投稿元:
レビューを見る
あの『アルケミスト』のコエーリョが?と、ずっと気になっていた本は、その名も『不倫』。
出版当初に賛否両論の的となったこのタイトルから、内容も大きく外れはしない。
しかし、主題は恋愛などではない。
曰く「世界でも有数の安全な国」に暮らすリンダは、ジャーナリストとして有力新聞社に所属。
聡明な彼女には二人の子供と、国内でも指折りの資産家である夫が居る。
夫は結婚から十年が経過した今でもリンダを情熱的に愛しており、二人は常に世間の羨望を集めていた。
しかしリンダは、とあるインタビュイー(解説によるとコエーリョ自身が投影されている)の一言から、現状を疑問視し始める。
日々、増していく倦怠感。
そんな折に再会したティーン時代の恋人は、彼女の衝動を刺激してー。
女性特有の閉塞感が描かれた本作には、同性として、先行きの微かな不安を見出してしまう。
一見『アルケミスト』と掛け離れている様に思えて、随所に散りばめられたメタファーは共通していた。
スピリチュアルな要素も又、然り。
一つの不倫のドラマは終わりを迎えたが、そこから尚、彼女の問わず語りは続く。
それは決して終焉ではなく、確かに拓かれた末に幕を閉じた。
投稿元:
レビューを見る
ダイレクトすぎるタイトルに興味を惹かれて手に取った一冊。「アルケミスト」が好きで、今回もスピリチュアルな世界、心と向き合う精神世界が描かれている。堕ちるところまで堕ちる主人公、でも彼女は恵まれている。
投稿元:
レビューを見る
完璧な夫と子どもに恵まれたジャーナリストの女性が、激情に駆られ不倫をする話。満たされ安定した生活が約束された人生に意義を見いだせず鬱状態になってしまう。そこから自らの力で刺激ある人生を謳歌しようとする。刹那の欲望に溺れながら傷ついてく彼女は、ついに真実の愛に辿り着く。不倫という不貞を美しい物語に仕立て上げた側面は、多くの方から不評を買うかもしれない。その一方で、誰もが隠し持っている欲望や心の闇をつぶさに描き出すことにより、惹かれていく部分も否定できない。コエーリョにしては人間臭い作品であった。