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タイトルは私鉄の未来を示唆するようなものだが、
ほぼ東急の歴史を追った内容。
しかし、こと日本における東急の役割というのは大きなものなので非常に読み応えがある。
グランベリーモールのくだりなどは驚きが大きかった。
致し方ないが、いかんせん東急バイアスがかかっているなという点は否めない。
しかしいわゆるMaaSの文脈で考えたときに、実は東急という会社は、それこそ田園都市を構築したときからMaaS的ビジョンを持っていたのかもと思わされた。
武蔵小杉の現状に対する自省も感じられ、今後の東急に期待が持てる一冊だった。
なので、結局本のタイトルと内容はけっこう乖離。そこは残念。
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郊外に住宅地を造成して都心に職場や商業地を集積することで、安定的な鉄道利用と沿線経済循環を実現する―小林一三が考案し、五島慶太・昇親子が首都圏南西部で育てた東急のビジネスモデルを「私鉄1.0」とすると、人口減少時代に転じて沿線の高齢化やライフスタイルの変化に対応するために「私鉄2.0」「私鉄3.0」へとそのビジネスモデルを革新していく必要がある。
この本のタイトルにある「私鉄3.0」は、正直まだ朧げなコンセプトが独り歩きしている状態であり、東急を含む多くの鉄道会社は偉大なる先達たちの創り上げた「私鉄1.0」の事業から脱却できずにいる。光明があるとすれば、従来は社内論理や沿線開発といった閉じられた世界観のなかで語られていたような、ビジネスモデルの革新をオープンイノベーションの形で様々な異分野異業種と新結合し始めていることだろう。その中で中心的役割を果たす著者の考え方だからこそ、説得力がある。
荒れ地を宅地化し、ひたすら郊外に鉄道路線を伸ばしていけば経済成長できた正解のある時代は、とっくに終わっている。むしろ沿線において様々な課題が出てくる中で、東急と住み続けたいと考えてもらうにはどうしたら良いのか。お客様とディベロッパーという一方通行の関係性からさらに踏み込んで、地域住民や行政、関係機関と協働していきながら沿線地域の価値を高めていくプロセスにこそ、私鉄ビジネスモデルの未来があるのだろう。
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2019.01 東急電鉄の歴史と未来。私鉄3.0ということなら、もう少し他社線についても触れるとよかったと思うが、お立場上厳しかったのかなと思う。
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上京してから十余年、なぜか東急沿線に長らく住んでてその魅力のモトを知りたく読みました。残念ながら得心する理由はなかったのですが、大井町スポルも期間限定施設だとは知りませんでした。オフィスのサテライト化は益々はやるでしょうし、私鉄は楽しみな存在です。ソフトバンクあたりが買わないかな?
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東急電鉄の街づくりの歴史。これを現役役員の方が出せる事が素晴らしい。東急ファンとしては出会うべきして出会った作品。新規事業という考え方だけでなく、鉄道会社のあり方、オープンイノベーションの意義にも触れられている。そうそう、五反田バレーにも。
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私鉄のビジネスモデルと言えば、かつて阪急
の創始者である小林一三氏が真っ先に挙げら
れます。
小林氏は沿線の宅地開発と並行して、商業施設
や娯楽施設を開発し、全てを沿線で消費させる
サイクルを確立しました。
しかもこのスタイルは今でも継承されています。
しかし現代では住民の高齢化、都心回帰に
よってこのビジネスモデルは限界に近づき
つつあるとも考えられています。
東急はいち早くこの問題に対処し、地域住民
との連携を図り、どのような街づくりを目指す
べきか一緒に考える取り組みに着手しています。
この本ではそれはステージ2.0ととらえています。
では3.0とは何か。
IT技術の活用は欠かせず、ビッグデータを駆使
して鉄道、バス以外の移動手段の確立や、その
他生活の全てをサポートするパートナーとなる
こと、だそうです。
これは国が考えているスマートシティとも一致
する気がします。また昨今よく言われるMaaS
とも共通しています。
東急の今後の動きから目が離せなくなる一冊
です。
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池上エリアリノベーションで、東急の主催者として
登場していた。少し面白そうな発言をしていたので
本を取り寄せ、読んでみた。
東京に住み始めて、1年半。
蒲田に住んでいるので、京急とJRについては、
やっとわかったところで、時より迷子になる。
とにかく、私鉄がたくさんあって、どうなっているのか
よくわからなかった。東急の池上線も、最近乗ったばかりだ。
東急の始まりは、渋沢栄一が、目黒蒲田電鉄を1922年に創立したことから始まる。
渋沢栄一は、田園都市株式会社を作り、洗足田園調布などの開発に力を入れ
五島慶太、五島昇によって、発展した。
その時のモデルは、小林一三で、娯楽施設を作り、都市の結びつけ、
沿線を開発するという 私鉄1.0 のビジネスモデルで、
多くの私鉄は そのビジネスモデルに基づいて開発された。
沿線の価値を高める、ブランドイメージを向上させる方法だった。
私鉄1.0は、沿線密着ビジネスによって成り立つ。
五島は、広大な土地を確保して、開発して、田園調布のブランドを確立させた。
それは、線ではなく、面としての開発によって発展した。
東急は、ワンランク上、一歩先を目指して、西武の若者路線と対抗した。
五島昇が、死ぬことで、東急の求心力がなくなり、
バブル崩壊による負の資産を整理するのが精一杯であった。
そういう中で、私鉄2.0とは、どのようなモデルになるのか?
