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やれ補助金だ、TPPの外圧だ、という政治から
農業を見るのではなく、「植物工場」の現場や、
大手企業による運営の実態をレポートします。
そこから見えてくる農業の未来を読者と共に
考えようとする問題提起の本です。
テーマは「小泉進次郎」(当時は農業系でした)
「植物工場」「企業の農業参入」の3つです。
農業の「今」がわかる一冊です。
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農業は生産性もしくは収益性が低く、企業がいたずらに参入しても採算が取れる保証はない。
小泉進二郎改革、農業工場、企業参入とカバーされた項目はバランスが取れ、農業の現状をよく俯瞰できる。
何を持って日本農業が復活できるかは不明だが、強い意志を持った就農者とトヨタのカイゼンとのつながりは一つの光明のように見える。
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しっかり取材して描かれていて農家側、参入する企業側、政治の側、それぞれから見方考え方が書かれていて非常に参考になる。
植物工場に関してはコストはかかるので経営が成り立たない赤字だって言うのは知っていた。
しかし根本的な問題は他の部分にあると言う。
また農業に企業が参入すれば効率的で儲かる農業になると考えていたが、事はそう単純ではない。
今まで農業に対して考えてきた印象が覆される。
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深く切り込んでいて、著者の農というテーマへの執念さえ感じさせた。
表面的な企業礼賛論ならだれでもできる。
でも、著者は農政の歴史、現場の意識、政治、行政、企業経営(大規模も小規模)を知っていて、大局観も持っている。
その上で、地に足のついた、泥臭い取材も重ねていらっしゃる気がする。
既存の農家を「救ってやる」という上から目線的な企業参入ではうまくいかない、とか。
企業の農業参入が始まってから10年余り。考察がすごい。
地道に続けている企業、撤退した企業。それぞれの参入の考え方と戦略を丹念に取材している。
そして、農協改革のことと、農業法人的な家族経営から出発した企業経営なども丹念に取材している。
最後が、なんか清々しいのもすごい。
本の中で紹介のあった方々の、それから著者の方の、こういう大局観と、真摯に個別のことを分析し、そして理念を持ってする仕事観を、自分も持ちたいものだと思う。
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・日本の農地をフル活用した場合、栄養バランスを考慮せずにイモ類などを中心に栽培すれば128%を供給することができるがこれは現実的ではない。栄養バランスのよい食料を供給しようとすると一人あたり必要な量の69%しか提供することができない。
・現在の日本の農業は、企業的な経営感覚を持ち込んで大規模化しようとする流れと、耕作放棄という相反する2つの流れがある。農政としては、作物を選択して競争力のある分野に集中させようとする補助金の出し方と、広い分野に補助金を出して経営安定を図ろうとする出し方と二通りあり、農林族は後者を主張している。
・遅れている日本の農業を自分たちなら改革できると思って参入してくる企業は多いがだいたいうまくいかずに撤退している
・植物工場で低カリウムレタスを作ろうとしたが、歩留まりが悪く成功していない。カリウムは植物の成長には必要な要素で、不足すると生育が遅れる。また、カリウムは厚くて重い外側の葉っぱに多く含まれるため、これを外して出荷することになるが、成長が遅く、トリミングの量が多いという二重の不利を被るため、通常の半分程度の量になる。
・植物工場自体は2016年で191箇所と、5年で三倍に増えた。ただし、ハードやソフトが個々にカスタマイズされており初期投資が割高、作業工程が標準化されていない、販売先の確保ができていないなどの問題がある。人工光型の58%は赤字で25%がとんとん、黒字はわずか17%だという。太陽光型では黒字が48%、太陽光と人工光の併用型では57%が黒字になっている。
・養液に光が当たらないようにしないと藻が繁殖して養分の吸収がさまたげられるなど、ちょっとしたノウハウがなかなか伝えられない
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まず、タイトルが気に入らないね。誰かをあてにしている時点で終わっている気がするのだけど。
それは置いといて、内容だが、
