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なかなか無い、こんな本。
幻島。それは本当に消滅した島、これから消滅するであろう島、無人島となった島、無人島になろうとしている島…
人は島に魅力を感じてしまう。
島国の人間ですら、小さな島に魅力を感じてしまうのだ。
島の何が人にそう感じさせてしまうのだろうか。
それはどの島もがもっている物語と、儚さなのだろうか。
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幻島・・・はかなげで、稀少性のある、小さな島。
日本の海に点在する島々の中から選んだ17の幻島の紹介と物語。
I部 ガイド編・・・17の幻島を各々4ページに、見開きで島の
カラー画像とデータ、島の歴史、自然、現状を掲載。
II部 紀行編・・・17の幻島を各々8~16ページに、成り立ちや歴史等、
深く取材した紀行文。画像はモノクロ。
参考文献有り。
幻島には様々な物語があります。
それは、ミステリー、ファンタジー、伝承、歴史等々。
波に、虫(!)に浸食されて消えつつある島。
存在したという伝承だけが残るまさしく幻の島。
存在を巡って国が腰を上げた島。
人工島、信仰の島、島民が離島、数人~一人が残る島。
残されたもの、離島しても心に残すもの・・・島への愛着や望郷。
たとえ小さな島であろうとも、実際に行き、または取材して
わかる・・・思わぬ歴史や事実があるという、驚きに魅了されました。
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なんとも魅力的な書名と思いませんか?
ここでいう幻島とは、実在はしますが住人
が少なく、いずれは無人島になってしまう
可能性がある島や、またはすでに人は住ん
でいませんが海水の侵食などにより、本当
に幻のように海の中に消えてしまう恐れの
ある島などを指しています。
ちなみに長い歴史の中で海水の侵食で消え
てしまった島はいくつかあるそうです。
限界集落を見るまでもなく、人口が減ると
いうことは僻地から人が消えていくという
ことです。
そして島こそが、最初に人が消えていく
僻地なのです。
著者は最後に我々の住む都会の生活であっ
ても、日々の移ろいの中では程度の差はあ
れど「幻」のように過ぎていくと言います。
ややもすると「幻」となりがちな日常を
大切なものとして愛しく感じ直すことが
できると、この幻島訪問記の別の力をアピ
ールしている部分には非常に共感させられ
ます。
離島へ行きたくなる一冊です。
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図書館で借りた本。17の島を写真付きで歴史や情景を紹介している。かつては有人だった島も今では無人になったり一桁の人口になってしまった現在。島旅が好きな私は、この本で紹介していた長崎県の五島列島や北松浦郡の島、佐賀県の太良町にある沖ノ島、福岡県の大牟田市にある初島・三池島を知っている。石川県にある見附島のフォルムはダイナミックで惹かれる。一度は見てみたい。幻島のネーミングはなかなか良い。
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幻島図鑑
不思議な島の物語
著者:清水浩史
発行:2019年7月30日
河出書房新社
「幻島」は著者の造語で、はかなげで(人口が少ない、or無人島、無人化島)、希少性のある小さな島、と定義している。
17の幻島を写真と簡単な文で紹介し、実際にそこに行った紀行も書いている。とはいっても、今は全く姿のない島も含まれていて、なにもない海へ行って現地で人に話を聞いたり、文献を調べたりしている島も。また、正確には島とはいえない人工構造物や単なる岩も。有人島は3島のみで、あとは無人島。
・鴨島(島根県)
消えている島。柿本人麻呂が没した地とも言われる地。梅原猛が流罪となってここで死んだという説を発表。それまで斎藤茂吉が主張していた島根県中央部の鴨山が人麻呂最期の地という説を覆した。
・羽島(山口県)
無人島になったいきさつが興味深い。1965年、萩市が島の子供たちにも平等に教育を受けさせるため、島の小中学校を廃止して市内に寄宿させて学校に行かせる制度を作った。羽島は貧しい家庭の子を里子として受け入れる風習があり、子供たちが大切にされてきた。そんな島から子供たちがいなくなったため、住民にさみしさをもたらして、1971年には大人たちも出ていってしまった。
