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ほんのたまに「いい話を読みたいな」と思う時があったら、この作者の『ひと』とか、この作品などはうってつけなのでは。
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アパートの住人や旧友、バイト先の人など井川君を取り巻くさまざまな人との出会い、そして別れ、再会。ありふれた日常の生活を淡々と描いていて、大きな起伏はないし、スケールも小さいが、ほっこるするシーン、自分の経験と照らし合わせて共感してしまうシーンがたくさんあり、どんどんページをめくってしまう。
牛丼屋さんのシーンとか亡くなった中条さんの親と会話するシーンとか、井川君の人の良さ、気遣いができるところ、謙虚なところがにじみ出ていていいヤツやなーと思った。
製パン会社の採用に応募していたが、自分の好きなことをやればいいという父の言葉を素直に受け入れて行動に移した最後のシーンが印象的で、受かってほしいなぁと応援したくなった!
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アルバイトを掛け持ちしながら独り暮らしを続けてきた井川幹太27歳。気楽なアパート暮らしのはずが、引っ越してきた「戸田さん」と望まぬ付き合いがはじまる。夫婦喧嘩から育児まで、あけっぴろげな隣人から頼りにされていく幹太。やがて幹太は自分のなかで押し殺してきたひとつの「願い」に気づいていく――。誰にも頼らず、ひとりで生きられればいいと思っていた青年が、新たな一歩を踏み出すまでを描いた胸熱くなる青春小説
本作の前に読んだのが「トリニティ」だったからか、主人公の27歳井川幹太君の持つほのぼのさに最後まで温かく読み終えた。彼は大学卒業後に就いた仕事を2度辞め、コンビニなどのバイト生活をしながら、大学当時から住み続けているアパートで9年近く暮らしている。そこの住人たちとの触れ合いにドラマチックな展開はないが、隣人たちは幹太君の人柄に打解け彼を引き込む。取り立てて世話をやいたり意見する性格ではない柔らかい物腰しー、いつのまにか頼りにされ当てにされるのは当然の成り行きだろうか。最近では聞かれない「お人好し」を思わせる。
母親の再婚相手で町の工務店を経営している義父の言葉に「仕事をする上での大事なのは大きなものを見すぎないこと。いきなり地球を救えって言われても無理でしょ?何をすれば良いか分からない。だから自分に出来ることをするしかない。ウチの工務店でいえば、水が無駄にならないようなしっかりとした工事をするとかそういうことかな」があった。早い段階で自分にあった仕事を探すように仕向けられるが、額面通りに好きな仕事を探さなくても良いのではないかと思えてくる。そうそう誰もが見つけられるものではないだろう。私は早く決めすぎて思い込んでしまった節もある。
隣に住む劇団員の坪内さんからチケットを買って観たお芝居が、テレビドラマのように分かり易くて普通だったことに、肩透かしを食らったと感想を持つけれど、小難しい内容でなくても良いんじゃないかと納得する所など実に愉快だった。
そうだよねぇ~と相槌を打ちながら新たな気づきを発見できる。
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小野寺史宜さんの本初めて読みました。軽快なタッチで読みやすい。あっという間に読めます。読み終わった後が気持ちいい。
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やりたいことが見つからず、バイトで生計を立てる井川幹太、27歳。
大学時代から同じアパートに住む。
そこに暮らす住人たちとの出会いと別れ。
会話が頭の中でポンポンとリズミカルに弾み映像化しやすい。
ちょっと嫌だなと思う住人もなぜか憎めない。
井川幹太と住人たちの関わり方は、結構、面倒だなと思う。私はできない。
しかし、幹太がもがきながら生きる、少し頼りない感じの人だからいいのだ。
幹太となら、話してもいいかなと思わせる。
周りの人たちの日常も、派手さはないけれど魅力的。
読んでいて楽しかった。
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読みやすい文章と理知的で感情の安定した主人公に安心して読み進めることができる。
こんなふうにしっかり生きていければ。
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あっという間に読み終わった。
そよ風のような、そんな小説。
爽やかで、吹いていることにもあまり気づかない。
出て来る人たちがみんな良い人。主人公の性格がいいからか。変な人はあまり出てこない。ただ、心地いいけど、ドキドキハラハラ感もない。
就職がうまくいかず、学生の時から住んでいるアパートに住み続けながら、コンビニのバイトでさほど不満もなく生活する主人公。
一生ワンルームでもいいかな、くらいに不満も(野望も)ない主人公がどんな風に変わっていくのか、楽しみに読んだが…。
好きなものが食パンというフレーズが何度か出てきたので、この辺にヒントがあるのだろう、というのもわかった。パン職人にでもなって、近所の喫茶店をパン屋さんにでもするのかと(勝手に)想像しながら読んだが、スタートを切った(多分)辺りで終わってしまい、個人的にやや不完全燃焼。
アパートの住人、ご近所さんが複数出て来るけど、掘り下げ不足な面も。(出て来る人たちの名前がすごく凝っているのに?)
