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日本に住む外国人の方の急増や2018年のいわゆる「特定技能」という在留資格の創設などもあり、興味があったのでこの本を手に取りました。
在留資格のことなど、これまであまり理解できていなかったのですが、簡潔に整理されていてとても分かりやすかったです。とくにそれぞれの在留資格間の関係性や、そこに「特定技能」がどのように埋め込まれるものなのか、といった点です。
個人的には日本政府がいつまでも「外国の方を便利に使いたい、制度さえ作ればいくらでも来てくれる」というスタンスを今でも取り続けている(いろいろな方面へのポーズの部分があるにしても)のがちょっと信じられないです。いろいろな国で蓄積された取り組み(成功も失敗も含めて)も大いに参考にできるはずなので、今からでも遅くないですし、継続して考え続けてほしいです。
日本に住む誰しも関係があり、考えていかないといけないテーマであるので、新書という媒体にとても適した内容だったように感じました。
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移民国家としての日本を統計や制度面からしっかり理解できる本。
ナショナルとグローバルの間にあるレイヤーで使い捨てられる外国人労働者たち。彼らへの視点もこの本を読めばきっと変わってくるはず。
特に「特定技能」についての章は、ニュースに触れていてもわかりづらい点を丁寧に説明してくれているので役立つ。
終章はこれから何度でも読み直したいほど示唆に富む。
「大いなる撤退」の時代というバウマンの問題提起が、今の日本にはピッタリ当てはまる。
『今、目の前にふたつの道がある。ー撤退ではなく関与の方へ、周縁化ではなく包摂の方へ、そして排除ではなく連帯の方へ。これは「彼ら」の話ではない。これは「私たち」の問題である。』
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冒頭に引用された文章はちょうど平成になった頃に書かれたものだが、きのう発表された文章だと言われても違和感がない。それぐらい普通の日本人の意識は30年変わっていないのだけれど、それとは裏腹に、この30年間で外国人労働者に門戸を開き国内の労働力となってもらうための仕組みは次々と追加され、在留外国人は数倍にも増えている。日本は日本人だけの国とナイーブに信じ、外国人を敬遠する雰囲気の建て前のままで、日本で働き暮らす外国人は急増して、しかも適切な社会保障や支援を受けられずにいる現実。それは終身(正規)雇用の会社員(+専業主婦のいる核家庭)という「ふつう」をナイーブに信じたまま、身分的に極めて不安定で長期的展望を描きにくい非正規雇用者が急増して閉塞している日本社会の現実とも二重写しにみえる。
「移民(外国人労働者)」の問題は決して他人事ではなくそのままわがことであるのだという結びまで、ぜひ多くの人に読んで理解してもらいたい…移民には興味がない人のほうが多いかもしれないけれどせめて終章だけでも目を通すべきだと思える一冊だった。
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◆Buzz Feed News(2019.5.17):日本は「遅れてきた移民国家」だ 外国人労働者を巡る現実と建前 望月優大さんに聞く https://www.buzzfeed.com/jp/yoshihirokando/mochizuki-1
◆新書大賞2020 第12位。 https://www.chuko.co.jp/special/shinsho_award/
◆「月刊日本 ルポ 外国人労働者」取材班が選ぶ、外国人問題を理解するための3冊(HARBOR BUSINESS Online 2020.2.23)
・西日本新聞社(編)『新 移民時代』明石書店
・安田浩一『団地と移民』角川書店
・望月優大『ふたつの日本』講談社現代新書
https://hbol.jp/213558
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在留外国人が300万人を超える日はすぐそこまで迫っている(p178)
「移民」を否認する国は、「人間」を否認する国である。人間を否認する国とは、社会の中でしか生きられない私たちから社会的な支えを剥奪する国である(p216)
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国は移民という言葉が使いたがらないようだが、今日本に住む多くの外国人は移民と言っていいものだとわかった。
コンビニで見かける外国人、週28時間までのバイトでは生活できずに苦しんでる人がたくさんいるのを知っている。
技能実習でパスポートも奪われて最低賃金以下で働かされているベトナム人がいるとテレビで見た。見えなければなにをしてもいいと思っているのか?簡単に無法地帯を生み出す制度だとわかるのに、更に特定技能という都合の良い制度を推し進める。
国の建前は綺麗で、彼らが苦しむのは本人の見通しが甘かったからとでも言っているように感じる。馬鹿にしている。
どこの国でも外国人は苦労するだろうが、弱者と侮ってしっぺ返しを喰らうのも、今の日本ではそう遠くないように感じる。
自分が外国で働くかもなんて想像もしないんだろうなー
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日本はすでに世界第7位か8位の「移民国家」である。「移民」たちは東京圏の他、地域労働力の不足している場所に集まっているため、また行政のサーヴェイランス(義務教育など)の外に置かれている場合が多いため、不可視化されていることが多い。
「移民」の定義は非常に困難で、国によっても時代によっても統計の取り方は様々である。政府の言う「外国人材は移民ではない」論は、様々な政治的配慮によって選び取られたフレーズである。
少子高齢化、労働力不足、賃金格差、経済成長といった社会の動態と、国家による外国人の存在のコントロールが、現状の「不透明で不安定なレイヤー」をさらに積み重ねていく。
