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『天使のにもつ』はいまいちだったが、これは良かった。
こういうテーマを描いた一般向け小説はあるけど、これはYA小説の枠の中で書かれたこのテーマのものとして、とても良かった。(中学生向けなら★5つとしてもいい)
同様のテーマでも、はっきり言って『赤の他人だったらどんなによかったか』は逃げ腰でつまんないなと思ったが、これは難しいテーマでも真正面から取り組み、思春期の子どもが読んでもつくりごとのうすっぺらさは感じず、作品の誠意を感じると思う。
こういう児童書としては難しいテーマによく挑戦したいとうみくは素晴らしいと思う。
刺激の強い一般向けの小説は子どもに読ませたくないし(もちろん勝手に読んでいいんだが、大人が薦めるのはどうかな、と思うし、ロウティーンがきちんと消化できているのかも疑問に思う。)、だからといって社会にある厳しい現実に気づき始めている思春期の子どもに、ごまかしたようなものも薦めたくない。
その点これは男女交際やSNSなどもできる限りリアルに描いていると思う。
まあ、大人目線で言えば、お父さんは本当はいい人なのについカッとなってという設定なんだから、そういう人は殴ったあと自分で救急車を呼んで自首するとは思ったけどな。
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羊の告解
いとうみくさん。
オレの父さんは人を殺した
ある日突然「加害者家族」となった少年の、
再生とゆるしの物語。
良かった。
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中学生用の選書。読み易く、でもいろんな仮定を想像させてくれる、気づかせてくれる一冊。
意識はしてなかったけど、テレビの中で人が死ぬことは自分にとって日常になってしまっていることに初めて気がつきました。
いついつ、どこどこで、何歳で何々をしている誰々さんが死亡しているのが見つかりました。そんなことを聞いても、自分にゆかりがなければ心は動かない。
殺人であれば当たり前に加害者がいて、被害者にも加害者にも大体家族がいる。そこは想像できていないだけで自分と同じ世界の出来事。事故ではなく、故意に人を殺してしまうような人は自分とは異質な生活を送る別の世界の生き物なのだと、なんとなく認識していたんじゃないかと思います。
序盤で不思議に思っていたのは、友達の家族、同僚の家族が殺人を犯したからといって見る目は変わるか?
そこは想像でしかないけど変わらないだろうと。みんなそうじゃないのかな?と。
報道だったり、関係の薄い野次馬だったり、そういうことを面白がるような程度の低い他人だったり、その辺からの攻撃があることは予想されるけど、自分にとってのその人は何も変わらないと思っていました。
でもやっぱり、「絶対的に変わらない」ということは不可能なんでしょうね。
不可逆性というか。知ってしまったことで何かしら変化は生まれてしまう。それが憐憫であれ、応援であれ、変化に変わりはない。完全なるフラットではいられないでしょう。
そしてそれが相手にどんな角度で、どんな深さで刺さるかはわからない。そのことでまた不安になる。
自分が加害者家族側だったら?それは前者の仮定よりさらに想像するのは難しい。多分想像し得ない葛藤が生まれるのでしょう。
でも、絶対的な味方でいてくれる人達の顔を具体的に複数思い浮かべられる私は、この本の234ページから242ページで涙腺が緩む。そうなる自分は幸せなんだなあ、とも思います。
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父親が殺人容疑で捕まる衝撃の出だし。加害者家族としての苦しみ。
極限の中での人との関わりが、心に深く残る。
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ある日突然加害者家族となる。
様々な感情が渦巻き周りからも様々な対応を受け、その中でも救われる想いに光を見出だす。
気持ちに余裕があるときはなんとも思わない言葉も、そうでない時は引っ掛かり裏を読み自己嫌悪に陥る。難しい題材。
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夏休み前のある日、いつものように朝食を食べていた涼平(中3)の家を警官が訪ねてくる。サラリーマンの父親を任意同行していった。動揺する母親と涼平。小2の周平は、よくわかっていないようだ。父親の容疑は「殺人」だった。父親は警察へ向かう車の中で容疑を認め、その場で逮捕されたという。学校で、近所で、加害者の(殺人犯の)家族と後ろ指を指されることを心配した母親は、3人で実家へ身を寄せ、夏休みを機に実家近くの学校へ転校し、名字も実家の名字に変え、ほどなく離婚する。
仲の良い友人もいる。彼女から告白され地元のお祭りでダブルデートをする約束もしていた。すべてを捨て、ケイタイの電源を切り母親の実家へ引っ越した涼平。残された中学生活を、静かに誰ともかかわりなく過ごそうとするが、新しい学校で起こった痴漢事件が涼平を父親と向き合わせる。
加害者家族の苦悩を描いた小説や映画・TVドラマはたくさんあるが、主人公が中学生、冤罪ではない殺人事件という事だけでもハードだが、これはYA小説として出版されていることに驚く。
弟が真実を知った時のショックや、母親・祖父母(母方・父方)・弁護士そして父親の対応、どれも無理なく書かれている。それだけに辛い。
涼平と周平の素直な成長を祈ってしまう。
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ある日突然、父親が殺人犯として捕まった。
父は何も語らず、会うことも拒んでいる。
加害者家族となった中三の長男涼平の目線で描かれた葛藤と許しの物語。
こんなことがあったら、残された家族はどんな気持ちになるのか。
ニュースで見ることがある事件の裏でも、同じようなことはあると思いますが、想像することはほとんどありませんでした。
子供を守らなければと真っ先に考えた母、事実を知った時に奇声を上げ、心を閉ざしてしまった次男、そして傷つけられることを恐れ、周りとの距離を取ることを選んだ涼平。
