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フォッサマグナ地域の東西では、約1~3億年前の古い岩石が分布しているのに対し、内部は約2000万年前以降の新しい岩石でできている。ボーリングによる掘削調査では、基盤岩に達したことはなく、深さは6000mと推定されている。
糸魚川-静岡構造線は逆断層になっており、新第三紀層の後期以降で見られる。
北部フォッサマグナに分布する地層は、砂岩や泥岩などの堆積岩が多く、約1600万年前から海底に堆積した地層。石油や天然ガスを産出することで有名な秋田-新潟油田褶曲帯にも、同様の地層が分布している。
南部フォッサマグナは、上下2つの地層群から成り立っている。下位の地層群のほとんどは、中新世中期の海底噴出の火山岩類と遠洋性の泥岩から成り、これらが堆積した当時は本州から遠く離れた海底であったと考えられる。上位には、中新世後期から鮮新世の地層があり、山地周縁の低地に分布する。陸地からの砂や礫が大量に含まれており、本州に近くなったと思われる。鮮新世の末までに海は退き、陸地になった。
中央構造線は、1億4500万~1億4000万年前に、イザナギプレートがユーラシアプレートに対してほぼ平行に北上したために、横ずれ断層が起こったことによりできた。
5200万年前に、太平洋プレートの運動の向きが北北西から西北西に変わり、伊豆・小笠原海溝への沈み込みを開始した。その後、3400万年前までに海底火山列が誕生し、伊豆・小笠原弧ができた。2500万~1500万年前に、四国海盆の拡大、フィリピン海の形成、フィリピン海プレートの北上、伊豆・小笠原弧の本州への衝突が起きた。伊豆・小笠原弧の衝突により、まず巨摩山地が形成され、1200万~1000万年前に御坂山地、500万年前に丹沢山地、100万年前に伊豆半島が形成された。
海溝から沈み込んだプレートがプルームの材料となる。プレートは、深さ670kmで停滞した後、重くなるとさらに沈み込んでいく。深さ2900kmに達して外核と接すると、高温となり、上昇流となる(プルームテクトニクス)。プルームはマントルの対流を引き起こし、マントルの上にあるプレートが移動する原動力になる。
著者は、日本海やフィリピン海を拡大させたマグマは、プルームの上昇によってもたらされたと考える。そして、北部フォッサマグナにあたる場所が日本海の拡大によって深海に陥没した時、ほぼ同時に伊豆・小笠原弧が衝突して陥没を埋め、大地を隆起させて南部フォッサマグナをつくったと考える。
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◯面白い。ただ、この本の性質上、前半部分でややもたつくというか、うまく頭に入らないことがある。また、今更だが地名が頭に入ってないと、どこの話をしているのかよく分からなくなる。
◯しかし、こういったことは抜きにしても、フォッサマグナの成立過程は実に興味深く、この本自体が一つの推理小説のようにできている。
◯解答編の試論はまさに解決編で、いままでモヤモヤしていたものが一気に歩に落ちるところは爽快。
◯この本のまとめがとても壮大な話で、地学の魅力に溢れている気がする。大変満足の一冊だった。
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フォッサマグナミュージアムにまた行きたくなった。ジオパークにも行って断層みたくなります。微妙なバランスに住んでいる我々も奇跡かも。
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斬新な仮説だが読み応えがあって面白い。フォッサマグナの形成に関するレビューにもなっている。頭の中が整理されて良い。北部と南部で形成プロセスが異なるのは合点がいく。伊豆小笠原弧の衝突と日本海の形成が同時に起こったのはホットプルームによるオーラコジンの生成に起因し、海溝三重点がそれを飲み込む形であるというのは、ホンマか嘘かはさておき、スッキリする説明でsる。
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フォッサマグナ?
