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昭和から平成にかけて、教育行政と塾業界と社会の関わりを背景に大島吾郎とその家族が歩んだ道を登場人物の心情と共に見せてくれる。彼はのんびり、妻はシャカリキ、子供たちは様々に。
私が過ごした小中高時代の教育と自分の子供たちが受けた教育を深く考えた事は無かったと気付く。教育だけで人間が出来上がるわけではないけれど、人としての核をどう作るかは大事だと思う。
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新刊の広告を見て、早速とばかり本屋さんに行く。
昭和36年に千葉で学習塾を立ち上げた夫婦と家族の50年に亘るお話しが600余頁にずっしり。
細かな経緯の描写を排して昭和から平成の時代をダイナミックに切り取る章立て。
淡々とした筋の運びだが、私たちの世代が歩いてきた道と重なることもあるからか、何気に最初から惹き込まれる。
教育に対する思い、教える側と教わる側の呼吸、理念と経営の両立、夫婦の情愛の機微、子育ての苦労、血の繋がりの不思議…、色んなテーマが綯い交ぜになった連続テレビ小説の体。
夫々のテーマについて考えさせられるところがあったけど、仕事に悩む今の私の心には、登場人物の誰もが自分のやりたいことを探し出し人生をかけてしっかりとそれに取り組んでいる姿がしみじみ沁みた。
せちがらい競争で人生潰してきたかもしれないけどさぁ…、もう戻れないもんね。
『どんな子であれ、親がすべきは一つよ。人生は生きる価値があるってことを、自分の人生をもって教えるだけ』という言葉に、もう一度立ち上がる気持ちを貰ったと思おう。
人生まだまだ『満月たりえない途上の月』と。
最後の章だけ多少トーンが違ったが、かつて私たちが受けたに違いない“子どものための教育”が能力主義と国家主義に取って代わられてきている現状に対する失望と憤りが、小説として無理のない形で分かり易く語られていて、これには共感。
全編通じて、色々響くところがあったが、最後の終わり方も余韻あり、じんわりときた。
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三世代に渡る話で長かったけど、教育がテーマでとても興味深い話だった。そしてとても大切な話をだとも思った。でも一度に読むには長すぎたような気がする。
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これは見事という他ない。教育業界のダイナミックな変化、そして大島家の奮闘に、ワクワクしっぱなし。大島家の人たち一人ひとりみんな個性が強く魅力的。吾郎さんが女性に弱かったり、千明が猛女だったり、次女が危なっかしい性格だったりと、実在の人にしか思えない。
仕事も家庭も山あり谷ありの、長い長いものがたり。塾と文部省の対立や、塾どうしの抗争など興味深い問題も多く盛りこまれ、読みごたえずっしり。
とくに最後の1章、孫の一郎くんの活動には胸をうたれて涙がとまらなくなってしまった。家業がイヤでたまらなかったのに、勉強できない子どもたちのことが心配でたまらなくなるとは。血がつながっていようがいまいが、人は人から影響を受けて成長するのだ。
教育という険しく高い山に、あっちからこっちからいろんな方角から、それぞれのルートを模索して、どうにか登ろうとする大島ファミリーの情熱がすごい。胸を打たれずにいられない。教育って、それだけ奥行きと魅力のある底なし沼なんだなあ。
八千代台に津田沼に船橋に勝田台……千葉県育ちにとっては身近すぎる場所がたくさんでてきて、それも嬉しかった。
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森 絵都さんは「カラフル」以来です。
「カラフル」は傑作でした。
当時中学生の娘にすすめて、好評でした。
今回はテーマとして「塾」を取り上げ、一家三代に渡る大河小説になります。昔読んだ北杜夫の「楡家の人びと」を思い出しました。
内容は、個性豊かな、特に性格なキョーレツな女性に、人に教える才能を持った男性が振り回される、ものがたりですね。
1970年小学校4年生の時から、塾に行っていた自分と重なると言えば重なりますが、小学校の反動で、中学、高校とは塾的なものは敬遠していました。おかけで、浪人して駿台予備校のお世話になりましたが。
5年ほど年下のいとこは、日能研というチェーン塾に行ってました。
息子がその後中学受験で日能研にお世話になった。
娘は小学生2年からサピックスに通った。
子どもたちも考えてみると、基本中学、高校と塾などへ入っていない。
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狂気と冷静の狭間。
長編は好きです。
テーマに関係なく、人間の機微が細かく描かれ、時に怏々しく、時に荒々しく、時にさめざめしく、一人の人物の起伏が心に沁みわたる事も感じれる。
3世代の長い小説になっているけど、時代でも年齢でも性別でも立場やお金すらも関連なく。
そんなどれも当てはまらず、また、どんな関係性の中でも、人が人や組織や何かを動かす時というのは、ある程度の瞬発的な狂気であり、その後に訪れる自分自身に対しての冷静さの繰り返しが、そうさせるのだろうと感じました。
「こんなふうに立ちどまり、のんびりと月を仰いだのはいつ以来だろう。全力で走ってきた~道なき道を、ただがむしゃらに、闇雲に。」-P163
私自身、今はその狭間にいるのかもしれないですね。
だからこそ、読んで心に刺さったんだと思う。
途中の何章かを、疑問に感じながら普通の物語かな?、と惰性で読んでいる時間に感じた。
最終章の新月、特に最後の数ページで心揺さぶられ、その全てを昇華させて幸せな気持ちにさせてもらいました!
