紙の本
プロレスファンなら是非、新日ファンは必携
2019/08/25 15:19
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投稿者:サンチアゴ - この投稿者のレビュー一覧を見る
書店で見つけて購入。引き込まれて一気に読破しました。この作者は、取材がしっかりしていて、構成もよく、ついのめり込みます。とくに長州のルーツの部分、後半いくつもの団体を渡り歩く姿、そしてその理由などが読み応え十分でした。同じ作者で、佐山サトルも出ているので、そちらも是非。
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読んでいる最中に長州の引退試合があった。これでまた一つの昭和が終わった。
本人が言う「ど真ん中」のプロレスを、不器用にしっかりと、歩いて行った人だと思う。試合の後のインタビューが、あの穏やか笑顔が……少し寂しかった。
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かつて熱狂的なプロレスファンだった自分から見ると、既知の内容がほとんどです。だからといって、すべて知っていたとはなりません。完成しそうなジグソーパズルの空白に、いつくか新しいピースを埋め込めて、という感じです。
事件に焦点を当てて日本プロレス史をたどるのではなく、長州力を軸に日本プロレス史を俯瞰する内容で、それぞれの時期に長州と関わった人に丁寧にインタビューをしているのは素晴らしいと思います。
しかし、それでわかった気になってはいけない。プロレスは「底が丸見えの底なし沼」なので、完成間近とおもっていたジグソーパズルが、実は全然進捗していなかった、という可能性もあります。
ノンフィクションの書き方としては見習いたいし、取材とはこうあるべきだと教えてもらえます。
それでもなお物足りなさがあるのは、アントニオ猪木・マサ斎藤・佐々木健介、という、長州を語るうえで欠かせない3名が取材に応じていないことが大きいと思います。それを正直に語っているところも好感が持てます。
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革命戦士 長州力の実像に著者(田崎健太さん)が迫る。
全盛期の名勝負数え歌時代に心躍らせてテレビ中継(と、言っても当地ではテレ朝のローカル局がなかったので随分遅れての放送だったので、プロレス雑誌で予習してからの視聴だったが)を見ていた私としては、ざっくりとした長州さんの生い立ちのようなものは理解していたつもりでした。
しかし、この本を読むと、そのような知識が実に薄っぺらであったかを思い知ることになりました。何しろ著者のリサーチ力が尋常ではない。
長州さんに縁のある多くの方々に対しての膨大な時間を費やしてのインタビュー、そして、それらを丁寧に書き起こし、点と点を繋ぎ合わせ、時には絡まった糸をほぐすようにして、その時その時の長州さんの姿を浮かび上がらせて来るような印象を受けました。
こういったインタビューは、対象者の記憶も曖昧でしょうし、バイアス的な要素も多く入るので、当然テープ起こし的に書き起こすだけでは全く商品としての文章となるはずもないはずですので、著者の手によって、まさに一流料理人が素材の旨味を引き出すようにして、語られた言葉を整え、紡がれた結果がこの一冊なのでしょう。
長州さんの光と影、虚と実、何もかもが濃密に詰まっている500ページを超える文庫本です。
以前からこの一冊、気になっていたのですが、なかなか手に入れる機会がなく、文庫本化したものを今回ようやく手にすることができました。付箋は23枚付きました。
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ぼくはプロレスの試合を観たことさえない。しかし、プロレスについての文章は読むことがある。たくさん流通してるからだ。
本書は、著者ではなく他の編集者が発案して世に出されたものらしく、著者も幼少期に中継を見たりはしたものの、特段プロレスファンというわけではないとのこと。そのせいか、リサーチの深さと、プロレスに明るくない読者でも理解しやすい適度な説明が共存しているような内容になっていてわかりやすかった。プロレスに関する文章は文脈を知っているファンに向けて書かれているものも少なくないので、この点はありがたかった。
長州力の評伝だが、むしろ長州力を中心に新日本プロレスの物語を書いたような内容ではある。そもそもぼくはプロレスラーとしての長州力がどのようなイメージで需要されていたのかも、くわしく知らない。なので意外性などは感じようがないけれど、長州の影の部分は印象に残った。
本文中でもアニマル浜口の暗さが指摘されていた。プロレスラーの二面性は生来のものなのか、虚実入り混じる業界での職業病のようなものなのかわからないが、長州に関しては両方だろう。プロレス界に入って目が出るまでの不遇の時期と、在日韓国人二世としての出自と。
プロレス界は、レスラーも運営もメディアもファンあがりの人間が多い。それがスターを産んだりトラブルの元になったり、独特の開かれたムラ社会のような世界を形成したりとあるのかもしれないが、長州はプロレスファンではない。あくまでもプロレスは就職先のひとつであり、仕事として割り切る。しかし、だからといって熱がないわけでは当然なく、その複雑さが長州という人間の奥行きをもたらしているように思えた。