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2019年2月読了。
何というか非常に「味のある」一冊。
交通事情やレジャー感の変化に伴う大きい国道のロードサイドにあるドライブインの栄枯盛衰を描いている。
知識をひけらかしたり、正邪で誰かを論難したり、何かと他者に対して攻撃的になりがちな日常を送っていると、こんな一冊にもの凄く清涼感を覚える。
チェーン系の、どこの地域でも同じ設えの店では味わえない雰囲気とその中の人の生活や、何故その場所でその業態の店を営むに至ったのかを、インタビューと資料を交えて描いている。
そういえば自分も小さい頃こんな雰囲気の店に連れて行ってもらったよな、とか、その時の微妙な心の動き(自販機のトーストを食べてみたいなと思っていたけど買ってくれなかったなあ)とか、本書が紹介する店に行ったわけでもないのに何故か懐かしい感覚を覚えた。
それにしてもこんなニッチな内容で300ページを超える内容、さらに全国各地のドライブインを紹介することから生まれるロードムービー感。スゴい本が出るものだなと感心してしまう。
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高度経済成長、観光ブーム、『アメリカン・グラフィティ』、オートレストラン、『トラック野郎』、かつてあったはずの絢爛なリゾートの面影、津波や豪雨、戦争嫌いの軍事酒場……。
「月刊ドライブイン」というリトルプレスをまとめたもので、登場するのはいずれもとっくにピークを過ぎたドライブイン。歴史と土地の要請を堅実にひも解きながら、何よりそこに携わる人々の語りに重きが置かれている。
かつては賑わったドライブインも斜陽産業となり、そうなった今歳をとっても生業として続けていることがどういうことなのか。語り手に女性が多いことや、彼らの子供たちが跡を継がないことも無視できない。
ここで紹介されるドライブインには著者は少なくとも三度訪れているそうで、その土地ごとの質感がリアリティを帯びている。交通の変化が残した光と陰。いま読んで良かったと心から思えた現代民俗学ルポ。
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ドライブイン1つを紐解いていくだけでこんなにも日本の文化の歴史が詰まっていたのかと内容の濃さに驚き。
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私の出身は札幌市だが、父親の実家が日本海沿いの田舎町であるということもあり、幼少の頃は自動車で3時間ほどかけて墓参りに行く習慣があった。当時、その道筋には何軒かのドライブインがあったと記憶している。その寂れた雰囲気とは裏腹に、日本海の新鮮な海産が食べれるドライブインは、一種の原体験として印象に残っている。
本書は平成も終わる現代に消えつつあるドライブインを静かに訪問し、その成り立ちなどを丁寧に聞いて回ったルポルタージュである。登場するドライブインの多くは1960-70年代に創業された店が大多数を占める。それは、高度経済成長により道路インフラが投資され、国民にレジャーという娯楽が浸透した時期である。客数の減少に苦しみながらも地道に経営を続ける全国のドライブインの姿を通じて、我々はかつての日本社会の成長を辿ることができる。過度な物語性や装飾を排除しながら、ストーリーを紡ぐ著者の語り口も好意が持てる。
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ファミレス世代のライターが絶滅ドライブインを旅して、戦後昭和のレガシーをオーラルヒストリーとして記録した本です。スナックとか町中華とかについては、この種のフィールドワーク的な書籍はありますが、ドライブインという着眼はモータリゼーションの発展という国の政策の映し鏡としてなるほど、と思いました。でもそんな大仰な話ではなく、あとがきにもある、そばとうどんの自動販売機のオートレストランの店主との会話で「これまで自動販売機のことを聞かれたことは何度もあるけど、俺自身の話を聞かれたのは初めてだよ」というような、著者の人に対する興味がこの本を温かいものにしています。もしかしたら取り上げられているお店の店主の温かさが、それを引き出しているのかも。つどつど挿入される現在のご主人(それは、年配の女性の方が多いのが特徴…)の写真が効いています。本書は戦後の昭和の家族の物語なのです。車で行って食事する、という意味では同じファミレスとドライブインの違いなにか、考えたのですが、それはチェーン店のような飲食産業と家族経営の個店としての飲食業の差異なのだろうと思っています。セントラルキッチンや冷凍食品のようなスケールを資源とする産業に追いやられた歴史です。しかし、道路で日本中が繋がっていく過程でどこでも安定した食事が出来る、という安心感を提供したのがオートレストランとコンビニエンスストアであるという指摘もなされていて、なるほどと思いました。そういう意味でオートレストランほどではありませんがドライブイン各店のメニューが似通っているのもそういうことかもしれません。
今や錆び付いたコカ・コーラ提供の看板に書かれるドライブインやロードパークやレストハウスの文字、ファミレス時代のプロトタイプだったのかもしれません。しかし、ファミレスもコンビ二や、あるいはUBEReatsなどの新サービスに押されています。鉄道からは駅弁が消え、道路からはドライブインが消え、移動と食事の関係はどうなっていくのでしょうか?