たまにはそよ風もいいかな。ただ、物足りなさも感じた作品。
あ、評価を下げてしまったかもしれないけど、良い作品だと思う。
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平井って確かに個性を感じさせないがない駅だな。コンビニの店員さんも、披露宴の相手方の出席者もそうだね
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「ひと」に続き二作目。淡々としたストーリー。大きな展開もない。なのに惹きつけられる。小野寺さん好きだ。
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自己完結するのは、もっと多くの価値観に触れてからで良い…
腐った者や物は本当に多くて、見限るのはすごく簡単なんだけど、そんな世界でも見やるものは決してゼロではない。
昔に聞いた佐野元春の歌の中にあった『瓦礫の中のゴールデンリング』はちゃんとある。
そういう本。
この作者は今後も応援させて貰いたい。
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大手パンメーカーをやめて、仕事を転々としたあとコンビニでバイトしている27歳の井川幹太。学生時代からずっと同じアパートに暮らしている。
淡々と日常が過ぎていくが、アパートの住人との触れ合いから、少しずつ幹太は変わっていく。
読後感よく、前向きになれる小説。
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井川幹太27歳。大学を出て就職したものの訳あって退職。次に入った会社も早々に辞め、今はコンビニでバイトする気楽な日々。
大学の頃から8年半、一人で暮らす安アパート「筧ハイツ」に一生いてもいいな~と思っていた矢先、2階に引っ越してきた男・戸田さんとその子供の騒音に悩まされることになる。
今日こそ苦情を言うぞ!と思いながら言えない日々を送るうち、ひょんなことから戸田さんとの望まぬ付き合いが始まり、同時に筧ハイツを中心とした近所の人々との関わりも生まれていく・・・
読み始めてすぐ幹太にはイライラ。
やりたいことが見つかったら就職活動するけど、今はないからバイトでいいや~的な無気力さと、幹太が高校生の頃に浮気した父親への反発心が、父が死亡して10年も経つというのに、今も拭いきれないこじらせ感に「しっかりせいや~」と言いたくなる。
そんな幹太があけっぴろげな戸田家族に否応なく巻き込まれ、いつの間にか家族のような付き合いになるなか、騒音問題も許せるようになっていく過程がなんだかいい。
ハイツを中心とした近隣の人々との関りも彼を少しずつ変えていく。高校生の郡君、バイト仲間の七子さん、フリーライターの中条さん、喫茶店のオーナー菊子さんなど幹太と親しく接してくれる人々も、それぞれに大なり小なり問題を抱えながら生きている。
一人で生きていければいいと思っていた幹太が、いつの間にか人に活かされ、人に影響を与えているということが何気ない日常の風景を通じて描かれるあたりが正に「ひと」を書いた小野寺さんらしい。
引っ越していく戸田さんに「今だから言うけど」と苦情としてではなく、次の引っ越し先で困ったことにならないようにと「足音がうるさいから気を付けて」と愛ある指摘をするラストがたまらなくいい。
幹太をとりまく人たちがみんないい人で、毒気がないところは「ひと」と似て非なるところですが、くすっと笑ってじんわりするこの作品、読後は爽やかです。
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どこか先日読んだ吉田修一の『続・横道世之介』を思い出させます。
どちらも大学を出てバイトで暮らす頼りないけれど善良な青年が主人公。彼を取り巻く人も大学時代の友人や、寿司職人(=横道、本作では役者)を目指す女性、そして主人公に懐く子供など似ている。特に大きな事件が起こる訳でもなく、いや、実際には起きるのだけど主人公が淡々と受け止めるので、大きく見えない。そんな主人公の日常が丁寧に綴られる。
善良の人・世之介を描き、受け止めは徹底して読者に預けたような『世之介』に対し、この作品では最後に主人公自身に決着をつけさせようとします。そこは吉田さんの方が一枚上手かな。とは言えこの小野寺さんの作品もなかなか良い。
歯切れの良い文体と優柔不断な主人公、その舌触りの差の様なものが面白い。良い作品でした
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大学時代から住む川の近くのワンルームアパートで一人暮らし中の27歳フリーターの幹太は、上の階に越してきた男の人の騒音に悩まされていた。…
毎度の事ながら、情緒の安定した、温度感の低い主人公。
家族や周囲の人とも距離を置くものの、積極的に一人でいる訳ではない。そんな幹太が、上階の戸田さんファミリーと関わっていくうちに、少しずつ変わっていく。
朱奈ちゃんと風斗くんが可愛い。
そして、戸田さんも人情味溢れるいい人でした。
足踏みしていた幹太も、最後は一歩踏み出すようになり良かった。
でも、結果的には、みんないなくなってしまったんですね。
新たな隣人を迎える続編に期待したいものです。
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二階の人の足音は気になる
気になるけど面と向かって言える人なんて少ない
自分が何に迷ってるか案外わかってない人は多い
劇的じゃなくてもいい ただ向かっていれば