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好きなセリフ「飢えは思考を研ぎ澄ます」
スパイの心意気がカッコいい。
心を隠し演じて騙し、相手の表情の揺らぎを読む。スリル感はスパイ小説ならでは醍醐味。
第一次世界大戦下フランスへ、ドイツ軍の情報を得るためにスパイとして派遣されたイヴ。イヴは、ドイツに協力する暴利商人ルネ・ボルデロンの元でウェイトレス兼愛人として振る舞い、最高級の情報を引き出す優秀なスパイだった。戦後のイヴと出会った現役大学生シャーリーのいとこ探しは、イヴの過去が明らかになるにつれ真実に近づいていく。
イヴに降りかかる危機は、身の毛もよだつほど凄まじい気迫がありハラハラドキドキする。
謎解きミステリーのようなすべての駒がつながっていく要素もあり、一気読みできるおもしろさ。
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主要登場人物の多くが実在していたと訳者あとがきで知った。第一次世界大戦中のアリス・ネットワークと第二次世界大戦直後の世界が描かれる。
シャーリー、イヴ、フィンの3人のキャラが堪らなくいい。安心して読めた。
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女同士の真の友情は無いとも言われるが、この小説の中では第一次世界大戦でフランス軍のスパイとして活躍したリリー、イブの真の友情と第一次世界大戦で全てを失ったイブと第二次世界大戦で大切な人二人を失ったシャーリーの間の真の友情、硬い絆が確かめられる。
リリーとイブは、女性に能力などないと信じられている社会という戦場の中で、そして本当の戦場の中で敵の目を何度もすり抜け味方のために命がけで情報を送っていた。失敗すれば射殺されるか牢獄で見殺しにされるか…戦後に勲章など送られても意味がない。
なぜ真の友情が芽生えたのか。それはリリーやイブが、味方のために命をかけて戦い、仕事をやり通し、それ以外の幸せは全て捨ててきたからだろう。
今は、女性が活躍出来るよう社会が協力してくれている。「まだまだだ」と言われるがそれでも仕事で活躍する幸せ、恋愛をする幸せ、家庭を持つ幸せといくつもの夢を追うことは可能だ。
しかし、リリーやイブは本当に全てを捨て、使命と仲間だけを守った。それなのに、終戦後、その親友までもイブは失ってしまった。
失意のまま30年のうちに、第二次世界大戦が起き、再び多くの悲劇が起きる。第二次世界大戦で大切な兄を失い、自暴自棄の中、「亡くなった」と言われている大切な従兄妹だけでも探そう立ち上がる19歳のシャーリーがイブの前に現れる。お金持ちのアメリカのお嬢さんだが、失意の中で誰の子か分からない子を妊娠し、こっそり始末させようとする親を欺いて逃げてきた子だ。
イブの目から見れば、青二才のお嬢ちゃんだったろうが、たった19歳の女の子が自分の将来もお腹の子の将来も見えないまま、異国でイブというガラの悪そうな過去のありそうな女性を頼りに従兄妹を探す旅を始めた。なんてたくましいのだろう。
シャーリーとイブと「イブの何でも屋兼運転手」のフィンの車での旅は戦争でそれぞれ別の場所でズタズタに傷つけられた3人の旅だが、明るく、お互いを思いやり、口は悪いがこれもまた真の友情が芽生える。それまでに三人が送ってきた悲劇は経験したくないが、この三人の旅は羨ましく、その中に入りたくなる。
救いのない展開ではなくて良かった。リリーも喜んでくれているだろう。
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第一次世界大戦1914〜1918、
死者1000万人以上
第二次世界大戦1939〜1945、
死者6000万人以上
この二つの戦争が二十世紀前半に、
嵐のように吹き荒れた。
自暴自棄となりながらも、戦時中に行方不明になった従姉妹のローズを探すシャーリー。
戦時中スパイだった、アル中の中年女性イヴ。
復員後犯罪者になり、その後定職につかずイヴの世話をするフィン。
三人は、ローズを探すと同時に、それぞれの心の底にある過去に向き合っていく。
ボソボソと車の後部座席から繰り出される、第一次大戦でのイヴのスパイ活動の様子は、息をするのも忘れるほどの緊迫感を持つ。
