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どきっとするタイトルだけどそんなにエロティシズムではないです、むしろ最初の短編だけかな、性描写が出てくるのは。
6つの短編集のなかで好きだったのは「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」です。2つは繋がっていて(のちに最後の「あなたの愛人の名前は」とも繋がるのですが)読んでいて女性目線と男性目線とでの捉え方がなんとも言えず、その読後感が心地よかった。
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『あなたの愛人の名前は』収録の「蛇猫奇譚」が猫飼い妊婦の産後鬱の話を猫の目線から書いていて、妊婦になる前に読んで号泣した。どんなに辛くても、絶対飼ってる生き物たちには当たらないと、胸に刻んでいる。
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もう恋愛とか大変なことは卒業でいいやと思っていたけれど、傷つけたり傷つけられたり、大切にしたりされたりしながら、今感じている幸せがいつまで続くか分からないのにずっと続くと信じたくなってしまう切なさが懐かしかった。
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大好きな島本理生さんの作品ということでさっそく。
表題作を含む六つの短編集。
登場人物もつながりがありそれぞれの作品ごとに視点が違うので、印象が変わってくる点も面白く読めました。
気に入ったのは氷の夜にという作品。
お店に訪れる女性客が気になる不器用な男の人のお話。
こういう店員さんがいるお店に私も行きたいな。
人とのつながりっていろいろな形があるし、お互いの認識に違いがあったり、名前をつけられない関係があったりするものだよねとしみじみ感じました。
帯にもある、今この瞬間に深く、深く理解されていればいい。という言葉は胸にささりました。恋とか愛とか関係なく、相手にその時理解されていると感じられれば満たされる思いもあると思います。
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「ファーストラブ」で直木賞を受賞した後の直後に発売された本作。
しかし、初出は少し前なので、この帯はどうなのかと、少し疑問に思う。作者の責任ではないけど…
表題作を含め、パートナーがいるのに、他の人に惹かれてしまう人々を描いた連作短編集。
「連作」と言うほど、絡んではいないけど、登場人物が関連しているので、「連作」としておく。
本のタイトルは少々刺激的だが、内容はどちらかと言うと日常的で、登場人物が感情的になることもほとんどなく、淡々と物語が紡がれる様は、島本理生ならではだと思う。
許されない恋愛を得て、主人公たちが成長していく様は、やっぱり女性の方が強いのだなぁ、と実感させられる。
読んでいて、緩やかで、優しい気持ちになれた作品。
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6編の恋愛短編集。
こりゃ読ませた。大人の心の内、機微をよく描いたな。満たされない心とか。許せないとかわからないと思う人もいるかもしれないけれど、物語に共感する人もいるだろうし(いないかもしれない)、物語だったとしても実際でもそういう人はいるであろう、そういう人の心の内、それがうまく描けていたと思う。瞳さんが出てくるものは連作。物語は立体的になって面白く読めました。短編集なのでどうかと思ったけれど、読んでよかったです。
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いつも どこから見るかによって
その人がその人じゃなくなるぐらい
違うものに変わることは 知っているのに
自分の見ている その人は 何者なんだろう
月がきれいですね って言葉が印象的だった
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島本さんの作品でRedを先に読んでいたので、もっとドロドロというか、濃いものなのかと思っていたが、サラッとしてた。読みやすいが、少し物足りなさも感じる。
短編集だが、同じ登場人物が出てきたり、視点が変わったりと物語自体は続いていく。
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短編集。
だけど、全部ではないけど
登場人物がリンクしてて面白く読めた。
不倫も含む恋愛の話が主だけど
作風で嫌な感じが全然ない。
初夏の爽やかな風のような
少し緑の香りのするような恋愛。
不倫やセックスでさえも。
実際はもっとドロドロしてて
別れ際も愛憎入り乱れて疲れ果てて
