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離婚した北沢藍が実家に戻ると、母と祖母がうら寂しく暮らしていた。隣の馬場美代子は、今も祖父をひとりで介護し、孝行娘とあがめられている。実は、彼女の暮らす家には、おぞましい秘密が隠されていた。貧困、介護、年金。堕ちていく女の果ての果て。
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原田ひ香さん「DRY ドライ」、2019.1発行。「怖い」物語です。そして同時に、問題提議されてるような気もします。介護、年金、生活保護など厚生労働省所管の諸問題について。中ほどからぐいぐい引き付けられ一気に読み終えました。老後は健康とお金があっての物種だなと改めて感じました。
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北沢藍は職場の上司と不倫して、二人の子供を置いて家を出た。十年ぶりに実家に戻ると、男にだらしない母と、お金にがめつい祖母がうら寂しく暮らしていた。隣に住む幼馴染の馬場美代子は家族を見送り、今は祖父をひとりで看ている。介護に尽くす彼女は、孝行娘とあがめられているが、介護が終わったその先はどうやって生きていくのだろうか。実は、彼女の暮らす家には、世間を震撼させるおぞましい秘密が隠されていた。注目の作家初のクライムノベル。
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タイトルに込められたいろいろな意味を知るにつれ、やるせない思いがどんどん募る。負のスパイラルにはまり込むと、無意識のうちに思考回路の一部が切断されたようになり、これほどまでに選択肢が狭められるのだろうか、と気が重くなる。だが、読み進めていくうちに、だんだん藍や美代子の心の動きがわかってくると、その時選ぶ道はそれが最善のような気がしてきてしまうから恐ろしい。罪に手を染めるきっかけなんて、ほんの一回の歯車のずれだけなのかもしれないとさえ思えてくる。胸の中を冷たい風が吹き抜けるような一冊だった。
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実家の母が祖母を刺し留置所にいると連絡を受けた藍。
離婚していた藍は、そのまま実家に戻り、保釈金をなんとか捻出し母と祖母と3人での暮らしを始める。
実家の隣では、一人では母と祖母を看取り、今は祖父を介護している幼馴染の美代子が暮らしていた。
怖い…
テーマは貧困と介護。
美代子の選択のどうしようもなさにモヤモヤする。
藍の貧困が為すものではなく、藍自身の人としての姿に母親であろうとするものが見えないので、藍が子供を引き取れる日は、悲しいけれど来ないような気がする。
タイトルのDRYは、乾ききった藍の心と、例のアレ。
アレの制作の様子は、描写から想像するだけで気持ち悪かった。
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はずれくじに当たってしまった娘の親、祖父母介護の怒涛の展開。
東京近郊、農家の地主の貸家5件に住む、或いは住んでいた40歳と30代初頭の元?娘二人。離婚したばかりの主人公藍は母が祖母を包丁で刺した、という知らせで10年ぶり位に実家に戻る。一方隣家の美代子は40歳になるが父と祖母を看取り今は祖父を一人で介護していてずっと家にいて独身だ。
ここには父母と子供二人というモデルの型は登場しない。美代子の家も藍の家も父か母が途中で出てゆき、そして藍が作った家族も藍が離婚することでモデル型は崩れてしまっている。
「お互い親には苦労するね」と言葉を交わす二人だが、ずっと祖父を介護していると近所で評判の美代子には恐るべき秘密が・・
美代子は祖父の年金で暮らしているが、「万引き家族」が、砂上の楼閣の家族の幻影を美しいように見せていたのに対し、こちら、美代子のとっていた手段はあんな幻影は存在せず、実態は醜悪な事を描き出す。が、意表をつく美代子の生活や藍や自堕落な母や祖母との生活がどこかユーモラスな感じがするのは、歯に衣着せぬ3人の会話のせいか。桐野夏生や篠田節子が正攻法でこちらの深部にぐさぐさ迫ってくるのに対し、こちらはどこかマンガチック。
2019.1.30初版
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介護や貧困といった社会的テーマを小説に仕立てている。原田ひ香の作品にしては重い感じがするが、思えば、デビュー作の「東京ロンダリング」も社会派っぽい小説だった。
主人公を取り巻く登場人物たちが、どこかタガがはずれてしまっていて、その中では主人公の藍はかなりまともな感覚の持ち主に見えるが、周囲の影響もあって、ただならぬ境遇に堕ちていく。ラストの急展開で、藍は、女の生きる道は、誰かの後始末、誰かの介護しかないのかとつぶやくのがわびしい。
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そこはかとない不気味さを漂わせながら、どこかあっけらかんとした明るさもあり、グロさと女の嫌な部分、藍と美代子の歪んだ友情が奇妙に同居する物語。
共感できる人物は皆無だが、長年ずっと一人で家族の介護をしてきた美代子の「私の介護労働はどこにいっちゃうの?」という叫びは切実に重く響いた。「母親に大切にされなかったから、自分もできないんだ」と藍が気づくところもチクリと胸が痛む。
閉塞感たっぷりのドライな世界の小さな希望、女二人で思い描いた貧困ビジネスが実を結ぶ結末も見てみたかったな。
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最初はお気楽に読み始めたが
途中から思わぬ展開に!
