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LGBTQの本棚から
第75回「泥棒はスプーンを数える」
ローレンス・ブロックの大人気シリーズ、泥棒バーニィの新刊、おそらくこれで最後、の巻が出ました。
このシリーズ、謎自体はたいしたことない……。
本をこよなく愛し、古書店を営むかたわら泥棒をやめられない(といってもバーニィは人を殺したり傷つけたりしない、いまはもう絶滅危惧種の紳士怪盗ですが)バーニィと仲間たちのえんえんとご飯食べながらの漫才のような会話がウリなのですが、なぜミステリーのコラムではなくこちらに書くのかというと、そのバーニィの親友が、レズビアンのカロリン?だからです。
二人は毎日買ってきたお昼を一緒に食べるほど仲がいい。
といってもごく普通の暮らし、友達づきあいが語られるだけですから、ゲイだろうがレズビアンだろうが関係ないのですが……。
というのがごく普通にでてくるのをみて、考えてしまいました。
うーん、日本のミステリーに、ゲイやレズビアンの探偵って、いる?
ホームズの伝統をしょって、女嫌いはいるけど、火村英夫が男を好きって訳じゃないしなぁ。
コナンは、蘭ちゃんとのロマンス(ついでに平次と和葉も)が柱だし。
ジャンプやマガジンやサンデーにLGBTQの主人公、いたかなぁ。
「クッキングパパ」とかにも出てきてないよなぁ……。
まあ、アメリカだって、当たり前のようにどの本にも顔を出すってわけじゃないけど。
トランスの探偵、とかって、出てこないかなぁ。
2019年01月07日
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物凄く久しぶりのブロック。マット・スカダーのシリーズでハードボイルドの真髄を描き、殺し屋ケラーのシリーズではブラックユーモアの味を存分に出し、短編集ではニューヨーカーならではのお洒落な短編やスラップスティックで遊んだり、そして小説の書き方を出版したり、真の意味での巨匠。
そしてマットとケラーの中間地点(少しケラー寄り?)に位置しそうなのが、この泥棒バーニーのシリーズ。ユーモア・ミステリというと良いだろう。そしてお洒落なニューヨーカー・ノヴェルとしての味わいもたっぷり。
その10作目。
泥棒の表の顔は古書店経営者なので、店番をしている時間で読んでいる本の話なども出てくる。コナリーのハリー・ボッシュとか、ディーヴァーのリンカーン・ライムとか、ダン・J・マーロウの『ゲームの名は死』とか『サキ短編集』とか。
でも今回の事件の始まりはスコット・フィッツジェラルドの生原稿。蒐集家に依頼され盗みに入るシーンが、バーニー・ローゼンバーの本業の最初の見せ場となるが、それがスリリングと言うとそうでもない。バーニーの脳内独り言がなんとも楽しいのだ。
また友人のキャロリンとの日々の食事シーンでの会話のやり取りは、本シリーズならではのウィットと情報に満ちており、もはやストーリーなどどうでも良くなる。
巻末解説でも書かれている通り、ストーリーというエンジンを搭載していない熱気級のような推進力で、それでいて読ませる作家がブロックなのである。
ケラーのシリーズでも本業の殺し屋の描写より多い趣味の切手収集に関わる主人公の行動や旅先への移動や初めての街への新鮮さを楽しんたりする記述が何とものどかなのだが、本書もニューヨークの街角での日々や出会いを満喫するバーニーの姿や思考の有様は何とも素敵だ。
全体構造はミステリであり謎解きでありながら、それ以上に語り口で乗せられてしまう作品。ぼくの場合、大体5ページ置きくらいに声に出して笑ってしまった。苦笑、爆笑、微笑、その他。
力を入れて読むべき本ではないが、そんな本の間に挟んで読みたい。そういう時間も欲しくなるような作品であります。
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泥棒バーニィ最後の作品。
冒頭からキンドルが登場し、本屋の存在意義を突きつけられうバーニィ。
盗みを頼まれる一方、老婦人の死亡現場を「見る」ことを頼まれる。
頼んだ男からお金をとりそこなるが、それを取り返すだけではすまさない。
あれやこれで店を閉めている間に表のかごに「またいない」と
文句のメモが残されていたが、
それがまさか驚きの出会いに繋がるとは思わなかった。
いろいろな国の食べ物をテイクアウトしてきた、
ディーバとキャロリンが、
とうとう、というかようやくチャイニーズにたどりついたのも
最後をしめくくるのにふさわしかったのでは。
チャーミングの楽しい出会いになったし。
現場を見てくれたお礼として、
象牙の小さな像を事件現場から持って帰れば(!)と警官レイに言われたのは断ったのに、
結局キャロリンのために盗んだのはバーニィらしい。
最後に嬉しいおまけがついていたのも良かった。
我らが名探偵の葉村晶が登場して、
この作品が「盗まれていた」。
さて、長い時間をかけて描かれたシリーズが終わってしまうのは、
とてもさびしい。
バーニィが読んでいたジェフリー・ディーヴァも、
マイクル・コナリーも読んでしまったので、
レックス・スタウトを読まなければ。