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人に歴史ありというか。どのドライブインも高度経済成長期の頃は儲かったんですねー。瀬戸大橋タワーの対岸にラレインボーというタワーがあった、というのにビックリ。冒頭の北海道のミッキーハウスドライブインは何回か通りかかりましたが、今はもうやっていないような。こういうお店は気になったら即行かないとダメですねー。
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コンビニなんかなかった時代の、車で移動するのが今よりずっと大変だった時代の、ドライブイン。知っている名前が出てきてびっくりしたり。
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ハイウェイ時代、観光ブーム・・・高度成長期の車社会の発展に
伴い、繁栄したドライブイン。その現在の姿は?
200軒近いドライブインを訪れ、取材したルポルタージュ。
この本に取り上げた店には三度ずつ訪れている。
参考文献有り。モノクロだが味のある写真有り。
プロローグ
I ハイウェイ時代
II アメリカの輝き
III 花盛りの思い出
IV 移りゆく時代に
V 店を続けること
エピローグ
道端に佇むドライブイン。
ひっそりと、或いは盛況に営業。しかし廃墟化した店もあります。
そのほとんどは個人経営で、現在はファミレスやチェーン店、
道の駅等に客を取られているのが実情です。
かつての繁栄・・・道路網が整備され、車社会の発展、
観光が身近になった高度成長期。そして、その後の時代の流れ。
これらを知る経営者たちの証言は、時代の一場面を物語っています。
その始まり、地域性、営む人たちの努力、そして時の流れ・・・。
更に、高齢化と後継者問題・・・順風満帆とはいかない、波乱万丈!
それでも写真には笑顔が・・・ドライブインにも人生あり。
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この手の本は、好きだな。著者は、姿を消しつつあるドライブインの話を書きたい。そんな思いから、自費出版で「月刊ドライブイン」を発行。それを単行本化したものが本書。
あとがきにもあるように、店を営んできた方の人生が書かれている。
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昭和的なノスタルジックな香りがする
ドライブイン。
そういえば、最近はコンビニや道の駅など
の陰に隠れて、あまり見かけることもなく
なりました。
やはり増え続ける道の駅とは対照的に潰れる店
が多く今や希少な車で行くスポットとなって
います。
単にそんな場所を訪れて「なつかしい」
「そういえばそんなのあったよね」とレポート
するだけではありません。
頑張って経営する店主をしっかりと取材して、
その人の人生そのものを描き出します。
「人の人生」とは、かくも多様であり、
皆頑張って生き抜いているのだなと、
勇気を与えてくれる一冊となっています。
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ドライブインは昔色々な所にありました。東京都民の上に自家用車が無い家に産まれたのでそんなに体験していませんが、バス観光旅行に行くと必ずご飯は大きなドライブインで摂って、なんならそのお店でお土産買っていました。
そんな大繁盛した高度経済成長の頃から比べて、今はひっそりとしているドライブイン。
まさに昭和という時代を象徴するものの一つだと思います。
てっきり懐かしのレトロな佇まいを鑑賞する本だと漠然と思って読みはじめましたが、とんでもないとんでもない。
そのお店を始めた人々や当時の社会状況や、地域ごとの成り立ち迄ぎっちり書かれており、まさに時代を丁寧に丁寧に切り取った、社会学の一つとしての「ドライブイン考証」と言える名作です。
儲かると思って始めたドライブインが、いつしか地域に欠かせない老舗飲食店として機能し、いつの間にやら店主の生き方を体現した店になっているのが何とも言えず素敵です。都市部に住んでいる人のノスタルジーと言われればそうなんですが、どこかでこの中にある店が今日も暖簾を出して人々を待っていると思うと、自分もそのお客の一人になりたいと強く思いました。