ぐったりなわけだけど
こんな爽やかなら
美しい男との不倫をしてみたくなってしまうよ。
後半の真面目な料理人とお客さんの女性の
淡い恋愛が個人的には好きだったが
これは私がオバサンになり
こういう感情に懐かしさと憧れといっていいほどのときめきを感じるからだろうか。
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島本理生さんは初めて。
表現とか言葉とかすごい丁寧で綺麗で、人間の弱さとか醜さとか人間の汚い部分を題材にしているのにそれすらも綺麗に感じる。
この人の書く文章好きだなあと思った。
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今、この瞬間に深く、深く、理解されていればいい。
たとえ恋じゃなくても…。”私たちは恋人か”どうかを
めぐってすれ違う男女をそれぞれの視点から描いた
2篇など、全6篇を収録する。
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静寂の中で人の心の奥底を見ているような気分になった。恋愛短編集(「蛇猫奇譚」は恋愛なのだろうか?)だがどの登場人物も何か心の奥底に秘めているものがあって、その微妙で繊細な部分がとても丁寧に描かれていた。人間、正直に生きるって簡単そうで難しいんだなぁと思いながらも、じれったくなったり空しくなったり。ラストの方でようやく希望が見えた気がしたが、最初から最後まで色々な気持ちにさせられた短編集だった。
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島本理生さんの新刊。
やっと図書館の順番がきました。
『足跡』
すごく久しぶりに読んだ恋愛小説がいきなりこれで、なんだかSFを読んでいるかのような妙な気持ちになってしまいました。
『蛇猫奇譚』
ハルちゃんのことが大好きな、猫のチータが語り役のお話し。
『あなたは知らない』
は女性の側から、
『俺だけが知らない』
は男性の側からかかれた連作です。
男性と女性の気持ちの重さがこれほどまでに違うのは恋愛小説としては、みごとだと思いますが、現実だったらかなり怖いと思いました。でも、こういう話、現実にもなんかありそうな気がします。
『氷の夜に』
このお話が一番好きでした。
主人公が自分のことを「自分は」という一人称を使って語るのが朴訥な感じで、このお話しの雰囲気をかもしだしているように思えました。
『あなたの愛人の名前は』
これは『俺だけが知らない』の浅野の妹、藍のお話し。『氷の夜に』の登場人物も登場します。よいお話しだと思いますが、『あなたは知らない』の瞳さんがどうしているかと思うと、素直に喜べない気がしました。
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初出2017〜18年「小説すばる」の6短編。
この直木賞作家さんは初読みだったけど、面白かった。
「足跡」は、セックスレスの若妻が、抱いてくれるという隣町の治療院へ通う話で、罪悪感が欲しかったという動機には「?」だった。
「蛇猫奇譚」は異質な話で、猫の一人称。赤ちゃんが生まれて飼い主の愛情が移ってしまうことにたじろぐのだが、飼い主もそのことに動揺する。
後半は、堅実な婚約者がいながら好きな人ができてしまって別れる女性の一人称、その好きになった相手の男性の一人称、(あとからわかるのだが、男性の妹の友人で、幼い頃の性被害がトラウマになっている)女性客に惹かれるオーナーシェフの一人称、男性の妹で、引きこもり気味だがマカオへの旅行が転機になりそうな女性の一人称の4話が続く。
思っていることを相手に伝えられず、不安になり葛藤しつつ自分の道を選んでいく人々を、描いていて巧みだと思う。最後は希望が持ててほんわかするのだが、ずっと不安定な感情移入で読んでいた。
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稲田豊史氏の書評によって出会った本である。書評が素晴らしく、ここにその一部を引用する。
…
全編に共通して描かれるのは、呪縛から解放されようともがくじょせいのすがただ。
呪縛のかたちはさまざま。「足跡」「あなたは知らない」の主人公は、夫や既婚者が善人であるがゆえに、むしろ離別する理由を奪われている。「蛇猫奇譚」と表題作の底にあるのは母娘の血の縛り。「俺だけが知らない」「氷の夜に」では、呪縛から解放される可能性が鮮やかに示される。
…
夢と希望に満ちた結末を描くのが男性的なロマンチシズムだとすれば、女性はエンドロールの後も厳しい人生が続いていくことを知っている。手放しのハッピーエンドという概念が存在しない。それ自体が女性特有の呪縛ではないかと投げかける点に、本書の魅力がある。
(稲田豊史・ライター:琉球新報2月10日[読書])