派手な戦闘シーンは無い。
アジトや検問所でのイヴとリリーのスリリングなやりとり
廃墟の村で生き残った中年女性の絞り出すように語るジェノサイド
収容所の開放直後に足元で力尽きたロマの少女の顔
そして最後に三人が行き着く場所は……。
エンディングが良い物語は、満足感いっぱいでした。
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こちら「おすすめ文庫王国2020」の第1位。
それを見た時からずっと読もうと思っていたのだけれど、650余頁の厚さに躊躇したまま1年以上経ってしまった。
買った後も暫く積読していたが、この前に読んだ「革命前夜」に触発されて、引続きヨーロッパの話にしてみる。
1915年に始まるイブの話と1947年のシャーリーにイブとフィンが絡む話が交互に語られるが、かつてのイブと現在のシャーリーに共通した意志の強い女性像を見る一方、かつてのイブと現在のイブの繋がりと落差が鮮やかで、過去と現在が絡まり合うように進む物語は分厚い頁を飽きさせない。
前半は、スパイになってドイツ占領下のフランスに入るイブと、いとこのローズを追ってこれまたフランスに渡るシャーリーの、それぞれの顛末を描くが、一難去ってまた一難が冒険譚が楽しめる。
中盤は、この筋を追いながら、2つの大戦における苦難の歴史がしっかりと描かれて、リリーの最後の場面には深い悲しみが湧き起る。
終盤は、イブとシャーリーによる因縁の男の追跡劇。男を探す過程、思いがけず男と遭遇する場面、遂に決着をつける場面、いずれの描写も息詰まる。
苦難の末のエピローグの、あるべき普通の生活に、しみじみと浸った。
それにしても、アメリカ映画で観たような2つの大戦でのヨーロッパ戦線における連合国軍の華々しい戦いのことは知ってはいても、そこで起こった悲惨な出来事については全くスルーだったな。
「オラドゥール=シュル=グラヌ」や「ベルゼン強制収容所」についても初めて知り、ヨーロッパの歴史の深さにはまだまだ知らないことばかりと思い知った。
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図書館の本 読了
内容(「BOOK」データベースより)
1947年、戦時中に行方不明になったいとこを探すシャーリーは、ロンドンの薄汚れた住宅を訪ねる。現れたのは酔いどれの中年女。潰れた指で拳銃を振り回すその女、イヴは元スパイだった―。第一次大戦中、若きイヴは無垢な容姿と度胸を買われ、ドイツ占領下のフランス北部へ潜入する。そこでは凄腕のスパイ“アリス”が無数の情報源を統括していた。語られる壮絶な真実とは?実話に基づく傑作歴史ミステリー。
第2次世界大戦後の1947年と第1次世界大戦中の1917年を行ったり来たりしながら進む物語。
1次大戦中に実在したアリス・ネットワークが1917年あたりの物語のベースになっているのだけれども、女性がスパイ活動を働くという初の試みだったのね。そんな時代だから男は女には気を許す。そこをついたのがアリス・ネットワークなんだわね。
シャーロットの思い込みの激しさに前半一抹の不安を感じるものの、物語が進むにつれ彼女がおちついていくように見える。
フィンもシャーロットのお兄さんも、戦争で傷を負わない人はいなかったのだと、生き延びた者の傷も深いのだと見せられる。
イブの狂気は2つの大戦を潜り抜けたせいなのか。
前半はあんまりページが進まなくて後半になると面白さが加速する。
イブがイブたるゆえん。イブが飲んだくれる理由。そんなものが見えてくると途端におもしろくなっていった。
それらを払しょくしたシャーロットはイブの娘になり、ローズバットは孫娘になるエンディングはせめてもの幸せが垣間見えてほっとして終われてよかった。
The Alice Network by KATE QUINN
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第二次世界大戦中に行方知れずになったいとこを探す、19歳のアメリカ人大学生、シャーリー。
彼女が情報を求めて出会ったのは、ロンドンに住む、第一次世界大戦中に活躍した女スパイのイヴだった。
