好みを重視する形の牧畜を営む家族の一人である著者が、家畜、特に一頭一頭の牛の個性や嗜好を観察し、牛の言い分や牛と人間の関係性などについて記した一冊。とにかく、個々の牛がよく観察されていて、名前とともにそのエピソードが語られると、人だか牛だか区別が曖昧になり、あたかもその牛が親しい人のように感じられてくる。著者は、聡明な牛もいれば愚鈍な牛もいると、集合体としての牛ではなく、個々の牛の能力・性格・知性・個性を大切にしている。だから、総じて見れば一般に人が思うよりも牛はずっと賢いという主張がすんなり受け入れられる気がする。
ただ、著者たちの飼育する牛は、必ずしも乳牛というわけではなく、実際、牛肉の販売も行っているようで、本書では、牛の屠殺などの食肉化の話は全く出て来ないが、この一頭一頭を大事にする牧畜と、そうやって育てた牛の屠殺がどう両立しているのか、少し不思議に感じる。もっとも、このような特別な牧場でなくとも、牧畜家が家畜に注ぐ愛情や熱意は著者たちと同じようなもので、牧畜家とは、ペットではなく家畜を育てるのだから、押しなべて、飼育と屠殺というのは両立するものなのかもしれないが。
一つ気になったのが、ホメオパシーに関する記述で、著者はやや懐疑的な立場のようだが(かといって全否定ではなさそう)、本書の中でわざわざホメオパシーに言及するというのは、ここの牧場がホメオパシーを信奉しているという評判でもあるのか、あるいは、イギリス又はイギリスの自然派牧畜家の間では、ホメオパシーが日常的に話題になっているということだろうか。
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牧場を営む女性の書いた本です。両親、兄とともに家族ぐるみで生活しながら、動物と家族のように寄り添ってきた。勿論愛情だけではないでございます。時に命懸けの対決もあるはず。この本では牛達の家族関係や、個性に重点を置いている。どうせ牛なんてこっちが懸命に世話してもなんとも思ってないんでしょう?そうでもないらしい。全ての人が著者のようにつぶさに観察できる視点を持つ訳でもないが、かなり賢い。教えられた訳でも勉強した訳でもなく、病気の時はアスピリンを含む草を食べに行ったりするんだぜ。すごくね?
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人間にも色んな人がいるように、牛にもそれぞれ個性があって命が宿っているんだな、ということを教えてくれる。自然界で生きると言うことにかけては、人間よりも自分達の体のことをしっかり理解しているし、賢いなと思った。とにかく面白かった。出てくる動物たちが愛しくて、この先お肉が食べられなくなってしまいそう……。食べる際は、いただきますの精神を忘れずにいなければ。
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エッセイ風の中でも学びがいくつかあった。
牛も賢い。ヒトと同じ哺乳類である。以前タコがいかに賢いかがわかる「タコの心身問題」を読んだが、通底する部分がある。
動物倫理学の視点で読むとまた見えてくる世界が異なる。私たちはどこまで牛を慈しみ食すことができるのか、あるいは食べてはいけないものなのか、考えてしまった。
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英ウスターシャー州で
農場経営する著者が、
牛をはじめ動物たちの
個性豊かな暮しぶりを、
愛情込めて描き出した
エッセイ。
動物を利益を生み出す
道具としか見ていない、
工場的な農場経営には
疑問を感じます。
本来牛たちの暮らしも、
わたしたちの暮らしと
そう大きく変わらない
ことに気付かされます。
牛も一頭一頭に個性が。
利口な牛もいれば鈍い
牛もいる。
人懐こかったり恥かし
がり屋だったり。
人間も牛もただ日々の
生活を営むのみです。