ええ、知っていましたよ。
もちろん、名前だけを。
フォッサマグマとか、ホッサマグナと思っていた人と、何ら変わりないレヴェルですよ。
ということで、私も何も知らない状態だったのだ。
が、これが研究者にとってもわからないことが多いということに、まず驚く。
天竜川辺りから北を望むと、大きな凹地から、突然急峻な山々が壁のように立ち上がる。
これがナウマンに発見され、のちのフォッサマグナと名付けられた特異な地形。
西端は割とはっきりしている一方、東端がどこだか決められない状態なのだそうだ。
断層線のようなものだと勝手にイメージしていたので、糸魚川静岡線から、東は伊豆半島の東あたりまでの広大な領域、富士山もその中にすっぽり収まるという。
そして、関東山地の南北で、地質がかなり違うとも。
謎だらけのフォッサマグナ。
筆者は、「蛮勇を振るって」、どうやって形成されたかの仮説を出している。
キーワードはホットプルームとオラーコジン。
まだユーラシア大陸についていた原本州。
のちに日本海になるところに、プルームがY字に浮き上がり、それがふたつに分かれていた原本州の間を埋めた、ということらしい。
スケールが大きすぎて、ため息が出た。
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いまだ未知なもの。それの来歴を推測して行く楽しさ。
中央構造体についても触れられており、日本列島がどのような性格をもつのかを学ぶ楽しさがあった。
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高校の『地学基礎』適度の知識と、日本の地理についての知識がある程度あると、読み進めやすいと思う。
後半に進むにつれ、地理感や地質区分が整理できていないと、難しく感じてしまうかもしれない。
内容全体としては、非常に面白かった。
一読ではしっかり理解出来なかった。また改めて読み直したい一冊。
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「日本沈没」を読んだ勢いでこちらを。用語が専門的でところどころ難しかったですが、概要は理解することができました。それにしても日本列島の地学的に複雑なこと。もしかしたら何かのはずみで本当に日本沈没もあるんじゃないかと考えてしまいました。
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「フォッサマグナ」名前だけは覚えてるけど、何なんだっけなあ…と思ってたところに先日のブラタモリでの糸静線の回を受けて、再度興味を持ち、本書を購入したが、あたり。
まあ、仮説というか試案とはいえ、なーんとなく、フォッサマグナの成り立ちについてイメージを持つことができた。それにしても、不思議な地形なんだなあと改めて。
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1100
藤岡換太郎
1946年京都市生まれ。東京大学理学系大学院修士課程修了。理学博士。専門は地球科学。東京大学海洋研究所助手、海洋科学技術センター深海研究部研究主幹、グローバル・オーシャン・ディベロップメント観測研究部部長、海洋研究開発機構特任上席研究員を歴任。現在は神奈川大学などで非常勤講師。潜水調査船「しんかい6500」に51回乗船し、太平洋、大西洋、インド洋の三大洋人類初潜航を達成。海底地形名小委員会における長年の功績から2012年に海上保安庁長官表彰
この地形に関心を抱いたナウマンはその後も、この地域を二度、調査旅行で訪ねている。
あらためていうと「フォッサマグナ」とは、本州の中央部の、火山が南北に並んで本州を横断している細長い地帯のことを言います。ナウマンはフォッサマグナの範囲として、日本海側の新潟県糸魚川市~高田平野付近から、太平洋側の静岡県旧清水市(現・静岡市清水区)~神奈川県足柄平野付近に至るまでの広い地域を示しています。北から見ていくと、新潟県、長野県、山梨県、神奈川県、静岡県、東京都です。さらに関連する府県を入れると、富山県、岐阜県、群馬県を含む関東から中部日本となります。
このようにプレートの境界はほとんどが海の中の海溝です。そこでは海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込んでいて、プレートどうしのせめぎ合いが起こっています。これが「プレートテクトニクス」です。4枚のプレートがひしめく日本列島はたびたび巨大地震に見舞われるなど、数奇な変遷を繰り返してきました。そしてフォッサマグナについても、プレートテクトニクスを通して考えなければ理解できないのです。
私たち地質学者が研究を行う手法は、いわば探偵が殺人事件の全貌を明らかにするのとよく似ています。私は推理小説やミステリー映画が好きで、アルセーヌ・ルパン、シャーロック・ホームズ、金田一耕助などの登場する本を読みあさったり、刑事コロンボ、アガサ・クリスティなどの映画を好んで鑑賞したりしてきました。名探偵はいつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、のいわゆる「5W1H」について、証拠捜しや聞き込みなどによってありとあらゆる材料を手に入れます。そして、それらの材料を用いて事件の動機や殺害の方法などを時系列にしたがって矛盾なく説明します。こうして事件の全貌がわかれば、一件落着です。
伊豆・小笠原弧の衝突にともなう、南部フォッサマグナでのさまざまな現象を見るのに最適なのが伊豆半島ジオパークです。伊豆半島全体と、その北の箱根との境界までが含まれるという広大さで、行政の中心は伊東市(静岡県)、本拠は修善寺にあります。
フォッサマグナについて知れば知るほど、日本列島のど真ん中にこのようなものを抱えていたら、いつ地震が起きるか、いつ火山が火を噴くかと、気が気でなくなってもおかしくありません。なにしろ、フォッサマグナ地域にはいまも活火山である富士山がすっぽり入っていて、糸静線などの活断層が何本も走っているのです。
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途中知識のなさから難解に思うところもあったが、日本列島の形成の歴史がわかりやすくまとめられている。フォッサマグナは奥深い。地学や地理をもっと学生時代に勉強しておけばよかった。