ストーリーは1947年のシャーリーと、1915年のイヴの物語が交互に語られます。
本の帯に「実話に基づく傑作歴史ミステリー」とあります。
傑作かどうかは個人の判断によると思いますが、かなりの部分が実話に基づいているのは確かなようです。
著者あとがきを読むところによると、イヴのスパイの物語は、実話を使いすぎるくらい使っています。
でも、それと本のおもしろさは別物。
冒険譚であり、ラブストーリーであり、戦争でいろいろと壊れてしまった人たちの傷を癒す物語でもありますが、なぜか読後感はハリウッド映画でした。
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第一次世界大戦で女性をリーダーとしたスパイチームが実際にあったということに驚いた。戦場を含め、女性は看護婦など後方支援っぽい仕事しかしてないだろうとなんとなく思っていたから。
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熱く、強く、たくましく、ひたむきに生きた女性たち。平和な時代に生まれつき、自分のことさえ考えていれば生きていられることが、惨めにすら思える。生きる勇気が、強くなる勇気がわいてくる。素晴らしい作品。
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飛び出すのだ。周囲から、今の自分から。
1947年のシャーリーも、1915年のイヴも。
ローズはどこ。イヴには何があった。
大戦中に活躍したスパイたちの苛酷な生きざまを、エンターテイメント性をもった展開で、グイグイ引き込んでゆく。
楽しめた。
特にイヴ、魅力的が光る。
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史実から着想しているので内容がリアルに感じた。
死や拷問のリスクを抱えながら任務を遂行して行く末様は胸が熱くなります。
リリーがすてき。
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第一次大戦中のドイツ軍占領下のフランス北部。 連合軍の為に敵の念機密情報を探索し、統括したスパイ網(アリス・ネットワーク)で働いた女性たちを、史実に基づいて描かれた壮絶な長編小説の傑作。二つの世界大戦を挟んで、カイゼル皇帝の前線視察列車情報、ヴェルダン攻撃情報、ベルゼン強制収容所の解放、オラドゥ-ル=シュル=グラヌの虐殺など、1915年と1947年に交錯する登場人物の意表を突いた行動とスト-リ-展開に、650ページ大部の一気読みを厭ぬ、群を抜いた面白さに堪能の溜息があふれ出た!〝「・・・これは危険な仕事というだけではない。汚い仕事、嫌な仕事だ。盗み聞きしたり、人の手紙—敵の手紙をこっそり開封したり。いかに戦時であろうと、紳士がやるべきことだとは誰も思わない。淑女は言うに及ばず・・・」〟〝「頑固な女は始末に負えない」よく思ったものだ・・・彼女の魂にはロマンチシズムや高潔さのかけらもなかった・・・死ねなかったのは頑固さのせいでなく、運命だったのではないかと思えてきた・・・敵は今も生きていて、始末されるのを待っていると囁いていた。彼を始末しない限り、口に咥えた拳銃の引き金は引けない・・・〟
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大学生のシャーリーは母親に連れられて墮胎手術を受ける旅行を抜け出し、戦時中に行方不明となったいとこのローズを探すたびに出た。彼女の働き口の報告書にあったイヴリンという名前を手がかりに彼女の家へと訪ねる。彼女は最初はシャーリーを追い払おうとしたがローズの働き口のレストランの名前を聞くと一緒に旅に出ることにした。
終盤の抜粋を読むまで実際の人物をもとにしているとは知らずに読んでいた。物語はシャーリーと戦時中の若かりし頃のイヴリンを回顧を交互に進める。2時代をつなげるのがローズが働いていたレストランのオーナー、ルネだ。悪役だが魅力的な小物で最後のカタルシスをより強くしてくれる。そして何よりもアリスの存在だ。史実とは思えないほどフィクションじみている。タフでユーモラスだ。他の登場人物もみな魅力的で、彼らの旅の友情や恋愛も楽しめる読み応えのある一冊でした