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こんなに分厚い本なのに、どんどん読めた。
塾のない時代に塾を立ち上げたところから、家族の話、そして子ども、孫の歩む道へと話が流れていく。
間、時間が飛んでいるテンポのよさがまた読みやすさのポイントなのかもしれない。
子どもの貧困問題、教育格差。
メディアでは聞いている問題をフィクションの読み物で読んでここまで気持ちが震えることはなかなかないと感じた。
自信がなくてもやってみる。
その一歩が大事。
結果はついてくる。
一郎は頼れる身内が多すぎるな…とも思ったが、うじうじまずは考えてしまうというありがちな思考や、親、祖父祖母の偉大さに尻込みしてしまうところに共感。
そんな彼が一歩踏み出した行動には勇気と希望をもらった。
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本屋大賞2位受賞作ってことで、文庫化を待って早速入手。というか、2回目の恩田陸より、こっちが受賞すればよかったのに。『蜜蜂と~』をくさしている訳じゃなく(あれも素晴らしい)、公平性(?)という意味で。それはさておき、好物の”ある一家の物語”ということもあり、徹頭徹尾、ひたすら楽しませてもらいました。こんな家族の物語、としての見どころも満載な上、サブテーマたる塾のあり方の変遷も興味深く、600頁越えの長編ながら、飽きさせられることなく読み進められる内容。素敵。
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17
学校が太陽なら、塾は月。
こんなにも分厚い大長編を、夢中で読ませる森絵都の筆力!とにかく読みやすいし当たり前に面白い。
教育に真っ向から立ち向かい、激動の人生を送る大島家の話。赤坂の三姉妹がみんなユニークで面白いんだな~最も、一番は千明だけどね。夢に向かって猪突猛進なところが無謀でもありかっこいい。あと神楽坂がとてもすきです!補修を開くと決めた時、わたしも心が震えた。
吾郎さんはさ~経営とか難しいことを全部放り投げて理想論だけで生きてる気がしてあんましすきじゃなかった。女の人に弱いし!でも美味しいところは持っていくし、人生すきなことだけで生きてるし。
正直に言う、羨ましい!
最後の一郎のシーンがほっこりしたな~。
笑いもあり、涙もあり、夢中にさせる面白さだった。
要所要所に出てくる、みかづき、と言う言葉が毎回意味することが違ってそれもうまいなと思った。
最高でした。
2019.03.12
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(新春のドラマ化の報を聞いて夏休みに図書館の本にて読了済みだけれど、せっかく文庫になったので手元におくべく入手。ドラマを見るときにまた読み返したくなるだろうし)
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厚い本なのでなかなか手が出なかったけど読み始めたらスラスラいけた。
わからなかったものがわかるようになるってのはそれだけで感動するんだな。
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読み応えがあり、読後の余韻も素晴らしい1冊だった。
塾の経営をめぐる親子3世代の物語は、
教育について説いた小説としても、家族小説としても
考えさせられる部分が多かった。
学ぶとは何か、教えるとは何か、生きるとは何か。
強い想いが熱になり、紙面から伝わってくるようだった。
森絵都さんの本は昔からよく読んでいて
たいていが青春小説だったので、大人が主人公の小説は久しぶり。
『つきのふね』でも感じたが、森絵都さんが月に込めた
メッセージに心が揺れた。終わり方も好きだなぁ。
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戦前は軍国主義の教育を受け、敗戦により180度価値観を転換した戦後の民主主義教育により青春を過ごしたひとりの青年の半生を軸にした一族の物語。大島吾郎は昭和36年、小学校の用務員をしていたのですが、用務員室で勉強が出来ない子に自主的に勉強を教えていたのでした。そんなある日、蕗子という一人の利発な生徒との出逢いが、彼のその後の人生を大きく変えて行きます。学習塾の黎明期から現代に至るまでの塾の変遷が吾郎の生き方を中心として、4代に渡って描かれます。
かなりの長編の筈ですが、長いとは感じず一気に読み終えました。吾郎の妻の千明がもう一ひとりの主人公ですが、彼女独特の価値観を基準に塾経営に邁進する姿は、家庭との両立という一般に言う難しさに通じていて、それこそ波乱万丈、飽きない展開でした。彼らの子どもたちや孫の生き方も感動物でした。
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【冒頭文】
冴えた目をした子だ。最初のひと目から、吾郎は蕗子に引きつけられた。知の萌芽をほのめかす大人びた風情に、ほかの子どもとはちがう光の暈を見た思いがしたのだ。
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大河ドラマだった。
あらかじめ決めた本を買いに行く時以外、本屋さんで本を手にとって購入する時、ほぼ書店員さんの手書きポップと帯のみの情報で決める。
この作品は帯のみの情報(本屋大賞2位、ドラマ化)で購入した。
想像以上にドップリはまってしまった。
この本、子供を持つ前に読んでいたらどうだっただろう。
自分がまだ子供と呼ばれる時ならばどうであったろう。
今の私は我が子たちへの、お勉強教育に反省しつつひょっとしたら間に合うのではないか?なんて。
ちょっと試してみる?なんて。
読後すぐの今はスッカリ感化されとります。