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緩くつながる連絡短編集。ねっとり、じっとりした読み口は独特なので次回作も楽しみ。神様ってその本質に気まぐれさと残酷さがありますよね、ヤハウエといい、本作のスイといい…
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面白かったです。
生き神とされる「スイ」が関わる人たちがどんどん堕ちていく…目眩くグロテスクな世界でした。
スイは観音として永く生きていてその間に更に化物と化していくのですが、スイの側にいる人たちはあてられておかしくなるのか、既に狂っているからスイがとりつくのか。
お話は泰輔と奈江のところが好きです。好きです、というとちょっと違うかもしれないけど、この関係が良い。
東方さんも怪しくて良いです。この人はスイより上位なのかな。。
幕切れも好きです。駆逐されていくのか。。
概ね満足なのですが、妖しさの深度がちょっと物足りない感じはあります。もっと目眩いても良いのですよ、となりました…皆川博子さんの読みすぎなだけですきっと。
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なんと妖艶な物語なんだろう。そのような描写はほとんどないのだが、なんとなく官能的に感じるのは何故だろう。
各章にスイという生き神様が登場し、それぞれの人物に寄生して暮らしている。スイは魅力的に表現され、寄生する人物もスイに寄生していく。
ただ、スイは単なる生き神様ではなく、人間の赤ん坊を食べる化け物だった。
各章ごとに分かれていて、登場人物もそれぞれ違うのだが、物語としては全て繋がっていて、その世界観にさえハマれば楽しめる。
実際、こういった感じの物語は初めてだが、面白かった。好き嫌い分かれる作品だが、好きな人はかなりハマる作品。3.5。
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図書館の新作本棚で見かけた初読みの作家さん。篠たまきさん。装丁の赤と黒、タイトルの「人喰観音」…好ましい。
2015年「やみ窓」で第10回「幽」文学賞短篇部門大賞受賞、同作でデビュー。本作が受賞後第1作ということ。で、期待を上回る好感触。閲覧注意らしいがそこがまた蠱惑的。
4つの連作短編集。軸にスイと言う正体不明の水辺の観音様の化身らしき生き物が据えられている。そこに関わる人たちは皆スイに幻惑される。エログロ描写が苦手な人には薦めないが、一部の好事家はど真ん中の直球に魅せられるだろう。私もその1人だった。何より最強の鬼婆、謎の商人東方朔等キャラが粒ぞろい。
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書き下ろし
ミステリーかと思ったらホラーだった。
洪水で上流から流れてきた女”すい”は、不老不死で、人が感じられない真実を見抜く力を持ち、「観音」とか「生き神」とか言われてきた。
拾われて一緒に暮らした薬種問屋の若隠居蒼一郎が老いると、甥の泰輔と一緒に暮らすが、生肉を好む”すい”が、生まれたての赤ん坊が一番美味しいと言い、昔から出入りの商人東方(これも年を取らない)が調達してくる。それを知っても協力する女中の奈江もまた、人を殺していた。
後半は泰輔の姪凛子が男たちに夜通し輪姦され、トラウマで狂乱して暴れるために座敷牢に閉じ込められたところに、すいが入り込んで離れで一緒に暮らすようになる。凛子とすいは強姦犯を探し当てて一人ずつ殺し、聟も片割れだと知った上で結婚し、山の別荘ですいと暮らすが、聟に抱かれに来ては毎年出産してすいに食べさせ、骨を粉にして皿に焼いて東方に売らせていた。
凜子の妹で婿と密通していた琴乃と兄が、すいの過去を調べて、すいから凜子を救い出そうとするが、すいと凛子は崖から川に落ち、凛子の死体だけが見つかる。
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生き神様スイに魅入られる人達の話。
10年20年30年何年経っても生き神様は妖艶な姿で宿主を惑わせる。
綺麗な寄生虫みたいだ。
美しさに魅入られて宿主は常識から踏み外していく。
愛は永遠ではなく死はいつか襲いかかってくる。
人の死によって宿主は代わり物語も変化していく。
エロチックなシーンが綺麗な文章で色気と妖艶さが強みを増す。
始めから終わりまで美しい文章。久しぶりだなこういうの。
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諸悪の根源は スイなのか
それとも惑わされた人間なのか
と思うのですが
最後の短編では
狂言回しかと思われた 行商人東方が
思わぬ秘密をもって
すべてを知る妹と対峙します
スイの存在すら実は・・・という
おぞましい結果に
業の連鎖の恐ろしさを感じます
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不死で官能的、予言で人の役に立つことを喜ぶような、穏やかな「生き神様」。
全く無害の生物のはずが、周りの「普通」で「善良」な人々は、狂気に落ちていく。
それまで、世の理不尽さ・残酷さにただじっと耐えていた人々が、生き神様に触れることで欲望を解放されるのか。
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耽美で、妖しく、美しい生き物「スイ」と、彼女によって静かに狂わされる人々のオムニバス。
博多に向かう船の中で、深夜、ドキドキしながら一気読みした思い出。
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残酷オブ残酷だしグロいので気軽に読んでとは言えないけれど、篠たまきさんの美しい世界に気づけばどっぷり浸からされている本です。
スイが居なければそもそも凛子はあんな目に遭わずに済んだのに、凛子がスイに魅せられてしまうのはどうしてなのか…『人ではない何か』の魅力がそうさせるのか。
東方さんいつスイ食べるんだろう…って後半ドキドキしてましたが、あの終わりかたは色々と想像できていいですね。
(月の淀む処でも書いたかもですが)篠たまきさんの余韻が好きです。
でもほんとうに残酷なので気をつけないといけません。
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人の肉を求める生き神様と、それに翻弄された男と女たち…
病み衰えて死んだ坊ちゃんを生きてるみたいに介護して添い寝してる媼…気持ち悪怖いな…
そんな男に恋焦がれてその妻を代わりに抱く男…
やばみが凄い…
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フォロワーさんのお勧めより。極上の幻想怪奇小説。「観音様」と崇められた美しい女は人を喰う異形のものだった。スイの妖しいまでの美しさと不思議な能力に魅入られた人々は彼女に翻弄され、深い業の淵へと堕ちてゆく。耽美な文章共々、大変好みの作品でした。グロいのが苦手な人は要注意。
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某書店の「怪奇幻想」コーナーにあって購入。
ちょっと恐いけど美しく非現実的な物語が読みたいな〜と思って手に取った。
あらすじを読むとなんとなくだんだん狂っていく人間を見ながらも何もできない無力な観音のその悲しみのようなものを描いているような感じがしたのだが、むしろ主役は人間。観音様は何も知らない。
個人的には第二章の「飴色聖母」が一番好きだった。自身が平穏に生きていくために、無惨にも多くの人間を手にかけ、「私に懐いたばっかりに」と子犬にだけ謝るその姿は、まるで『エルフェンリート』のルーシーのようだ。
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分限者の薬種問屋に拾われた女、スイ。並外れて美しく豊艶な肉体を持つ彼女は、人の形をして人にあらざる「観音様」だった…
作品全体に漂う妖しい雰囲気。彼女に魅了され狂っていく人々はとても幸せそう。
『なよやか』などスイを表現する言葉は神々しくも艶めかしい。