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美術評論家でもある名探偵オーウェン・バーンズの家にアメリカの外交官でもある旧友ラルフ・ティアニーが飛び込んできた。
正体不明の路地に迷い込んで妙な光景を目にしたという。実は同じようなことが過去にもあったと新聞は伝えている。
その路地は通常存在せず、迷い込んだ者は戻らないか心を病んでしまう。彼らはその路地で不気味な人々を目にするのだが、そこでみたシーンはどうやら現実に起こることらしい。
オーウェン・バーンズが捜査に乗り出す。
というお話なのですが、このオーウェン・バーンズがなかなかの気取り屋で鼻につく上に、だらだらと描写が長い。
よって面白くなるまでにやや時間を要する気がします。
この名探偵を好もしいと思えればもう少し星が増えるのでしょう。内容は手が込んでいて繊細。
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ポール・アルテの実に8年ぶりの新刊。今までのハヤカワ・ポケミスから、聞いた事の無い出版社に変わった事情は知らないけど、もう読めないのかと危惧していたので有難かった。デビュー以来一貫していた不可能犯罪系ミステリの作風は健在で、今作は路地が忽然と消失する謎。そのメインの謎自体はバカミスに近い都合の良い物だったが、その回りの細かいサブ的な謎が巧くて、ポール・アルテの面目躍如。幾つかの手掛かりが後出しでも気にならない位に面白かった。是非この新シリーズは最後まで刊行して貰いたい。
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霧の中から現れ、そしてまた消えてしまうクラーケン・ストリート。迷い込んだ人たちが過去や未来の幻影を目の当たりにし、あるいは失踪してしまう「あやかしの裏通り」の謎を追う幻想的で不可思議なミステリ。
どこからどう見てもこれはもう「不思議」としか言いようのない事件です。時空の歪みとか、どう解釈すればいいのやら。もうこれは本格じゃなくって広い意味での幻想ミステリなんだろうなあ、まあそれでも面白いからいいや、って思いながら読んでたら……本格ミステリだった!
しかも真相が見えたと思ったその後もまだまだ気を抜けず。やられたなあ。
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帯に「八年ぶりのポール・アルテ!巧妙なトリックの裏に潜んだ異常な動機とは?緻密な計画がはたしてなにをもたらしたのか?名探偵オーウェン日本初登場」とあるが、名探偵オーウェン・バーンズシリーズ第四作である。
これが売れたら①からも出すという営業戦略か?
これがシリーズ最高傑作とは思えないが、敢えてこれから出すということは、シリーズ最終巻にメタフィクショントリックがある希ガス。
この④はそんなに異常な動機とも緻密とも思わなかったが、犯人の不可能犯罪へのスタンスがメチャ受けた。
不可能に思われても、不可能犯罪は犯罪と認識されるとトリックを暴かれる危険がある。
派手な不可能犯罪ではなく、地味な事故に偽装した方が、犯人は安全である。
地味に隠せばいいんだろと、犯人がとった戦略は、木を隠すなら森の中、不可能犯罪を隠すなら不可能犯罪の中!?
ということで、犯人はタイムスリップ現象が起こる怪しいロンドンの裏通りで、二年間に10年前20年前の過去と、未来でも殺人を繰り返すという話。
タイムトラベルしたように見える物理トリックは、質は森博嗣、量は島田荘司に負けていて、ちゃちだなと思う人もいるかもしれないが、それは密室殺人のトリックと混同しているせい。
ウェルズがタイムマシンを発表したのは1895年で、この小説の舞台は1902年である。
1902年にどれだけ時間旅行の概念が浸透していたか?