・初島と三池島(福岡県)
どちらも三池炭鉱の換気に使われた人工島。海底に掘られた坑内の空気を入れ換えるため、人工島に穴を開けて海底までつなげていた。初島は排気用、三池島は吸気用だがその吸い込む力で鳥が吸い込まれることもあった。
・宇々島(長崎県)
1964年まで独特な制度により人が暮らしていた島、現在は無人島。600メートル離れた大島の住民のうち、生活困窮者から希望者を募り、2~3年間(5年が限界)ここに住んでもらい、土地を自由に使ってもらって生活を立て直してもらう。同時に住めるのは2世帯まで。江戸中期の「亨保の大飢饉」から始まった。「困窮島」とも言われた。制度は現在も残っているらしい。
・マルマボンサン(沖縄県)
西表島沖にある盆栽のように丸い島(木々の生えた岩)。その近くにある「内離島」に関する記述が興味深かった。そこは沖縄県にあった唯一の炭坑「西表炭坑」の島。1886年から事業スタート。労働環境の劣悪さが全国屈指だった。過酷な環境から労働者を逃がさないようにする監視や搾取のシステムが島内に張り巡らされていた。炭坑組織内だけでしか通用しない貨幣で賃金が支払われ、暴力で強制労働が課された。逃亡を試みて捉えられると厳しい拷問が待っていた。マラリアで命を落とした人たちも。
日本全国の海水浴人口は、2007年が2040万人、2015年は760万人。日本人の海離れが止まらないらしい。
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幻島とは…
はかなげで
希少性のある
小さな島
日本には数多くの島が存在している
無人島の島、今は友人だけどいずれ無人島になるであろう島
そんな島を筆者の清水浩史さんが自ら巡っている図鑑
地図にあるけど消えた島
東北唯一の楽園島
世界遺産じゃない軍艦島
やがて海に消える島
人工的に作った島
そして誰もいなくなった島
鑑賞したくなる島
困った人を助ける島
などなど…
この本のすごいところは、著者・清水さんの島愛。
その写真や文章から島に対する敬意さえ感じます。
そして、出会った島の人々に対する敬意。
島には人々の歴史があり、大切にしてきた生活がある
そして培われた文化がある。
黒島の章を読んだ時にふと住民の山中さんの優しさにぐっときて涙ぐんでしまった。
そしてマルマボンサンの西表炭鉱の話
漫画のカイジを思わせるようなシステムと逃げられない労働者の話
おわりに…で書かれていた
「よくよく考えてみると。本当は小さな島でなくても、どこを旅しようが、どこで暮らそうが、周りのすべてのものは移ろいゆく。…そして私も含め誰もが気づけば泡のように、その一生を終えてしまう…きっと幻島を旅すればするほど日常の移ろいゆくものに気づきやすくなる…」
なんでもない日々
でもその日々が愛おしく感じることが大切…
そんなことを読み終わって感じた。
そして、コロナ禍が収まったら…
いつか世界遺産じゃないほうの軍艦島に行こう…
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しょっぱなの「エサンベ鼻北小島」から地図にない、そもそも地図に登録されたときには既になくなっていたらしい島の紹介でグッとひきこまれます。
その後もイントロや写真だけでとっても気になる島の紹介が続きます。
とりわけ、かつて有人だった島(または今も数世帯だけ住んでいる島)はどこも興味深く、文献にもその歴史がほぼ残っていない鵜渡根島(東京都新島)、Uターンして故郷を無人島にしないために奮闘されている方がいらっしゃる六島(長崎県小値賀島)、島民一人となった黒島(長崎県五島市)は強く印象に残りました。
ずっと有人島であっても、離島の歴史は興味深いことが多い印象ですが、有人から無人になった(もしくはなりかけている)ところはその理由が様々で気になってしまいます。
後半、沖縄県伊是名島・具志川島がでてきて、その昔に伊是名から船に乗って「こんがりここなつ島キャンプ」に参加したことをふと思い出して検索してみたら屋那覇島という島だったと知りました。
今さらになって島の本名(?)を知り、写真検索したりして懐かしさに胸いっぱいになりました。
思いがけずこんな形で昔の想い出にひたれるきっかけを得て、(超個人的だけど)読んで良かったと思いました。