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考えることで創造する喜びをえることに共感しました。私も、ものをつくるのが好きだ。そして、考えることはものづくりに似ていると思う。だから、考えることが好きな著者の熱意を、彼の熱い刺激を肌で受けとりました。
それでも彼のいう不屈の精神と柔軟さを自分はまだ知らないと思いました。創造する喜びがそれでもって初めて得られるなら、私はまだ本当を知らない。自分が知るのよりもっと大きな喜びがあるならば、私はそれを知りたい。そして、それを知るためのいくつかのヒントを私はこの本から読み取れたように思います。
本著は読みやすく、著者の人柄を直に感じました。彼の考えが認められるまでの道のりを読んでいるうち、私の心のなかのある人はぽつぽつと涙を落としていました。故郷で撮られた写真を見て、私も頬の辺りを緊張させました。啓蒙書なんていくらでもあるけれど、読んでよかったなあ、と素直に思います。
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1982年に書かれた本ということだが、全然古さを感じさせない。それは、1つには、著者の自分史のような内容が大半だからということもあるが、著者の慧眼でもある。本書が書かれた頃、日本経済はアメリカに追いつけ追い越せでやってきて、アメリカ経済の不調もあって、実際に追いついたという実感もあり、アメリカでは日本を見習えという意識も生まれていたが、そんな時期にあっても、著者は、日米両方の特徴をつかみ、日本の経験を伝えるのはよいが、アメリカの底力を侮ったり、日本が驕ったりしていてはいけないと戒めており、それは、その後の成り行きを見通していたかのようだ。数学者として世界レベルの業績を上げながら、こういうことまで通じているのは驚きだ。
しかし、本書の主題はそういうことではなく、学んで創造することの大切さを若い人に伝えたいという著者の熱い心にある。天才ではなくても、考え続けたり、ある種のあきらめを持ったり、様々な人から刺激を受けたりしながら、それでも色々と考えるうちに、ふと解決法が見つかることもあるという。何かにすぐに役立つハウツーは載っていないが、人の経験から学ぶ志を持つ人には役に立つ一冊であろう。
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第1章 生きること学ぶこと
第2章 創造への旅
第3章 チャレンジする精神
第4章 自己の発見
著者:広中平祐(1931-、岩国市、数学)
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36年前に描かれたとは思えない,今でも通用する,否むしろ時間と共に退化した我々が先人の知見を顧み改めるべし,と思わずにいられない.つまり,本書の内容はいつの世にも通ずる一般論なのだと理解できる.芯はぶれず,しかし柔軟な人生の姿勢に恐れ入る.
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とても何十年も前の文章とは思えない、今必要な力を提示してくれる良書。筆者のように努力を続けるほどではなかった自分であるが、生きているその時その時に、確実に何かを創造していて、忘れても脳のどこかの引き出しに入っている。そして、今からでも学び続ける楽しさを教えてくれる。成果が出る出ないではない。創造することがこんなにも人生を豊かにしてくれる、その気持ちを確信に変え、今後の自信に繋げてもらえた。これからも、頑張れる。
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広中平祐氏の自伝的数学啓蒙書です。「学問とは何か」「学ぶとはどういうことか」「数学とは何か」など、数学や科学するときの最も大切な基本姿勢を教えてくれる1冊。広中平祐氏が特異点解消問題を解決して、1970年にフィールズ賞を受賞した経緯にも触れられていています。
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著者の自伝的エッセイ。内容的にはある意味普通。フィールズ賞を受賞した人間でも意外と普通に悩んだりする部分が垣間見られるのは良い。普遍的な内容なので読み終えた後に賢くなった気になるわけでもなく、損した気になるわけでもない。