舞台が1894年なら、絶対メタフィクショントリックがあると断言出来るが、1902年という微妙な年代設定にするアルテの面白さに気づいてくんさい。
意外な真犯人がフルネームでちゃんと序盤に登場している純粋本格ミステリだが、古典のコードで古い時代設定で、現代の作家が書く意義を読み取って欲しい。
本格マニアは簡単に真犯人が判るだろうが、それを単純に喜ぶだけではアルテを理解した事にはならない。
アルテの他の作品読んでないと、この作品の面白さも半減するかもしれぬ。
キャラ小説としては、名探偵の本業は美術評論家であり、美しいものを守る為、命懸で馬車を止めるナイスなシーンがある。
美女を守る為ならアホか!となるが、主人公が命を懸けたのは唯一輪のスミレの花であるw。
おお受けしました。
美術談義はプッサンぐらいしかないが、主人公が美術評論家という設定は気に入ったので、このシリーズは全部読む。
これが売れないと残りが翻訳されないだろうから、皆様買うように。
英語ならともかく、仏語の原著は読む気0。
おまいら図書館で借りずにちゃんと買えよ。
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20世紀初めを舞台にしたミステリー。序盤はなかなか読み進みにくかったが、終盤はなかなか面白く読めた。
ただ、主人公のキャラクターは今一つかな。
消える路地の謎については古き霧のロンドンならではかな。
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この本が2005年の作品ということを考えると確かに本格作家界隈で話題になる作風である。
たまにこういう本格ミステリを読むとクリスティを読み漁っていた学生時代を思い出す。
難解な事件、本書においては難解どころか、通りが消えるという奇抜で突飛でありえない事件のWho、How、Whyを暴いていく。
1900年代の古めかしさの中でこその、ぎりぎり許せるそりゃ無茶だろうと思うようなトリックだが、この手の話はそういった現実性よりも事件の裏にある意外なストーリー、伏線がすべてかちっとはまっていくさまを楽しむことなのだろう。
作品とは関係ないが、この本のサイズ、紙の感触はとても心地よい読書体験を生んだ。
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ロンドンの霧の中、突然現れ忽然と消えてしまうというクラーケンストリート。友人ラルフがその通りに迷いこんで奇妙な体験をしたと聞き、探偵オーウェンと助手のアキレスは捜査に赴きますが…。とにかくこの時代のイギリスの街の描写がゾクゾクします。不思議な通りが実在するのかトリックなのか、気になってぐいぐいと読まされました。通りの謎そのものには賛否あるかもしれませんが、オースティンが繰り広げるその後の回収が見事です。日本の読者のために書き下ろしたという著者の筆による表紙絵をはじめ、素晴らしい雰囲気を堪能しました。
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霧のロンドンに消える路地。そこに迷い込んだものは過去の幻影を見たり、二度と戻って来なかったりするという。友人ラルフの不思議な体験を聞いて、オーウェンは路地の謎を解くべく捜査を始めるが…
二十世紀初頭のロンドンを舞台にしたクラシックな味わいの本格ミステリ。冒頭の怪奇な謎がかなりワクワク。なかなかに凝った事件だが、展開が速く分量も少なめで読みやすかった。(というかあっさりしすぎ?)
犯人はもっと他にやりようはなかったのかとは思うけど。
オーウェンはシリーズ探偵らしいので、他の作品も読んでみたい。
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20世紀初頭のロンドンを舞台にした、というよりあのシャーロック・ホームズが活躍していた頃のロンドン言えば、よりイメージがつきやすい。クラシカルな本格ミステリーでこちらは名探偵オーウェン・バーンズが頑張って活躍していく。何よりクラーケンストリートと呼ばれるあやかしの裏通り近辺が、読み込むほどに頭の中で3D化され不思議な感覚になった。
古き趣きのある喫茶店で美味しいコーヒーでも飲みながら読むと、いい時間が過ごせると思う1冊。
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不可解現象をトリックに使った本格推理小説。ポール・アルテ著のオーウェン・バーンズというアマチュア探偵が謎を解くミステリ。体裁としてはシャーロック・ホームズやクリスティのような謎解き。本格好きにはしっくりくる作品。しっくりしすぎて、どこかで読んだ気になってしまうのが惜しいところか。特にロンドンを舞台にしているので、どうしてもホームズと比較したくなる(してはいけない)。作品自体は、「どのように不可解な謎を解くのだろう」とドキドキしながら読んだ。最後の謎解きで明かされる、犯人の巧妙な手口については、本格らしく天と地をひっくり返される驚きもある。さくっと読めるので、謎解きが好きな人におすすめ。
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オーウェンの友人、ラルフが脱獄囚と間違えられ、ロンドンの霧の裏町を逃げ回り、迷い込んだクラーケン・ストリート。
その通りの家の窓から女にナイフで斬りつけられる男性を目撃して立ち去るが、ライターを落としたことに気づいて引き返すと、クラーケン・ストリートは忽然と消えていた。
ラルフから話を聞いたオーウェンはクラーケン・ストリートに興味を持ち、調べ始めると奇妙な体験をした人々が他にも存在することが。
クラーケン・ストリートとは本当に幻の通りなのか?オーウェンと友人のアキレスは捜査に乗り出す。
霧の裏通り、声をかける赤いショールの女、ぶどう売り。
部屋の窓からぼんやりと見える一場面。
わずかな時間の間に消え失せる通り。
ホームズの世界を思わせて舞台だけでドキドキする。
美に対するこだわりで奇行も飛び出すオーウェンがラルフと美女について当てこするのにニヤニヤして、語り手のオーウェンの友人、アキレスの目前に現れる奇怪な出来事。
ちょっとそーかなーと思って読んでたけど、驚かされる結末、楽しかった!
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ポール・アルテ。霧の中に現れ、そして消えていく裏通りの噂とそこで起きた幻影の殺人、そして現実に殺人がおこる。どんどんオカルトな雰囲気に流れていき、トリックについてもこんなに簡単にいくのかと思ったが、最後には推理小説としてきれいに着地していたと思う。