中には放漫経営で既に廃墟と化しているドライブインも有り、栄枯盛衰悲喜交々という言葉が思い浮かびますです。
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とても丁寧に、敬意をもってインタビューされているのが文章から感じられます。所々に入った写真からは歴史と人生というか、時の流れが感じられて、とても不思議な一冊でした。
誰かの人生を少し体験したような。一つ一つがそれほど長くない文章なのに。なんでだろう。凄く読んで良かった。
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橋本さんが「マツコの知らない世界」に登場して、俄然興味を持って本書を紐解いた。橋本さんがドライブインに興味を持ったのは、10年前と最近だ。この間に200軒のドライブインを訪問し、記事を書くためには、印象深かった店を再訪し 、一日ゆっくりと顔を覚えてもらって、そこで記事化の許可をもらい、やっと後日足を運んで取材する。典型的なノンフィクション作家なのである。
よって、昭和回顧的な軽い読み物ではない。「マツコ」で指摘している通り、「ドライブインには家族の歴史が詰まっている」それは即ち、昭和の側面史にもなる。当然、ドライブインが作られる地域独自の背景(ハイウェイ時代、米国統治、瀬戸大橋時代等々)も詳しく調べられ描写される。また、「明日からやるぞ」と言われて夫について行く妻や、強かに生きる女の一生も描かれる。
私は当初、「平田食事センター」が出てくるのではないか、と期待していた。岡山県からは二軒も扱われているのに、2つとも既に閉店しているのに、数年前に閉店したこの超有名トラックドライブインが扱われないのは、おそらく何かの事情があるのだろう。出来たら、次回本では、その事情含めて扱って欲しい。最後の一カ月前の写真ならば、私は持っている。
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高度経済成長期に進んだ自動車の普及と道路の整備。それに合わせて全国各地にできた家族経営のドライブイン22店を丹念に取材した一冊。
意外にも、割と安易な発想と言うか、思いつきで始めた店が今も固定客をつかんで離さず、繁盛している例が少なくない。飲食業未経験の夫が突然ドライブイン経営を言い出し、妻が慌てて料理を習いに行ったり…そんな顛末を経て開業した店が人気をつかむ。ファミレス・チェーンの拡大で味やサービスの均一化が進む中、こんな思いつきで始まった店が今も繁盛しているのはなんだか痛快。
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星5つじゃ足りない。。
写真集にしたらすばらしいだとろうと思ったけれども、次の瞬間に、作者の目的はそこではないと思いました。
写真は記録として都度撮っていらっしゃるようです。それで編めばかなりおもしろい写真集になるはず。
ですがこの作品は、かなり緻密なリサーチと事前の丁寧なコンタクトによって取材出来たものです。
ふれあいをつなぐ場所、道路と道路の隙間をつなぐ場所だったのだと感じました。それは、写真を見て想像してくださいとはまとめにくい。やはり、エッセイだからこその秀作なんだと思いました。
言葉による考証を見せることが命題なんだろうと思いました。
繁盛していた頃と今の時代の比較考察が素晴らしいです(自動車社会の変貌が如実です) 加えて、各エピソードの最期の1文も素晴らしいです(熱っぽくなく、穏やかな思慕の締めです)
今も営業を続ける人々の思いの中に、人と人とのふれあいに臆病ではなかった時代を残そうとする意志も感じました。
アートも本も、大事なのは、目の前に見えるものを飛び越えた、視覚化しない己の感受性の言語化、および認識だと気付かされました。
写真で作品をまとめるためには、何をおいても、言葉を使っての思案が必要だと思いますが、最終的には、言葉から離れることが必要だなあ。
ただ、この本と同じくらい、かなり緻密なリサーチと、事前の丁寧なコンタクトがあるのとないのとでは、何事も深みがかわる気がします。
感じたことだけでまとめるには、なんとなく~~な感じというふわふわした作品に終わってしまうような気がしました(自戒(´༎ຶོρ༎ຶོ`))
エッセイで写真作品のことを教えられたような気がしました。
思案は一方的ではなく、いろんなチャネルから押したり引いたりしてやったほうがよいのかもしれない。