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悪くない一冊。昔に比べて出来不出来が出てきた伊坂作品ですが、本作は良作かも。挿絵と連動するとの企画も、挿絵の魅力(へたうま?)もありうまく決まっているし、内容も、それほどスーパーナチュラル走らず、最後はさわやかに着地する。キャラクターも味があって、面白いです。おすすめ。
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「クジラアタマの王様」
優等生の政治家ほど、何も出来ません。賛否両論あるくらいのほうが。
最近「シーソーモンスター」が刊行されたと思ったらまた新刊である。刊行ペースがちょっと早まっている気がして有難い。誘い文句的にも、個人的には好きな「モダンタイムス」ぽくて、誘われてしまう。
本作は伊坂幸太郎の長年の夢が結実している。何が?とは、ネタバレになるので、読んでいただきたい。
大物感を漂わせるハシビロコウは、お菓子会社勤務でお客様対応の達人である岸と人気ダンスグループのメンバー・小沢ヒジリ、そして、新規気鋭な政治家・池野内議員を導く。現実では接点が無いはずの三人は、あるお菓子を通じて巡り会う。そこから15年に渡り、数奇なストーリーが始まる。
前作「シーソーモンスター」のような時代を跨いだ疾走感は無い。また「モダンタイムス」感もあまり無かった笑。
代わりに寓話的な世界になっている。人語を操る案山子は出てこないが、怪物との戦いを始め、猛獣との遭遇にパンデミック。そして、クレーマー。どれも関係性が見えない出来事が次々と起きる。岸は、池野内議員とヒジリとともにRPG的なノリで立ち向かうことになるが、勿論一筋縄でいかない。なぜならば、夢の世界の戦いが、関係しているから。
夢と現実での三者三様の見せ場もあり、ヒーロー要素も具備した寓話ストーリーである。どこか初期作品の薫りがある。個人的には嫌いでは無いが、そろそろスランバー的なものも読みたいかな。
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伊坂先生に子どもが生まれてからか、作品に、”大切な存在を守るため”という部分が協調されるようになってきている感じがする。
一方で、「シーソーモンスター」からの伏線、P236、P253!他にもあるのかもしれないけれど、古参を放置しない、過去作品とのリンクを取り入れてくださっているところは、なんとも言葉にしがたい喜びがあります。
漫画部分を物語の本筋部分に載せるのではなく、本筋とは少しずれた部分に載せることで、読者側にも「あー、そんな描写あったなー」と、ぼんやりとだけれど鮮明に思い出させるような、つまりは夢で見たような感覚を彷彿とさせる、そうした効果があったのか、どうか。
伊坂先生の、ラストへ向かっていくシーンは毎度のことながら苦しく、震えが止まらなくなったりする。それでもページをめくる手が止まらないんだ。
あとがきで、アクションシーンについてこう触れています。
「アクションをただ文章化するだけでなく、文章だからこそ楽しめる工夫を凝らすことを意識したくなります」
ここ何作品か、思い当たるところありまくりで。最近は本当に、躍動感・臨場感あるシーンをとても丁寧に、ページを割いている感があって、そうかそういうことか、と、妙に納得したり。アクションシーンだけでなく、アクションシーンへ盛り上げていくまでのパフォーマンスや、それに付随する細やかな心理描写も毎度のことながら秀逸です。これが、手を震えさせながらも、ページを次から次へと進ませる。
ずっと一人の作家さんの作品を読み続けていると、作家さんの変化に気付けたり、今大切にしていることが分かったり、それを体感できるのが、醍醐味。
次回作では、どんな世界へ連れて行ってくれるんだろうと、またそんな気持ちにしてくれる。
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伊坂さんって、パラレルワールドを好んで描いているように見える。
でも、私はどうしても、今まで読んだパラレルワールドは、あまりしっくりこなかった。
この「クジラアタマの王様」は手に取って、パラパラめくってみたら、前後編ではないのを確認し、パラレルワールドではなさそうと予想して読み始めた。
まさか。こんなパラレルワールドとは笑。
本の中で、挿絵のごとく漫画か少しあり、変わったパラレルワールドに主人公とともに、私もついていけそうになかったが、読んでいくうちに、少しずつ読み取り、こんなパラレルワールドも面白いもんだ、と思った。
しかも、本の中では、鳥インフルエンザが流行り、パニックになる。今、新型コロナウイルスで、世界中が危機を感じている状況でこの本を読むのは、不思議な気持ちになった。
途中、シーソーモンスターにでてきた絵本「無敵のカタツムリ アイムマイマイ」が登場したのは、ほんの一瞬とはいえ、心が躍った。
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つながるはずのない会社員と政治家とアイドルが夢の中で戦い、現実の世界にリンクする!?
