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思ったほど、面白くはなかった。
人類進化に対する興味で読んでみた。『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)にあるように、言語による脳の進化、「認知革命」を経て、人類の歴史は、全て想像上のお約束に則って成り立っているという説に、本書の言う、人は自らを騙す、自己欺瞞を行っているという話が、さらにホモ・サピエンスの進化の謎を補完してくれると期待したのだが・・・。
本書の趣旨、検討課題は、
「わたしたち人類は、隠された動機に基づいて行動できるだけでなく、そうするべく設計されている種である。私たちの脳は私欲のために行動するよう作られている一方で、他者の前では利己的に見えないように努力するのである。そして、わたしたちの脳は他者を惑わせるために「自分自身」すなわち意識にさえ真実を明かさない。自分の醜い動機など知らなければ知らないほど、他者からそれを隠すことが容易になる。」
この自分の中にある醜い動機を、「脳の中のゾウ」と呼び、見て見ぬふりをしている、あるいはもっと意識の深層に埋没させて行動している様々な事例を列挙している。消費活動もしかり、芸術の存在意義もしかり、慈善活動もそう、医療や教育体制も偽善というか、本来の目的以外のことを求め、それで成り立っている現代社会を嘲笑う。
が、だから、どうした?というものが多い。
要は、目からウロコな事例が少なかった。本当に必要なものでなく、自己顕示のための消費などはほとんどの人が知っていることだろう。寄付やボランティアにしても、およそ利他が主眼ではないことはやってる本人も気づいているはず。少なくとも自分は自分の満足の為だと分かってやっている。
それらを多くの事例を挙げていかに論拠立てて説明できるか。その点だけが目新しい(のか?)という内容だった。
それらの自己欺瞞をあげつらったところで、人はそれを改めようとはしない、というのも本書の結論だ。
他人を欺くため、自らも騙す(無意識に)。ルールがあれば、バレないように不正を働く。それが人間だということらしい。 ルールで縛れば縛るほど、人は進化する。
「言うまでもなく、わたしたちの脳は縮まなかった。それどころか拡大した。そしてそれは規範があったにもかかわらず、ではなく規範があったからこそだった。 」
だよね。知ってたよ。 なんだかなあ。
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「しらずしらずあなたの9割を支配する無意識を科学する」
我々は奥深いところまで社会的生き物である。
だれでも一人の時は誠実だが、二人以上になると偽善が始まる。
無意識に自己欺瞞を行っている。
話す機能は基本的に見せびらかす行為。自分の持っているリュックサックとその中身を見せびらかして、気に入ってもらうために話す。
顕示的消費=みせびらかすための消費。ほとんどの消費はこれ。
エコ自動車を買うのも顕示的消費。プリウスが特徴のある形をしているのは、一目でプリウスとわかるため。
顕示的利他主義=自分は利他主義の人間であると見せびらかすため。
「消費資本主義 見せびらかしの進化心理学」
自分用に買うか見せびらかし用に買うか。
写真の出現で、絵画は印象派や抽象画ができた。
手作業でつくられたものは価値がある、という価値観は手作業が大変だと知っているから。
コンクリートの建築「ブルータリズム」は一般人には無機質であると人気がないが、建築を知っている人はそれを作ることが大変であるがゆえに好む人が多い。
寄付は気持ちよくさせる。人に見られているときのほうが寄付は多い。
シグナリングモデル=教育そのものより卒業証書、ダイヤモンドの鑑定書など。
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今まで行動経済学、心理学の本を読んできた人なら心当たりのあるような事例がばかり載っている。
そういう意味では目新しい事は無い。
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人は人どうしで競争している。規範をつくり、執行することで協力しあう体制を生み出し、規範を守ることで各々が少量の利益を得ることができるようになった。しかし、規範を破るという不正を働くことで、少量を超える利益を得られるので一部のひとは不正を働く。それを防ぐために懲罰の仕組みができ、懲罰を回避するために自己欺瞞が採用された
…だいたいこんな感じでしょうか。ミラー先生の本(『恋人選びの心』、「消費資本主義!」)でいいかな、という感じでした。
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自己欺瞞が機能するのは、他者が自分の心を読もうとしており、そこに見えるものを基に行動しようとしているため。だから、他者をだますために自分をだまそうとする。
基本的にはホンネとタテマエの話。他者へのタテマエと自分へのタテマエ、ホンネの3つがあって、ホンネは利己的だけどタテマエは利他的、自分へのタテマエも利他的だったりするよ、と。でもそれは行動としては利他的だったりする。その多層構造を生物として認めてしまう方がよいのか?という問い(最後に浮上にしてくる)は、日々直面する問題であり、なかなか面白い。
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巷の評価はさほど高くないようだが自分は好きな本。取り上げるデータもおもろいし。
生き抜くためには他人を欺く必要があんだからまず自分から。ね。
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非常に危険な書である。読むのをおすすめしない。
これを読むと,人間のあらゆる行動が「見せびらかし」だと思い冷めた目で見てしまう。
慈善行為も,芸術活動も,信仰も。
もちろん,わざわざ本のレビューを書き記すことも。
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読み終ってみると自己欺瞞というよりは利己的な動機の本(原題どおり)。仮面剥し。
前半の総説みたいなのはあんまりオリジナルじゃないので退屈なところがある。後半の具体的事例はおもしろい。まあ観察と書き方で勝負っていうタイプ。笑い、会話、消費、芸術、慈善、教育、医療、宗教、政治。
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脳は本質的に整合性を取るために嘘をつくものだという事であり、意識の上に浮かんでいる目的と、意識下にある本当の(?)目的とは違う事が多くあるということ。
効果の出ないが人気のある政策に金を注ぎ込んでいる余裕はない。エビデンスに基づいた政策を進めて欲しい。少子化は待ったなしだ。