何度か読むのやめようかと思ったけれど
読み続けられたのは
いつくもの心理をつく文章に出会えたから
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北沢藍は、弁護士から、母が留置所に入っていて面会してほしいと言っていると連絡をもらった。なんでも実家で祖母を刺して逮捕されたという。祖母の容体は軽傷だったようだ。しかし頭だから血が沢山出て、驚いて救急車を呼んだので、警察に連絡がいったという。面会した時に母は百万円で保釈できるから、なんとかお金の都合をつけてくれと頼んできた。藍は、元夫達からお金をかき集めて、母の保釈金にした。そして実家には、祖母と母がまた一緒になった。祖母が藍に、帰ってきてもいいんだよ、といった。離婚して生活に困っていた藍は、実家に戻った。そして隣には、幼馴染の馬場美代子がいた。彼女は近所でも評判の孝行娘。寝たきりの祖父を介護していた。貧困、介護、年金の問題。女は人を世話し続けないといけないのだろうか?藍もその渦に巻き込まれていく。
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DRY。。小説を見ながら、あぁっ!もしかしてそっちのDRY?と心で突っ込みながら読了。原田ひ香さんはたまにデトックスのようにこういう話を書くなぁと思いました。途中どうしても読めない箇所は飛ばしつつ読んだけどなんとも言えない気持ちになる小説。
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実家に戻ったら、男にだらしない母とお金にがめつい祖母がいるって……。何かあったとしても一度出た実家には戻るもんじゃないってことじゃないだろうか? もう、そこは自分の戻る場所じゃない、と思っておけばガックリくることも少ないのではないかと思う。
近所の幼なじみにも悩まされなくても済むしね〜。
とは言いつつ何か悩みがあるほうが他人の気持ちにも寄り添えるものかもしれない。
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途中の人体DRYの工程には
ショックをうけるくらいに グロい場面もあります
しかし 最後に藍と美代子がみせた
友情・・・のような絆
狂気とは ほんのすぐそばにあると思える作品
原田さんから こんな黒い話が書かれるなんて
とびっくりしましたが
大変面白かったです
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離婚して子供の親権も父親に渡り、職も失った主人公が戻ったのは母と祖母の暮らす乱れた実家。隣には昔馴染みの同世代の女性が祖父を一人で介護して暮らしている。未来の見えない人生に追い込まれた主人公が、隣の女性と仲良くしていくうちに知った事実が、さらに彼女を追い詰めていく。
まさかこの作者の本でああいう描写を見るとは…という驚きというか茫然とした感傷があった、墜ちていく女性のさまを描いたかなり重い話でした。
ただ主人公が、「乾いた性格」とされるくらいサバサバして…しすぎていて、感情移入しにくいくらいだったので、並び立てると悲惨の一言な有様なのに、読んでて気持ちを重くさせすぎないという妙な?効果はありました。
救いはロクに現れず、一度墜ちたらどこまでも、女は…人は結局繋がりに繋がれてあがくにあがけない落とし穴に落とされる、そういう人生も誰にでも訪れるかもしれない。私にも、貴方にも。
そういうどんよりとした気持ち悪さがぬぐえない小説なので、介護の問題や貧困などの社会問題が扱われるとしんどいな、という人には全力で避けた方がいい、とは思います。
だって、年金問題なんて今更報道されなくたって、だれだってもう気づいていると思う、この社会の歪みっぷりに。楽しく読みたい小説というフィクションで向き合わされるのは、メンタル強くないと、しんどいかもしれません。わたしはちょっと、しんどかったです。
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9月-5。3.0点。
離婚した出戻りの30代女性。母と祖母が仲悪い。
母が祖母を刺して、逮捕される。
隣人の親友は父親の介護を20代から。
堕ちていく女達の物語。描写が結構エグいが、サラッと読める。
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とても怖い本だった。主人公の女性の心のありようを「ドライ」と表現していて納得。
不倫して、子供を捨てて実家に帰って、その実家がロクでもなくて、また不倫相手と再会して。この人いったい・・と思わざるを得ない。それに加えて、隣人が知らない老人を連れてきて親に仕立てて介護してそして死んだらミイラにって、いったいどんな世界??!!と。それに静かに加わっていく主人公はもう、人として破綻している。でもこういう人っているのかしら・・と思うと恐ろしさがまた増した。救いのない本は嫌いではないけど、でもまさにドライで救いようがない内容だと、本当に殺伐とした気持ちにさせれらる、と実感。救いがなくてもいいから、もう少し潤いのある本を自分は好むんだな、再認識。