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日本で暮らす外国人の実情がきちんと整理されていた。
この3年で3倍というのはすごいスピード。
これだけ劣悪だと、日本で暮らす=ブラック企業に入るようなもので、優秀な人が来ない。優秀な人が日本で暮らしたいと思うような制度にすべき。
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前々から尊敬する望月さんの本をようやく一読。
多様性で溢れた世の中にしたい、とほざいてた自分を殴りたいほどに、自分自身の勉強不足さを目の当たりにし、我が国における外国人の方の現実を構造的に知ることが出来た。
特に第5章の強制送還者が収容される収容所の話などは、アウシュヴィッツの繰り返しではないかと疑うほどだった。
また国籍を持たない者に対する対応には政府や裁判所はあまり関与せず、法務省や入管という行政機関が大きな裁量を持ち意思決定を行っている所にも国家の役割や国民と市民の関係性などを考え直す必要があると感じた。
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移民・外国人労働者をめぐる問題について、最も最近書かれた入門書、とでも言ったらよいだろうか。在留資格「特定技能」の新設も含めて、これまでの政策の流れ・政府の意図がまとめられているので、問題の概要を把握するには悪くない。ただ、机上でデータをまとめ、わかりやすく分析しただけ、という感じもする。内容的に新しいものがあるわけでもない。最新の入門書としての意味はあるが、現場の様々な取り組みに軸足を置いたものではなく、討論会の論点整理には役立つが、この問題に苦闘している現場への共感を引き起こすものではない。もちろん一冊の新書に多くを求めるのは不適であるが。
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冒頭の文章から左派リベラルな匂いが漂っていて心配したが、本文ではイデオロギーは抑制されており、無難な良書だった。
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日本が「移民を受け入れない」という体裁を保ちながらも、外国人労働者をいかに受け入れてきたかが分かる。日本の移民政策の矛盾は、2019年4月の特定技能制度導入に伴い、解消の方向に向かっているといえる。しかし、「外国人の権利を見直そう」という人道的な見地から見直したというよりは、深刻な労働力人口の減少を背景に、単純労働を正面から受け入れざるをえなかくなったように感じる。ブローカーの監視体制など、課題も多い。また、制度導入後、外国人労働者に関する議論が非活発化したようにも感じる。この本が指摘する移民政策の問題・課題をより多くの人が認識し、建設的な議論がなされるべきだ。
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冒頭に引用されている文章は30年以上前に書かれたもの、しかし現代の日本でも違和感の無いような内容だ。その当時から確かに存在する「移民」を、いまだに日本政府は認めようとしない。その裏で労働力は受け入れようとする矛盾。日本の移民政策・取り巻く環境への理解が深まった。
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タイトルは分かりにくい(それが本書の唯一の欠点)。サブタイトルこそが本書の内容を的確に表している。『「移民国家」の建前と現実』。
日本は「移民国家ではない」と言いつつ(建前)、大量の移民を受け入れている(現実)。それを本書は「フロントドアを閉ざしつつ、サイドドアとバックドアから移民を入国させている」と表現する。上手い例えだと思う。
そして、いないことになっている外国人労働者がいることによって生じる問題やリスクは(いない人に対する支援はできないから)、すべて外国人労働者に押し付けられている、という。
知っているつもりになっていたけど全然知ってなどいなかった。望月さんの文章はニッポン複雑紀行などで読んでいるけれど、その聡明さは本書でも健在だった。政府の政策や送り出し側の国や日本そして世界の経済状況といったマクロと、AさんBさんという一人一人のマクロの両方。数字(統計情報)と文章(エピソード)の両方がしっかりと説得力と彩りを携えていて読みやすく心にしみる。
以下、いくつか印象的な箇所の引用。
トルコ出身の政治学者であるセイラ・ベンハビブは外国人への政治的な成員資格の付与について「永遠によそ者であることは、自由民主主義的な人間共同体の理解と両立しない」と書いた。この言葉は、成員資格の付与だけでなく、むしろそれ以上に社会統合のテーマにこそ関わる。(p.30)
人によって賛否はあるだろうが、外国人労働者を受け入れる業種やスキルの水準について何らかの形で限定するというスタンス自体は存在しうる(中略)しかし、ここに根本的な欺瞞が存在することは明らかだ。表向きは「いわゆる単純労働者」の受け入れに伴う様々な懸念を表明しておきながら、裏側では「いわゆる単純労働者」をサイドドアから積極的に受け入れてきたのだから。自分自身で並べ立てたもっともらしい懸念は一体どこに行ってしまったのだろうか。(p.92)
実習生や留学生が陥る構造的な問題は、これまで真正面から外国人労働者を受け入れてこなかった日本のサイドドア政策自体から帰結した矛盾の現れだと言える。忘れてならないのは、その矛盾から生じるリスクを一手に引き受けてきたのが、彼らを受け入れる日本社会の側ではなく、外国人労働者たちの側であるということだ。実習先から「失踪」した実習生や、上限を超えて働いてしまった留学生の報道に触れるとき、このことを覚えていてほしいと思う。(p.140)
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移民社会日本の現状がよく分かる。とくに技能実習から特定技能への制度の変遷は分かりやすかった。在留資格についても勉強になった。