二子玉川の発展が、大きな変化を生み出し、
住む場所から、学び、集い、働くという逆輸送が始まる。
農耕型デベロッパーから、林業型デベロッパーへの発展。
1年から数年で収穫を得る農業ではなく、孫の代を見据えて収穫を得る
長い視点での開発が必要となる。
また、街自体が 老齢化していく。
横浜などは約370万人いるが、高齢者人口が114万人で、高齢化率も30%を超えている。
伸び盛りでない、新しい取り組みも必要となる。
私鉄2.0とは、郊外は再生ステージに入り、中間エリアを中心に、
職住近接のワーク&ライフを進めていく、「通勤鉄道から交流鉄道」へ
発展させていくことにある。
私鉄3.0は ICTプラットフォームによって、
Mobility as a Service(MaaS)
オンデマンドバス、パーソナルモビリティ、カーシェアなどの
Mobilityサービスを進めていく。
面白い概括的な私鉄のまちづくりデベロッパーのあり方の
説明は、今後のまちづくりに関して、大きなヒントとなった。
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目新しいことはあまりないが、現役執行役員が書くことに価値がある。
東急という会社自体には、
・鉄道は手段で、メインは都市開発であるという立場を明確にしていること
・人口減少と多様な働き方へのシフトという時代の要請をくみ取り、しっかりと自社の沿線に将来のビジョンとして落とし込めていること
・マンションデベロッパーとは違い、これまでもこれからも沿線にコミットしていく姿勢を示していること
から、ポジティブな印象を受けた。
私は生まれてから24歳で一人暮らしをするまで田園都市線沿線に暮らしていて、独特の閉鎖感、「すべてが東急ブランド」という環境に耐えられなかった。肌に合わなかったという、それだけのことかもしれないが、社会的なステータスを重んじる人にとってはそれが目指す先なんだろう。そういう地位を築き上げたということ自体はこの会社のアベレージであり、他社への優位性であるのは間違いない。
だが、本書の中では「沿線住民は社会的ステータスの高い人が多い」というような、沿線住民をヨイショする書きぶりが随所にあるのが鼻についた。だがこれも、東急沿線住民が読んだらくすぐられるのだろう。そして、東急の優位性を示すために他の私鉄をこき下ろしたりするのは止めたほうがいい。優位性はユーザーや世間が決めることだ。
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東急電鉄。
私鉄売上高全国2位。関東1位。
小田急箱根、東武日光、京王高尾山。
東急出口駅観光が無しです。
書籍でさ、五島親子経営から現在までを網羅しています。
五反田目黒大井町 未来投資にも触れています。
東急電鉄のポジショニングが明確に理解できる書籍です。
現役執行役員東浦氏書き下ろしであることも見どころです。
執筆に感謝です。
電鉄好きな方、東急電鉄近隣の方、是非ご覧ください。
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これまでまとめられていなかった日本の私鉄の歴史と、現在の東急の取り組みについて分かりやすくまとまっていた。
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開発直後は沿線に人の流れをつくるため学校を誘致したというのがおもしろい。しかも都心から郊外へとという逆方向利用の拡大を見越して1929年に慶應日吉キャンパスを誘致したと。
学校誘致のメリットとして、
1平日の通学利用増
2最高学府が沿線にあることで生まれる路線ステータス。
3東急沿線で学んだ人が社会に出て成功すると、何割かはその街に戻ってくること。特に地方から出てきた学生は、自分が下宿していた街に縁を感じて、第二のふるさとのように感じてくれる。
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東急の約100年の歴史を振り返りながら今後のビジネスプランまで記した書籍。他の鉄道会社と一線を画している東急の成り立ちがよくわかる一冊。東急線沿線に住んでいるとよりイメージが湧くかも。ただ東急の役員が発行してて「沿線人気No.1」とか出すのは、混雑率やら遅延の多さやら文句も多い中で反感を買うのでは…という印象もあり。
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東急の歴史と今後の戦略について。
オフィスを都心に立てて通勤客の需要で成り立つビジネスは終わりがある。
二子玉川のように働くところ、住むところ、遊ぶところが一体になった街が必要。
さらに高齢化が進むと、Maasが重要になってくる。
オフィスで稼げなくなることをすでに予想していたのが先見の明があると感じた。
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読書メモ
現役東急社員による私鉄の未来像
勝手なテーマはターミナルからハブへ
以下、読書メモ
