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巻末の訳者あとがきにあるように、『本当に変な本』だったw 挿絵の可愛いんだか不細工なんだか解らないクマもなかなか素敵。
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ミック・ジャクソンの『10の奇妙な物語』で惹かれ、今回は熊を主題に取り上げた短編集を拝読。
派手さは無いが、読後ににやりとしてしまう、シュールなファンタジー短編。テイストはビター系。
個性の行き届いた一冊として、星5をつけた。
ジャクソンの作風は、「グロテスクでないエドワード・ゴーリー」とでもいうべきか。残酷で搾取に満ちた世界を、そっけなく
「……という状況でした。」
と語ってのける。
虐げられやすい職業や環境に置かれたキャラクター(本作では熊)へ向ける作者の視線は、どちらかといえば同情的なものではあるが、その表出は抑制されている。
主人公たちが抑圧から脱出、あるいは開放される前に、必ずと言っていいほどの『小さなざまあみろ』が仕掛けられている。
……が、これもまた、派手さはない。
ないのだが、情景描写といい、戯画化された人間たちへの皮肉っぽい表現といい、作家の感性が行き届いた物語は、印象をきちんと残してゆく。
ルーシー・ワースリーの『イギリス風殺人事件の愉しみ方』には、UK(主にイングランド)の人々が如何に殺人と殺人犯を娯楽化していたかが判る。
これとは別に動物虐待(現代では、という注釈が付く)もまた、ブラッド・スポーツとして娯楽化されていた。熊に犬の群れをけしかけるショウ『熊いじめ』などが作中に登場する。熊はまた、別の時代では聖性を帯びた生物とさえ見られていた。
こうした往時の史実を織り交ぜながら、ファンタジーの体裁で語られるのは、先に述べたような虐げられやすい職業や環境に置かれた『熊』を、抑圧から脱出、あるいは開放される物語である。
最後の一篇を読み終えた時、これは熊版『出イングランド記』ともいうべき、熊に捧げた聖書なのではないかという感慨すら抱いた。
落ち着いた感じの文体を好む人には、ぜひお勧めしたい一冊である。
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イギリスでは早くも11世紀に野生の熊が絶滅したそうで。
その辺に触れている訳者あとがきも面白い。
寓話っぽさ・神話っぽさ・民話っぽさが入り混じる、でも奇妙なリアリティもある一冊。
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かつてイギリスで酷使されていた熊たち。意志を持って反撃に出た熊たちを語る。
ミック・ジャクソンの恐ろしさ、デイヴィド・ロバーツの挿絵、ゾクッとするおはなし。イギリスに熊がいないのは、王侯貴族の狩猟の果てって本当?事実は小説より…ですね。
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これは小説・寓話なのだろうか。。
イギリスの熊の歴史を知らないままで読んだからか、今のイギリスに熊がいないということも驚きだし、ところどころ熊と人間の区別がつかなかったり。。
あとがきにもあるように、あとがきを先に読むということもこの本では必要だったのかな。
熊というとどうしても星野道夫を思い出す。
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こうしてイギリスから熊がいなくなりました…正にこの邦題通りの短編集。
この邦題が気になってこの作品を読み始めたのだけれど、読み進める内に古のイギリス人たちは何故こんなにも熊に辛く当たるのか、そのあまりの仕打ちに読んでいるこちらも辛くなる。
イギリスで野生の熊が絶滅した、という「現実」があるけれど、この作品は熊たちへの贖罪なのか。はたまた人間に対する警告なのか。
「イギリスの熊たちよ、こちらにおいで」
力強い声に導かれ、しっかりと先を見据え大海原を進むイギリスの熊たち。
イギリスで起こった数々の記憶を置き去りにし、自らの意思でイギリスを後にした熊たちの心中を察すると切ない。
秋の夜長に深く考え込ませる作品だった。
あのクリストファー・ロビンの「お友達」が主人公の、ほのぼのとした物語がイギリスのものだということもまた衝撃的。
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寓話の短編集のような形をしています。狩猟のし過ぎで野生動物が減ったら、国外から動物を輸入して狩猟を続ける、そんな風土をユーモアな寓話を通して批判しているようです。読み始める前に、巻末の「あとがき」を先に読むことを強くおすすめします。
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「12世紀には絶滅させちゃったんだけどね。絶滅させちゃったんだけど、こうやってイギリスから熊がいなくなったって思いたいんだよ。ゴメン、勝手言っちゃって。」そうだよな。俺もそう思いたいよ。どっかで幸せに元気に暮らしてるハズって。
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イギリスのどこかの時代を舞台に、あったかもしれないなかったかもしれない、熊にまつわる寓話を集めた物語。
