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舞台観劇前なので「風の又三郎」は未読。「少女仮面」と「少女都市からの呼び声」の2作品だけ。
少女仮面
一見ちぐはぐに見える登場人物たちの会話だけど繰り返し語られているのは、観られるものとしての「肉体」、つまり他者から支配される「肉体」。自己が所有し、動かしているはずなのに自分のものではないというジレンマ。
MCCの教科書に載っててもいいような身体論の物語でビックリした。
もう一つのモチーフになっているのは「嵐が丘」。
ヒースクリフとキャサリンに自己と奪われた身体をなぞらえて引用されている。
少女都市からの呼び声
昏睡状態にある男(田口)の精神世界で繰り広げられる一種の冥界下り。満州での従軍経験からガラスの身体に妄執するマッドサイエンティストフランケから妹雪子を取り戻そうとする男の物語と、現実世界における田口と親友有本、有本の婚約者の三者の関係が描かれる。
少女仮面と同じように繰り返し身体論的なテーマが表れるが、ここで強調されているのは「性別」と「生殖」。
現実パートがあることで田口の精神世界での出来事と有本に寄せる田口の感情が連動して考えることができる。
田口の精神世界にガラスの子宮や雪子(女性)としての生というイメージを発現させたのは、やっぱり有本の存在が大きいのではないか。
まだ又三郎を読んでいないので詳細は分からないが、オルフェウスの冥界下りがモチーフになっていることは知っているため、この3作品は冥界(少女仮面の舞台は地下にある喫茶「肉体」)への生者(少女貝・織部・田口)の侵入と脱出というストーリーテリングが共通していると云えるのかなあと思った。(貝については微妙?)
人物の背景に第二次大戦の影がちらつくこと、焼け野原の東京への憧憬、そして身体論への言及は唐十郎の定番らしいので、今度は同著者の「特権的肉体論」を読んでみたい。