企業が参入すれば良くなるわけではない、ニーズにお応えるものでなければならないと、いたって当たり前のことが書いてありました。
その当たり前が出来ていないのでしょう。
ずぶの素人が農業事業新規参画するに際して、農家に教えを乞おうとしたが、農家の教え方がまるでなっていないってことが書いてあった。
見て盗めみたいな感じでしかやってこなかったから、教える技術が身についていないらしい。
代替わりの際、毎回ゼロからのスタートって、そりゃ効率悪いわ。
経験が必要なものはあるだろうが、マニュアル作って70点ぐらいは出せるようにしようよ。
https://seisenudoku.seesaa.net/article/473591595.html
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日本の農業は、補助金依存であり耕作放棄。そして飽食の時代を迎え、廃棄食品が多い。ある意味では、足らないで飢餓になるよりは、ハッピイかもしれないと著者はいう。しかし、コメ離れが起こり、団塊世代の集団離農が始まっている。日本の農業は崩壊するというのだ。
2018年に発行されているが、2016年頃の日本の農業に対して、小泉進次郎の農政への挑戦、植物工場の悪夢、農業の企業参入の「三つの挑戦」を描く。日本経済新聞の記者らしいアプローチで、切り口が鮮やかだが、やはり現実の農業と遊離して、大地に根づいていないのがジャーナリストらしい。
自民党農林部長小泉進次郎を「未来の総理」と称して、その取り組みをヨイショする。
農水省、自民党農林族、官僚、そして農協の「べったり感」が明らかにされる。この関係が日本の農業を堕落させてきた元凶だとも言える。日本農業の競争力強化、体質強化、大規模化とコスト削減という話をしながら、小泉進次郎は、農協の中心的役割を果たす全農の解体を試みる。
日本の農業のコスト高の原因の一つに、全農があると考えていた。そのために生産資材の価格の低減を迫る。実際韓国の農業生産資材と比べて、肥料は4倍ほどの銘柄があり、価格は2倍。農薬は3倍。農業機械は5倍にもなる。それじゃコスト高になるわけだ。農林族議員を前にして、菅義偉官房長官の後押しで、小泉進次郎は切り込むのだが、結局は中途半端で、全農とは「負けて勝つ」と言って、幕を降ろす。まさに、小泉子ども劇場を演じるのである。
2009年から始まった戸別所得補償制度という補助金づけ農政を進め、さらに農水省の奇策 飼料米補助金制度の実態を暴く。飼料を海外に頼っているので、コメを飼料に使うことで、自給率を高めるという表看板があった。減反での他の転作作物よりも、高額な補助金10アール8万円という、稲作しなくてもお金が入る、まさに麻薬中毒のような補助金を実行する。そのことで減反は成功し、結果として、圃場は管理されず、雑草が生えたままの怠け稲作りを奨励する。真面目に美味しいコメを作る農家を鼻で笑うかのような政策をとる。しかし、そのことで米価が上がる。アメリカでトウモロコシをバイオアルコールにするという政策で、穀物相場が値あがったが、それと似たような現象が起こることになる。農水省は国民の税金を注ぎ込んで、米価をあげるという効果を作り出す。その悪政には小泉進次郎は全くの無策のようだ。農業者の減少により自民党議員も農業者の票が少ないので関心を持たなくなっている。集票機関の農協を自民党の手で潰すのだから仕方がない。まぁ。農水省の悪政が日本の農業を滅ぼすと言っていい。
一方でもてはやされる植物工場は、採算が取れず倒産していく。わずかに、スプラウトや葉レタスで生き延びる。結局は過剰設備投資で、補助金で建てても、運営費が高くなって倒産する。
植物工場研究の権威の古在豊樹千葉大学名誉教授は、植物工場は「無駄なことをいっぱいやっている。未熟な技術だ」という言葉を紹介する。日本の気候は農作物にとって有利でありながら、あえて植物工場にする意味が問われる。まして、安い野菜を過剰な設備で作るという本質的矛盾の中にある。過剰の化学肥料を使えば、硝酸態窒素の多い健康を害する野菜しかできないわけで、矛盾の悪循環を進めている。
最後に、企業の農業参加を取り上げる。オムロン、ニチレイ、吉野家ファームなどの失敗を取り上げて、なぜ企業が失敗するのかを解き明かす。わずかに成功した例を書いているが、鼻クソのような事例だ。真っ当な大地に根を下ろした農業しか生き延びるしかないことをこの本では行間で語る。いやー。面白かった。IT企業が農業に入ってくることで、今は農業は騒がしい。コロナ禍で農業の開放感があって組織に縛られたくないという新規参入者も増えている。そんな甘い新規農家はあっという間に、借金を抱えて逃げ出すことだろう。さて、日本の農業、どうなるのか?面白くなりそうだ。はっきりしていることは、日本の農業を崩壊させているのは、農水省だとということだ。