1.0 阪急小林一三が紹介した後藤慶太による田園都市構想の貯蓄
都心↔通勤鉄道↔郊外住宅地
2.0 多摩川ライズに代表される中間地域の交流拠点
都心↔交流鉄道↔交流拠点↔交流鉄道↔郊外住宅地
3.0 MaaSによるパーソナルオンデマンド対応
都心↔MaaS↔交流拠点↔MaaS↔郊外住宅地
コミュニティリビングという概念とそれを補完するサービスの開発育成
不動産資本の開発、棚卸、再投資
賃貸住宅の流動性と高齢化の遅延策
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私鉄3.0 東浦亮典
・東急がまちづくりデベになったのは、田園都市線で極めて大規模で面的に開発したことと渋谷、横浜の2大都市を結ぶ東横線を持っていたから。特に田都は鉄道事業をやるために鉄道を通したのではなく、あくまでも利便性を上げるために鉄道を通したから元々開発志向の路線。だから、駅前広場をしっかりとって住宅地までの動線を描き、生活利便施設の配置も最初から立地をイメージして都市計画を考えることができた。
・自分がこの会社でやりたいことはなんだろう。線路跡地に町に足りないピースを埋める仕事、それにより住む人の利便性向上やくる人が増えるような施策(ハード)、民泊事業・アウトドアサービス事業・ヘルスケア事業などの新規事業立案。企画して、収支計画をして、様々なステークホルダーと良いものを作り上げる。エリマネ、PR活動などはすでに目的地があるときに真価を発揮する。二の次。誰向けに事業を行うのかも明確に。
・以前の鉄道会社は「マーケティング」という概念がなかった。マーケティングや経営戦略を学ぶために自らビジネススクールに通っていた。
・ポスト多摩田園都市の成長事業が育っていなかった頃は、長期視点で継続的に街に投資して、「街と東急の関連事業を成長させ」、「地域ブランドを確立し」、「継続的に資金回収する」というサイクルが作れていなかった。
・西武は流行に敏感な若者の心を掴むのが得意だった。東急は少し経済的に余裕のあるシニア層がターゲット。
・世田谷線と池上線は駅周辺に大規模な開発余地がほとんどない。今の景観を壊さずに、リノベーションで中身をアップデートしていくような事業が必要。良い街の条件の一つは、活気のある商店街や個性的な個人経営店がどれだけあるか。ショッピングセンターなどで均質化した街ではなく、創意工夫を凝らした個人経営店がどれだけ残っているか、車の往来を気にせず歩ける道があるかなどが街の価値向上にこれからの時代はつながっていく。
→街の個性を沿線の界隈ごとにまとめたい。
・場所を選ばない働き方が主流になってくるが、そこに対して良質な選択肢を提供することが鉄道会社の仕事。
・住む、遊ぶだけでなく、働く、集う、学ぶことができる場を提供する。
・エリアマネジメントは、行政の財政難や規制重視ではなく地域実情に合わせた公共空間の活用を促すために、民間セクターが中心となって「治安維持やイベントなどで地域価値を高めていく一連の活動」である。現在は、大手企業が集中した大丸有のようなエリアや札幌などサポート力の手厚い行政のもとでしか行われていない。郊外などの地域でどのように行うかが課題となっている。そのヒントの一つにBIDがある。これは、特定のエリアに不動産を持つオーナーがエリマネ組織に一定額を支払う仕組みのことである。地域再生エリアマネジメント負担金制度等を活用していく事例がいくつか見られる。
私鉄はどう稼ぐか
・スタンプラリーの目的は、小さい子供にファンになってもらうことや夏休みなど売上が下がる時期に需要喚起策の一つとして行う。しかし、販促費や人件費を考えると大きな収��を見込めるものではない。都市開発や観光地開発と合わせて行なっていくことで鉄道の価値を発揮できる。
・観光路線はシーズンごとにキャンペーンを打ち出すことで需要を生むことができる。
・デベには「狩猟型」と「農耕型」がある。鉄道会社は後者。長期間一定の場所に投資を繰り返し、地域価値を高めていく。また、数年で結果が出るような農耕型ではなく、数十年のスパンで市場をゆっくり育て収穫を得る「林業型」も今後は必要だと思われる。大切なのは、自分たちは狩猟型ではなく、農耕型や林業型である覚悟と自負の念。短期思考ではなく中期思考で物事考えていくこと。
私鉄3.0とは
・私鉄1.0は、郊外で宅地開発して、通勤に使ってもらい、都心に百貨店を構え買い物をしてもらうビジネス。小林一三が築いたモデル。
・私鉄2.0は、郊外は再生ステージに入り、中間エリアでは職住近接のワーク・ライフスタイルを確立し、鉄道は交流鉄道になる。
→地域再生のノウハウは武器になる。
・私鉄3.0は、一つのICTプラットフォームとして鉄道のサービスを使ってもらう。また、利用者各々の趣味嗜好、ライフスタイル、TPOに合わせてサービスをカスタマイズできる。痒いところに手が届き、過剰にならない程度にタイムリーに自分のニーズにあったサービスを受けられ、使えば使うほど自分を優遇してもらえるようなサービスを提供する。
→この一つのヒントにMaaSがある。TPOに合わせて好きなモビリティをストレスなく選択できるもの。