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短編24作。
短いほど濃密さと凄みと、美しさが増すのだろう。前の余韻を引き摺りながら次へと誘われ捉えて離さない。
甘い蜜に抗えず囚われてしまう蟲になったような。
暗い部屋の片隅に小さく蹲っているような。
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未収録短編集。
『皆川博子コレクション』全10巻が完結しても尚、これほどの短編が未収録のままというのにひっくり返りそうになった(いっそのことコレクションを3期20冊とかそれぐらいのボリュームにしても良かったんじゃ……?)。
姉妹編(?)も刊行が決まっているらしい。予定が出るのが楽しみだ。
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単行本未収録の作品でこんなに凄まじいとは。
知っていたけど、それでも瞠目。
1977年から2016年までの作品群なので、作者47歳から86歳!
このレパートリーの広大さよ。
夜のリフレーン/夜、囚われて……/スペシャル・メニュー/赤姫/夜明け★/陽射し★/恋人形/赤い砂漠★/紡ぎ唄/踊り場★/笛塚★/虹★/妖瞳★/七谷屋形/島/赤い鞋/青い扉★/新吉、おまえの★/桑の木の下で★/そ、そら、そらそら、兔のダンス★/水引草★/メタ・ドリーム/蜘蛛が踊る/そこは、わたしの人形の
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あとがきで「短篇は、実に難しい」とおっしゃるが、私にはこの方の作品は、どちらかというと長編より短篇のほうが魅力的だ。
キレ味がよいというのではないけれど。不思議な模様の小さな石のように、そこにしかなく、美しく、見つけた者にだけ響く感じが。
ちょっと筒井康隆を思い出すような『スペシャル・メニュー』。
『虹』『青い扉』が◎
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読んでいて背中がゾクゾクしてくるような、
怪しくて、美しくて、でもちょっと怖い
極上の短編がずらりと収録されています。
初めはおっかなびっくり読んでいた世界に
気がつけばどっぷりとはまり込んでいて、
このまま抜け出せなくなったらどうしようかと
鳥肌をたてながらもとうとう最後まで読んでしまいました。
(怖い話、苦手なのに・・・)
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短編集24編
少し現実から乖離した感覚の登場人物たちと言葉の選び方だろうか,ゾクリとするような景色がすぐ隣にあってどうかするとそちらへするっと移行してしまうような怖さがある.短編とは思えない1編1編の重さと輝き,未収録作品とは驚きである.
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1977〜2010年初出の24編の短編集。
短いものは1ページで、怪しげな雰囲気がいっぱい。
ホラー系、不条理系が多いが、皆川ワールドとちょっと違う印象。
密かに応援している篠笛奏者が立ち直れるようにと、自分の顔に溶けた硝子を垂らしたガラス工芸家の女性のはなし「笛塚」が一番印象に残った。
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幻想的な短編集。短めの作品が多いのだけれど、その分収録作品数も多いので。少しずつ、たっぷりと楽しめる一冊です。むしろ一気に読んでしまうのはもったいない気もします。
お気に入りは「スペシャル・メニュー」。奇妙な設定の出だしに惹かれて、そしてこのオチ。しかしどこかしらユーモラスでもある読み口が印象的です。
「紡ぎ唄」も好きな作品。じわじわと語りかけられる物語が、徐々に浸透してそのうちに狂わされていくような心地です。語るほうが実に楽しそうなのも、なんとも。
「七谷屋形」は美しく思えるけれど一番怖かったかなあ。でも見てみたい気もする……。
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40年以上前に書かれたとは思えない圧倒的秀作ばかりの幻想短編集。
表題作「夜のリフレーン」姉に恋人を奪われた妹の怨念だけではなくて・・・こ、怖い・・・。
「夜、囚われて…」こういう小劇場的な昼ドラっぽいのも書かれたんだな皆川先生・・・。
「スペシャル・メニュー」先生お得意の皆川的SF風味作品。少子化で十月十日って・・・それはつまり・・・。ポップでいて怖い・・・。
「赤姫」さりげない男色オチに震える・・・そして・・・。
「夜明け」作中で一番幻想小説ぽいかも。本当に解き放たれたのは誰なのか。
「陽射し」ラストの母親の狂気オチ・・・じんわり怖かったな…。
「恋人形」壮大な当て馬にされる夫婦がなんか・・・なんかあれだな・・・。幻想小説なんだけどこう、愛ですね・・・。
「赤い砂漠」家庭内サスペンス風幻想小説。子どもは実は気付いている。
「紡ぎ唄」これも家庭内サスペンス。ドロドロで震える・・・皆川ワールドに住まう無邪気に闇を抱える聡い子ども・・・。
「踊り場」ほのかな近親相姦ぽさ・・・背筋が凍る・・・。
「笛塚」男を想い身を焼く女・・・皆川ワールドのヤンデレは何故にこうも美しいのか。
「虹」愛憎疑似百合という圧倒的パワー。
「妖瞳」腐男子のホモ、完全にセクハラである。これも家庭内サスペンス色強いな・・・。
「七谷屋形」親世代百合オチに見せかけて・・・っていう。一筋縄ではいかないのが皆川節。
「島」先生の十八番・戦争小説。
「紅い鞋」ててて纏足ネタ・・・。時代が時代なんだろうけど、先生のこういう女性の人権みたいなの描かれるの珍しいな・・・。新鮮だった・・・。
「青い扉」ああ~~~~めっちゃ皆川節の恋愛描写だ・・・。ちゃんとミステリなんだけど、恋愛小説だ・・・。
「新吉、おまえの」作中で一番好きです。これは・・・多分気が触れたって言われて、幽閉されちゃったんだろうな、お嬢さん・・・。それでもずっと新吉の下駄になりたい、なりたいってずっと言ってるんだろうな・・・。母親に好きな男寝取られたらそりゃあな・・・。
「桑の木の下で」脱皮する女たちのお話。
「そ、そら、そらそら、兎のダンス」かわいらしいけど、やっぱりただならぬ怖さがじんわりと来る・・・。
「水引草」皆川節炸裂の幻想掌編。
「メタ・ドリーム」これも皆川節だな~~。どこからどこまで夢かうつつか。
「蜘蛛が踊る」 これもなんか怖いな~・・・、何が怖いって恐ろしいものをなんの疑問もなく受け入れている世界観が・・・。
「そこは、わたしの人形の」中川多理先生のお人形と出会った少女視点なのでは・・・??
