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『すべての、白いものたちの』読了。
雪が降り続く連休に読んだ。詩的な内面描写に引き込まれた。
生まれて2時間で死んだ姉と、戦争で廃墟となり再生した都市を重ねていく。
無かったことには出来ない記憶をいつの間にか継承し身体に魂が宿っていくのかもしれない。死んだ人を思う色の話でした。
「しなないで しなないでおねがい。」が何度もあった。母親が死んだ姉に発した言葉に魂が宿り、私へと受け継がれていった。
生と死の寂しさが白いものに宿る。そこで彼らは何をみてきたんだろうな…なんとなく、そっと、そばに寄り添ってくれているような気がする。どうか、生きてと。
2021.1.12(1回目)
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"寒さが兆しはじめたある朝、唇から漏れ出る息が初めて白く凝ったら、それは私たちが生きているという証。私たちの体が温かいという証。冷気が肺腑の闇の中に吸い込まれ、体温でぬくめられ、白い息となって吐き出される。私たちの生命が確かな形をとって、ほの白く虚空に広がっていくという奇跡。"(p.91)
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白い言葉と物語。空気と空気の間、という印象が強い。そして何故かじわじわとわたしの生にも浸透してきて、おくるみに包まれた赤ん坊のようになる。哀しみと祈り。装丁や、紙質にもこだわっていて、「本」自体の表現も素敵。
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やわらかで淑やかな言葉の羅列に、生きることと死ぬことの両端が行き来している。波の文章がよかった。章ごとに紙の色が違うのも素敵
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失念してたけど、『ギリシャ語の時間』の人だったか
あれはあれで独特な雰囲気あったけど、これはそれが全開
またさらに独特…掌編みたいな…??
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ss集がと思いきや、ひとつひとつが少しずつ繋がっていて、全体像が次第に見えてくる。文章を繋ぐのは“白いものたち”であり、“わたし”と今ここにはいない“わたしの姉”の母によって語られた記憶の3つ。波が寄せては引いていき、少しずつ渇いた砂浜を濡らしていくような、穏やかだけど近付いてみると荒々しい文章だった。
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産まれて数時間で死んでしまった姉。
こだまする母親の「しなないで、しなないでおねがい。」という声。
語り聞かされてきた「タルトックのように色白」だった姉の誕生と死の物語を通奏低音に、「私」と姉をめぐる「すべての、白いものたち」の記憶が断片的に映し出されてゆく。
「私」「彼女」「すべての、白いものたちの」の3章構成、さらに各章のなかに「おくるみ」「雪」「白く笑う」等の短い章が配されている。
各章の文章は短く、散文詩のようでもある。(ハン・ガンは詩人としてデビューしたと知り納得)
読み進むに従い徐々に物語の輪郭がみえてくるが、読み終え、読み返してなお発見がある。それゆえ何度も読みたくなる。
装丁も凝っており(様々な質感、色の紙。天アンカット)、本それ自体が「すべての、白いものたちの」様々な色合いや揺らぎといったものを表現しているよう。たいへん美しい。
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色や手触りの違う数種の白い紙が折り合わされて作られているこの小さな白い本は、様々な白にまつわる詩のような祈りのような小さな文章の連なりで構成されている。
わかりやすいストーリーはないが、「白いものについて書こうと決めた。」から書き始められる思索的な文章を読んでいるうちにはっきりと浮かび上がってくるものがある。
いつのことだったか、深夜の住宅街でしんしんと雪が降り続く中を道路脇に高く積まれた雪山に囲まれて歩いているうち、何か違う世界に来たような気がしたときのことをふと思い出したりもした。
静かなところでゆっくりと読みたい本でした。
#ハンガン #すべての白いものたちの #河出書房新社 #斎藤真理子
#読書 #読書記録2021 #読書記録 #本
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なにものだろう。