最初はSNSでの炎上問題かと思ったら、なんとも不思議な世界が紡がれていく。
話の間に書かれているマンガがまた良い。
自然界では動かないことで有名なハシビロコウだけど、動物園だとエサを自分でと必要がないから、残念なくらい動くんだよね。
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SL 2019.9.22-2019.9.24
奇をてらうつもりはないとおっしゃっているけれど、やっぱりそういった印象が拭えない。
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ハシビロコウの出てくる夢に導かれる人々の話。
伊坂作品はぼんやりしていてマイペースであまり強いことは言えないけれどなぜか巻き込まれて不思議な力を発揮する主人公とその人を支えるしっかり者の奥さん。
と、いうのが多くて今回もそのパターン。
周りの人たちがすごければすごいほど困惑しつつおかしなことに巻き込まれていく主人公という奇妙なバランスが楽しい。
イラストとお話のバランスがとても良くて楽しく一度で二度おいしい。
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軽く小説を読みたい時には最適!
全部が伏線なんだなって思った。
前は、伏線にならないエピソードは小説に書くべきではないって勝手に思ってたけど、そんなことは無くて、伏線のエピソードではなくても、長ければ長いほどいいこともあるよなぁって思うようになった
でも、登場人物がみんな良い人でステキだった!栩木さんが好きだったなぁ〜
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久しぶりに爽やかな伊坂幸太郎だった。
風評被害、検閲(?)など…。今読んでおくといいのかなと思う。
あっちの世界とこっちの世界。すっきりするようなしないような…。でも、言いたいことはよく分かった。
ヒジリが好き。
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頭空っぽにして挑む伊坂パズル、やっぱ楽しいなあ。
突き詰めず追い詰めず慌てず騒がず、心では慌てふためいてるけど、究極の場面での会話も普通すぎて笑える。
「人間を動かすのは、理屈や理論よりも、感情だ」な。だからこそ、恐ろしい局面もある。
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クレイマーとか炎上とか自然災害とか政治家の裏の顔とかパンデミックとか現在を反映する問題を取り上げながらエンターテインメントとして仕上げていくのは相変わらず上手だし、面白いなと思う。
登場人物たちの独特のやりとりもおしゃれで好き。
ハシビロコウの事を学名ではラテン語で「クジラ頭の王様」というらしい。
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この物語の内容を全く知らずに読み始め、途中で恐ろしくなり「この本はいつ発売されたものなの!?」と確認してしまった…
伊坂氏は予言者なのですか!?
世界中がコロナに怯える今、読むべき本なのか、はたまたその逆なのか分からないけれど、この物語の結末には希望が見えた。現実にもそうであって欲しいと切に願う。
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製菓会社広報部に勤める僕こと岸は製品の異物混入のクレーム電話をかけてきた女性の夫で、都議会議員の池野内、ダンスグループの人気メンバーの小沢ヒジリと知り合います。
三人は八年前、金沢のホテルに偶然、一緒に宿泊した際火事に遭っています。
そして僕と僕の妻は、サファリランド「サンファンランド」で猛獣に襲われ、側にいたヒジリと池野内議員の機転により救われるという事件も起きます。
その後、池野内議員が、自分たち三人が「夢の中で、あの生き物に勝つと現実で直面している問題が解決するんですよ」と言い出します。
「異物混入も戦いに勝ったから大事にならずに済んだのだ」と言います。
「八年前の火事の時、助かったのも、オオトカゲに三人で、夢の中で勝ったからだ」と言います。
僕は半信半疑ですが、小沢ヒジリも同調するようになります。
そして、十五年後、僕の娘の佳凛が世界的に流行し始めた驚異的な新型インフルエンザに患り、強制的に隔離されます。そして、海外から帰ったヒジリもり患して重篤で、命が危険になります。
そして僕は、池野内厚生労働大臣の甚大なる助けにより、解決策を見出していきますが、そこにまた敵が現れて阻止しようとするのと、最大の戦いが始まります。
最後は、いつも通り伏線が鮮やかに回収されていくさまが見事です。
伊坂さんの作品は『フーガはユーガ』『スピンモンスター』と少々つらい話が続きましたが、今回はちょっと不思議な冒険活劇です。安心して読めました。
川口澄子さんのコミックパートがついていて、優しいタッチの線に癒されます。
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伊坂幸太郎の新作書き下ろし小説ということでたまたま読んでみたら、取り上げられているテーマが現実とシンクロしていて驚いた。つまり、新型インフルエンザ。あとがきによると、アクションシーンをコミック形式で挿入する作品をかなり前から実現したかったそうで、本作はその第一号らしい。その辺もそれなりに上手くできてる作品だとは思うけど、内容的には標準的、もしくは少し盛り上がりの欠ける典型的な伊坂幸太郎作品だと思う。それより何より、新型インフルの小説ということが興味深かった。予言?
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伊坂さんワールドだけど、かなりファンタジー寄り。伊坂さんの「現実にありそうでない」「ほんとにこういうこと起こりそう」的な際どいラインが好きなので、あまりファンタジーに寄ったものは好きではないけど、それでも十分面白い。
伊坂さんはかなり心配性だとエッセイか何かで見たけど、パンデミックについても、普段からほんとに恐れていたんだろうなとか考えちゃう。そしてそれが現実に起こっている今、伊坂さんは何を感じているのだろう。
ハシビロコウを見に行きたい。