訳者さんのあとがきを先に読んで事情を知ってから読むと、示唆に富んだ「大人のための(牙はおさめた)寓話」として愉しめますし、その方がひとつひとつの挿話やフレーズに深いものを感じられるのは確かです。それはそれとして、細やかな表現と面白い設定の熊の童話としても単純に面白く、「子供から大人まで」楽しめる短編集として素敵だなとも思いました。
作者がどこまで現実に起こったことに対しての警鐘を含めて書いたのかはわかりません。でも、昔昔から繋いできた「もうよみがえらせることのできないもの」を壊してきた人の業を、ウイットとユーモアをこめてこんなに豊かに描けるのだなあ、そしてそれを日本人である自分でもそうと認識できるんだなあ、と感じたのでした。人は言葉も住む場所も常識も違っても、根本的には同じ生き物なんだなあと。それは哀しい側面も持つのだなあ、としんみりと感じもしました。
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熊が好きなのでかわいい表紙とタイトルにひかれて読んだけどまさかこんな悲しい話だと思わなかった。イギリスで熊が絶滅していると知った今、大好きなパディントンのことをどんな気持ちで見ればいいのかわかんない…。
本書はとにかくあとがきから読むとわかりやすい。訳者の方のあとがきにある「現在イギリスでもっとも危険な動物は出産期の雌牛」というワードがすごく皮肉だなと思った。
「精霊熊」
「罪食い熊」
「鎖につながれた熊」
「サーカスの熊」
「下水熊」
「市民熊」
「夜の熊」
「偉大なる熊」
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イギリスが島国であり、イギリスには野生のクマがいないということは、なにかの折に聞いて知っていました。この本はそんなイギリスからどうしてクマがいなくなってしまったのか、という大人のための童話。殆ど人間同様に人間のそばで暮らしていたクマたちは、精霊と恐れられたり、サーカスで働いたり、下水道に閉じ込められて労役につかされたりしています。8つのそれぞれのストーリーで最後にクマたちが取った行動は…。これをユーモアやアイロニーと捉えるか、人間の傲慢さを感じ取るか、人によって思うことは違うのかもしれません。たっぷりのデイヴィッド・ロバーツのイラストが時には微笑ましく時には哀愁を帯びて物語を引き立てます。期待通り、8つの奇妙な熊の物語を堪能させていただきました。奇妙な味系のお話がお好きな方は期待を裏切らないと思います。是非手に取って欲しいです。
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短編集。連作短編集。
奇妙な物語でした。そして普通に面白い。
イギリスの熊が絶滅したのは本当らしい。
なかなか深い。
「精霊熊」「罪食い熊」「下水熊」など、好きな作品が多々。
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・イギリスの作家ミック・ジャクソンの作品。薄い158pに8つの短編。
・短編集。表紙のくまとタイトルに惹かれる。装丁もうすいグレイッシュブルーでかなりすき。
・これはイギリスで絶滅してしまったクマに捧げる大人のための寓話。
・文章が素敵。イラストは、イギリスのデイビッド・ロバーツ。
・精霊熊
・罪食い熊
・鎖につながれた熊
・サーカスの熊
・下水熊
ロンドンのもっとも恥ずべき秘密の一つは、19世紀のほぼ全般にわたり下水道に熊を閉じ込め、報酬も与えないまま下水道作業員および清掃員としてこき使っていたという事実。
くまから宝石を奪ったジミーのそのご。
・市民熊
1920年には熊のような見かけの男がイーストアングリア地方のホテルに雇われているという報告が二件、別々に上がった。
潜水士にいったいなにがおきたんだろ。
たれが熊やったのか?
・夜の熊
人の世から追い出された熊。
・偉大なる熊
なんか、神話みたいなはじまりの文。
・熊をベースに社会問題にも切り込んでる!?
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2021.1.16市立図書館
ツイッターにて松崎有理さんおすすめ。
原題は「イングランドの熊たち」、熊をめぐる8つの連作短編(寓話)集。黒一色のイラストが味わい深い。
ショーン・タンの「セミ」に似た印象がある。「サーカスの熊」「下水道の熊」「市民熊」と読み進むにつれ、熊たちは人間未満のようにあつかわれた人間、虐げられた下級労働者や移民のメタファーなのではないか、と思えてくるような…そこにいるのに人間にはなぜかみえていなかったり都合よく曲解されていたり…
訳者あとがきによると、実際にイギリスの熊は娯楽(動物虐待的なブラッド・スポーツ)の対象として、また食料や毛皮の原材料として乱獲されたために絶滅したという話で、その贖罪の物語とみてもいいのではないか、という解説は腑に落ちる。
人間の相棒と組んで潜水夫として大きな仕事をしつつ自分の感情を押し殺したまま失跡する熊ヘンリー・ハクスリーをえがいた「市民熊」が心に残った。水の底の風景の描写が美しくて、アニメか何かでみてみたくなった。
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めっちゃ好きな雰囲気だった…。
人々に恐れられ、見世物にされた彼らは、ある夜を境にイギリスから姿をくらましてしまった…。
デイヴィッド・ロバーツの愛らしくも禍々しい熊と民衆が語る、絶滅してしまう以前の熊たちの物語。