どれも辛く悲しいこと。
それでも、自分だったら、とは思えなかった。
面会に行った涼平を駅で迎えた母と涼平の会話に涙が出ました。
いつか父孝平と家族は、再会できるでしょうか。
孝平が心を開く日が来て欲しいと願います。
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ある日、父親が人殺しで逮捕された。
父は家族に合わせる顔がないと面会を拒んだ。
家には「人殺し」の貼り紙が貼られ、マスコミが押し寄せる。
母は子供を守るために離婚・引っ越しをした。
小学生の弟は真実を知り心を閉ざした。
主人公の涼平は、転校前に友達を傷つけてしまったことを引きずり、新しい学校では誰とも関わらずに生活する。
途中、転校先の学校で同じクラスの女子の兄が痴漢で捕まり、クラスメイトから誹謗中傷される事件が起きます。
それをきっかけに、涼平の抑えていた気持ちが爆発します。
重いテーマのYAだけど、加害者家族に起こるさまざまな問題が、誤魔化されずに描かれていたと思う。
悩みながらきちんと向き合った涼平が、6年後にしっかりと父親に会えればいいなぁ。
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自分の父が、誰か人を殺してしまい連行されていく。
そういう重い状況を描いた本ですが、作品としては重すぎず、ローティーンでも読みやすく、しかし真正面からこの問題に向かい合えるような良い塩梅に上手に書かれた作品です。親が離婚して名前を変え、新たな学校で生活をはじめるというところに、主な舞台を設定したことが良かったんだと思います。事件とある程度距離をおきながら、周りから無理やり現実を直視させられるのではなく、自分の中でゆっくりと問題に向かいあえるように時間と機会が与えられるようにしたのが、読者としてこの物語に向かい合う子どもたちと目線が近くなる大事な工夫なのでしょう。ラスト近く、転校する前の友達との交流には涙腺がゆるみました。大人が読んでも良い本だと思います。
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いとうみくさんの作品はいつも期待を裏切らない。『車夫』を読んで以来、常に気にしている。
『羊の告解』は中学生3年生の涼平の視点から書かれている。
他の人物の描写もすべて涼平の目を通して描かれる。
背景は深く描かれていない。
背景で起こっていることは詳しくはわからない。
ただただ、今の状況の中で涼平が何を思い、どう自分の気持ちと折り合いをつけようとしているのかが、涼平の視点で語られる。
涼平がクラスメイトを殴ってしまい、先生たちから事情を聞かれている場面でイヤホンから『ホープランド』が流れてきた。
涼平に聞かせてあげたい、君はひとりじゃない、皆の噂、悪意のある言動に惑わされるな、と。
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これも中学生向けくらいの感じで書かれている感じがした。父親が殺人犯になったら。そんな状況の中で、家族が巻き込まれて行くあれこれは、あくまでこの物語の中でこそ成立はしているけど、それは現実のものとは若干かけ離れていて、デフォルトされている気がした。まあ現実のものをそれほど詳しく知っているわけではないから、あくまで違和感としてしか語れないのですが。多分、それぞれが一貫し過ぎているんだな、すごく小説然としている印象。小説なんだけど、でも人間を描くなら、なんかこうもっともがくだろうし、足掻くだろうし、気持ちや考えの面で矛盾もすると思う。ちょっと美し過ぎたかな、テーマの割に。でも読みやすく、1時間程度で読めてしまいました。
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重いテーマだけど中学生の息子目線で分かりやすかった。
よい家族、よい友人に恵まれて、加害者家族の環境がこうだといいな、的に立ち直っていく。
弟を守りたい兄、子を守りたい母、娘を守りたい親、優しさにじんわりする。
でもYAの域で、大人目線だと小説としてはもの足りない。
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父親が殺人を犯した。その後の家族の話を中3の長男が語ります。罪は消えないけれど、赦されなければ人は救われない。苦しいテーマです。
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父が殺人を犯し、一夜にして加害者家族になってしまった一家の物語です。
毎日のようにどこかで殺人事件が起こっていますが、その倍する人数が加害者家族となっているのですね。自分は何も変わっていないのに、世間からの目が一気に変わってしまう。本当に悲しい事だし、どうしようも無い事でもあります。
特に親が犯した罪を子供が償う必要がどこに有るのやらと思いますが、世の中にはそう思わない人が沢山居るんですね。「犯罪者の子供」という冷静に考えれば異常なこの言葉が
、正義として扱われる頭の中というのは非常に恐ろしいものがありますが、そうでなくともはれ物に触るような態度になってしまう事は否めません。
本書は他のこの手の本としては青少年向けという事で柔らかくなっていますが、実際のドキュメンタリーを見てもこんなものではないと思います。
進学、就職、結婚に暗い影を落とすことになる事は明白です。個人ではなくチームで罪を被る辺りが本当に日本的だなあとしみじみ思います。生まれてしまえば違う人間なのに変な感じです。
とは言え、少年が殺人を犯せば、親としての責任を追及してしまうであろう自分もいるんだよなあ・・・。でも世の中から蛇蝎のごとく扱われる必要だけは絶対ないと断固として言えます。
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毎日報道されている事件、事故。どこかに、そしてどこにでも加害者がいて、被害者がいる。程度の差はあれ、いつ加害者家族となるかもしれない現実がそこにある。誰もその現実に気づいていない。その怖さとそうなった時の気持ちを考えさせられた作品だった。