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今から35年以上前に刊行された本ですが、今の若者に対するメッセージとしても十二分の価値がある内容です。やはり、真に世界の中で道を極めてきた方の実体験に裏打ちされた思いは、時代を越え、ジャンルを越えて染み入ります。
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「私たちにこれから最も要求されるのは、自分自身の判断力と考える知恵だと思う」
崇高な真理だけでなく、目標を定めて技術的な点をコツコツと粘り強く磨くことの大切さ。また、時には諦めて謙虚に邁進していくことを説いておられた。
この本で初めて得た知識は、特異点解消という代数幾何の分野があることくらいだが、哲学的な思考に陥って自分に酔うことはやめて、地に足つけて日々努力していこうと考えた。
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たんたんと綴られているが、非常に示唆的で励まされる内容である。
シンクルナイズでなくケミカライズ。
「ぼく、アホやし!」
あきらめかた
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特異点解消の定理でフィールズ賞を受賞した、日本人数学者の広中平祐による自伝。
数学をとおして、なぜ学ぶのか、どうやって一つのことをやり続けるのか、ものの考え方などについて、筆者なりの考えを若者向けに伝える内容。
非常に同意できる点が多いのだが、当たり前すぎるのと説教臭いのが時代を感じさせる。
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知人の紹介で手に取ったが、いい本だなと感じた。深く自分で考える意義や、未知なる自己を探し求める愉しさについて。
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フィールズ賞数学者である著者が、自身の数学への取り組みを基に学究の意義を綴った1冊。個人的に印象に残ったのは、どのような領域であれ、何かを創造すること以上に楽しいことはない(意訳)との一節。やっぱりヒトの原動力はモノづくりへの欲求なのだなあと。あと遊び。
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1.著者;広中氏は、数学者でハーバード大学名誉教授。幼少の頃、分からない事は何でも質問する好奇心の強い子で、母親から❝なぜなぜ坊や❞と呼ばれていたそうです。母は質問に答えられないと医者や神主の所へ連れて行き、尋ねてくれたと言います。代数幾何学の研究が認められ、1970年に日本で二人目となるフィールズ賞受賞(受賞条件は、40歳以下、4年に1度など)。日本人の受賞は3人だけで、1990年以降いません。
2.本書;広中氏の人生かつ学問論。1982年に初版。2018年にブルーバックスで復刊。氏は「この本の中で、自分の人生を赤裸々に語った」と言っています。さらに「学問の愉しさ、自分という人間をより深く認識理解する喜びを語った。創造ある生き方こそ最高の人生。創造する為には、まず学ばなければならない」とも四章構成で、第一章;生きること学ぶこと~第四章;自己の発見。学ぶという事について、自身のこれまでの人生を振返り、存分に語っています。
3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
(1)『第一章;生きること学ぶこと』より、「私もまた、書物を介して天才、偉人の人生を垣間見て、少なからず学ぶ所があった。だが私はそれよりも、過去51年、日常生活の中で出会った様々な無名の人間から、生きる姿勢といったものを、より多く学んだように思う。私の❝人生の師❞は、身近な人間である事が多かったように思う」