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なんと独特の世界観!
短篇集です。
訳の分からない気分ではあるのに読んでて怖かったり、読み終えた途端にゾッとしたり。
この世界観は好きです。
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うふふ。ほほほ。(変な笑いですみません)
大好きな皆川博子さんの本を読むときは、いつもこういう笑いが漏れてしまいます。
皆川博子さんの本は、うまく表現できませんが、蠱惑的という感じでしょうか。
私の頭では到底わからない世界ではあるのですが、わからないことも含めてうっとりしてしまいます。あぁ、とっても素敵な時間でした。
ちなみに、こちらは今まで収録されていなかった短編を集めた本になります。
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24の短編集だが、短い文章で凄い内容を書き上げる力は凄い.「青い扉」での生烏賊の不気味さ、母親の大坪喜久枝の厚かましさ、うまい文章だ.どの作品もエロティックな面とミステリアスな切り口が混在しており、このようなモチーフを蓄えている著者の奥行きを感じた作品集だ.続編を期待!
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最近では外国を舞台にした長編作品が多いので、日本を舞台にした日常をベースに独自の幻想味あるエピソードに昇華させる、というこの短編集は新鮮味を感じるくらいでした。書かれた年代はそれこそ数十年前のものも含むというのに。
つまりそれだけ、まったく色あせを感じさせない魅力があるということです。時代がこれだけ足早に色々と変わっているのに、人の愛憎や因縁はまるで変わらず、それらが紡ぎあげる非日常の世界の魅力もまた同じく。最小限の言葉で短いページ数でこれだけ豊かに様々な作品世界を描ける術に改めて感嘆するばかりです。本当に、いまさらな感想ですが。
わたしは特に、「踊り場」の冒頭三行が好きです。写実的な描写なのに、官能的な奥行き、陰りがどこかしらに潜んでいて、その味わい深さに何度も読み返してしまいました。たったの三行なのですが。どこをどうしたらこう自在に言葉を魅力的に紡げるのだろうとうっとりします。
これほどの数の短編を集めてくださった編集者の方にも感謝しなくては、と思います。ありがとうございました。
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単行本未収録の作品を24編に、作者によるあとがきを添えた短編集。
古いものは40年ほど前にさかのぼり、近年の作品へと初出順に並べてあるが、こうして今読んでもどれも遜色なく妖しい魅力を湛えている。とくに「踊り場」は、くらりとするような妖艶さと暗い哀しみに思わず再読した。
昔の短編は切り抜きすらとっていないと言う作者の、未収録作品を拾い集めた編集者の熱意の伝わる一冊で、装丁も素晴らしい。
表題作のシリーズは画集になっているそうで、ほかの執筆者たちもじつに豪家なので読んでみたいのだが、もう手に入れるのは難しいかな。
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あれほど長大かつ重厚で素晴らしく質の高い長編の数々を著す一方で、掌編を含む短編作品においても比類なき傑作揃い…、編者を始め多くの人が言及されているように、とてもじゃないがこれまで書籍化に至らなかった”落選作”を集めたものなどでは、決してない。
表現の世界においては分野を問わず、長い尺や多くの言葉を費やすよりも、短い時間と限られた少ない紙幅で伝える方が、格段に難しい。
文章量としては少なくても、皆川博子氏がものす短編は驚くほど濃密かつ具体的なイメージを読者にもたらし、そしてそれが読中に脳内で広がり続けるという類。
語彙の選択とそれを並べるタイミングが極めて絶妙であり、可食率100%以上だからだ。
幻想小説あるいはミステリーの薫りを纏う”らしい”雰囲気の物語から、実体験を基にしているであろうエッセイのような軽い作品まで幅広く、いわばモチーフの宝庫のようになっていることも、他の作品群に思いを馳せながら読むと実に面白い。
例えば「赤い鞋」でチラリと描かれている宗教観からは、皆川氏の心の奥に通底しているラインが垣間見える気がしたり。
衆道=男色の歴史に関する考察も興味深かったし、ジェンダーを巡る文化についても然り。
2019年現在の若い人たちが当たり前に教えられてきて、抱いているような感覚がもしこれまでずっとスタンダードだったとしたら、氏の傑作は悉く生まれてこなかったことは間違いない。
良い悪いの尺度ではなく、時代が下がって進歩し続けるものがある傍らで、かつての妖しくて醜くも麗しいドロッとした塊が失われつつあることもまた、確か。