本来、日本語には「黒」「赤」「白」「青」の四色しか「色」を示す言葉はない。
当然、自然界にはそれですべてを表現できるものではない。
だから様々な物や現象、状態などでその違いを表す。
「黄」「緑」「紫」「灰」「紅」「橙」「藍」……。
「白」は難しい。
他の色と少しでも混ざると、少し薄まるが「そちらの色」になってしまう。
でも「白」に言わせれば、「彼らのとげとげしさを少し和らげてあげてる」っていうかも。
全ての絵の具を混ぜると暗い灰色になる。
それを救うのは白で、潰すのは黒。
文章と翻訳の妙もさることながら、
紙質の変化、挿入されたモノクロ写真、段落と余白
これら合わせて「すべての、白いものたちの」という作品ができている。
残念ながら、
読んですぐ感動できるほど、もう若くない。
読んですぐ理解できるほど、まだ人生を達観していない。
また雪の日にでも読むことにしよう。
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白いものをたくさん集めて、ひとつひとつ書いていく、数行の話もあり、体裁は詩集のよう。
テーマは重く、母親が自分の生まれる前に田舎の誰も居ない家で早産し、その赤ちゃんが2時間ほどで死んでしまう、という話。
ここから、自分のこと、娘のこと、呼ばれて行ったワルシャワの暮らし、そこでこのテーマを書かなければと思ったことなど。改訂版出版の時に付け加えられたあとがきも加えて、静かな、白いもの、命、風景…
しーんとした静かなところから伝わる感じが好きでした。
この白いもので気になったもの
"タルトック"
次のように丸い餅
これが何か分からずある時気づく。
"松餅 ゾンビヨン"
真っ白な米の生地をこね、一つ一つを半月形に形作りそれを蒸す。その蒸す前は、真っ白でこの世のものではないほど美しいと。
松葉を敷いた蒸し器で蒸すと熱と蒸気で色も質感も変わり、胡麻油も塗られる。美味しかったけど、変わり果てたもの。
真っ白なものは蒸す前の姿だった。
産着、霧、みぞれ、雪、塩…
あと、装丁が凝ってる。
見返しは私の好きな純白!晒しクラフトの真っ白な紙。表はツルツル裏はザラザラの質感も好き
その次に、半分だけの白いページ
この紙は和紙っぽい質感。
本文は5色の柔らかい紙が使われている。色ごとに少しずつ手触りが違う。
間に、白いものたちのモノクロ写真
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「生は誰に対しても好意的ではない。それを知りつつ歩むとき、私に降りかかってくるのはみぞれ。額を、眉を、頬をやさしく濡らすのはみぞれ。」
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韓国語を学んでいた頃、ああ韓国のひとはなんて詩や言葉や色への関心が高いのだろう!かつては日本人もそうだったのだろうか?と強く感じたことを思い出しながら読了しました。
まさにこの作品は詩と短いエッセイで構成されているような、しかも装丁まで徹底した作りになってて出版側の拘りが伝わってきます。
著者がワルシャワとソウルで育んだ想いを一冊にしたこの作品、韓国の風土や文化を齧ったことのある人にはより深く理解出来るように思います。
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「白いものについて書こうと決めた。春。そのとき私が最初にやったのは、目録を作ることだった。
おくるみ うぶぎ しお ゆき こおり」
本をひらいて飛び込んできたこの文字列を見ただけで、赤ん坊の儚さと愛しさ、運命的な予感に心がざわざわして、白いものたちの世界に一気に引き込まれてしまった。著者の本は『ギリシャ語の時間』に続き2冊目。改訂版を出すにあたり書き加えられた「作家の言葉」がまた素晴らしい。斎藤真理子さんの翻訳もうつくしくて好き。
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存在と不在と、それらに関わる祈りの白を紡いだ物語。
物語というより散文という印象。
白、と一言にいっても種類が豊富にある、というのは装丁にもあらわれている。
手元に置いておきたくなる本。
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1回では全てを把握できないかも。
決して明るい話でも読みやすい話でもないのに、読みやすいのは、散文的なリズムが文章全体にあるから。リズムがあることで必要以上に重苦しくもなく読めた。そして、言葉の美しさがすっと入ってきた。多分、訳が素晴らしいのだと思う。もし原文で読めたらきっともっと美しいハングルの響きを感じられるんじゃないかな。