●感想⇒私は、他のレビューで❝読書や身近な人から学ぶ❞事の大切さ書いてきました。先ず❝読書❞。読書する姿勢が重要です。普段からの勉強を欠かさず、自分としての考え方や生き方を形成する事。物事の良し悪しを判断するモノサシを磨く(現地現物で見る眼を養う)。巷には、売れればよいという本や、他人の受け売り本が溢れています。その中で、人生の拠り所になる良書を見つけたいものです。私が心から真に共鳴出来た書物は、数える程しかありません。本の良し悪し判断は人によって違います。正解は無いでしょう。次に❝身近な人に学ぶ❞です。氏が言うように、これは読書よりも重要で、思い起こせば、私も多くの人からものの考え方のヒントを貰いました。友人・恩師・上司・祖母・・・。実際に経験してきた人の言葉には重みと説得力があります。テレビで原稿を読んでいるだけの評論家諸氏等の言葉は薄っぺらで魅力に欠けます。耳を背けたくなる事もしばしば・・・。
(2)『第二章;創造への旅』より、「学問をする上でも、非常に大切な事に❝目標❞を定めるという事がある。なぜ大切なのかというと、人は目標を定めないと、前に突き進んでいく精神エネルギーが生まれにくいという事があるからだ。・・・大学に合格した途端、目標が無くなってしまう受験の勉強の仕方より、実社会に出ても色褪せない目標があるべきだと言いたい」
●感想⇒「人は目標を定めないと、前に突き進んでいく精神エネルギーが生まれにくい。実社会に出ても色褪せない目標があるべきだ」に共感します。私も❝目標❞をあった方が良いと考えます。心の拠り所があれば、気力を鼓舞出来ると思うからです。自分らしく、こうありたいとイメージし、結果もさる事ながら、それに向かっての努力過程が貴重なのです。そして、その目標が❝世の為、人の為❞に繋がるといいですね。目標達成には、先ず職業選択が重要です。私は、学生時代に思い描いた目標とは異なる道に進みました。職をやや安易に考えたのです。人生の目標を思案中の人は本当にやりたい職種を選ぶと良いと思います。衷心から望む仕事を得る事です。例えば、企業選択にしても、知名度や規模に惑わされない事。「好きこそ物の上手なれ」と言いますからね。
(3)『第三章;チャレンジする精神』より、「世の中で成功した人は、大抵、逆境を自分の人生にプラスに取り組んでいく能力を備えているように私には見える」「大学、大学院の7年間三畳一間の小さな部屋に下宿し、机代わりにミカン箱を使い、その下に本を置いていた事、布団は敷くものも掛けるものも布地のついていない薄い綿だけだった」「学者もまた、何かに飢えていなければ、創造し続ける事は出来ない」
●感想⇒人はどのような環境で生まれたかで、その後の人生に少なからず影響があると思います。裕福な家庭かそうでないかの違いは大きいでしょう。しかし、それを嘆いても仕方ありません。与えられた条件の中で頑張るしかないのです。「逆境を自分の人生にプラスに取り組んでいく能力」というものがあるのかどうか分かりません。しかし、私の経験では、挫折を味わった人は、そうでない人に比べると、精神面で強さがあると感じました。困った状況に直面した際、狼狽えそうな状況でも、冷静に問題を分析し、行動するのです。どこにこんな強さが有るのだろうかと感心したものです。人は信条が違うので、それぞれと思いますが、❝若い時の苦労は買うてもせよ❞は至言かもしれませんね。不遇でも、自分なりに努力すれば、きっと光明を見出せると思うのです。
4.まとめ;本書は広中氏が❝学ぶ事の大切さ❞を語った学問論です。私事です。私は小学生の頃から数字に関する事が好きでした。高校時代は、数学の難問を解くのが楽しくて、自分なりに勉強しました。とりわけ❝チャート式参考書❞と明け暮れたものです。理科系に進みたかったのですが、個人的な事情で文科系に進学しました。悔しい思いをしました。しかし、その後に、人生の師とも言える人達に出会い、結果としては良かったと思っています。❝学問❞に対する憧れもあり、「学問の創造(福井謙一)」や「学問の探検(江上波夫)」・・・を読み漁りました。学ぶ気持ちだけは持ち続けたいと考えます。
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広中先生が数学を本気でやり始めたきっかけは、大学院生のときに、小学生の女の子から「おじさ~ん!」と呼ばれたことにショックを受けてのことだったとか。めちゃめちゃ面白かったです。
ただ、数学者の考える「創造性」と、我々一般人の生を充実させるための「創造性」が、どのようにリンクするのか、どうにも掴み所がない感じです。
小林秀雄と哲学者との対談で、"数学者がモノを考えているなんてウソだ。彼らはただシンボルを操作しているだけにすぎない" とあったので、それに対する回答を数学者の側から欲しかったのだけれど...。