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インパク知6・7
かかった時間 120分くらいか
存在論の専門家が、日常の現象を存在論的に説明しようとしている。おもしろい。素人にもギリギリついていける(ついていけるとは言っていない)ような、まさに筆者があとがきに書いているように、新書だからといって内容のうっすい本ではなく、ちゃんと読みごたえのある本で、おもしろかった。
もちろん全部理解できているわけはないのだが、よかったところは、筆者がある問題(例えば「時計」というカテゴリはいかにして成立しうるのか、とか、虚構のキャラクターにおける同一性ってなに?とか)に対して、専門家たちの間でルーツとされている考え方や、マジョリティの考え方をわかりやすく示した上で、筆者自身の考えがそれらと「なぜ」、「どのように」違うのかが明確に示されている点。それによって読者も筆者と同じところで立ち止まって「そういやパワハラやったらダメってみんな言うけど、パワハラって言ってくる部下をうっとおしがってる人っているよなあ。その人たちの意志の集合と、集団の意志はズレてるかもなあ」とか「空気ってまあたしかに、他の人がそうしているから自分もそうしておこう的なところあるよなあ」とか、考えられる。あと、筆者の考え方というのが明確なぶん、ちゃんと読めばツッコミも対話も成立すると思われる(そういや最近の新書では「大家の理論の紹介」みたいなのも多くて、そういう場合、その元ネタをちゃんと読もうとは思うけど、それを噛み砕いた筆者と対話してるなって感じはあまりないな)。
プロフィールによると、まだ40代のようで、この先も精力的に活動されるであろうことが楽しみ。前著も読んでみようかなと思った。
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序論 日常世界を哲学する
第1章 ハラスメントはいかに「ある」か?―「社会的事実」を考える
第2章 「空気」とは何か?―「社会規範」の分析
第3章 集団に「心」はあるのか?―全体論的アプローチ
第4章 時計は実在するのか?―「人工物」のリアリティーについて
第5章 サービスの存在論―私たちが売買する時空的対象
第6章 キャラクターの存在と同一性―「人工物説」の立場から
著者:倉田剛(1970-、哲学)
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「ハラスメント」や「空気(を読む)」、「キャラクター」の
存在など、身近で日常的なテーマをとっかかりにして、読者
を存在論、哲学、あるいは「哲学的考え方」に誘う本。
各テーマ短めで本格的な論に入る前に終わってしまう感じ
だが、初心者に考えさせる本としてはよくできていると
思う。著者が自分の哲学的立場をしっかりと書いている点も
好感が持てる。仕事柄か「キャラクターの同一性」について
は思うところが多かった。著者が考えるよりももっと曖昧で
読者や視聴者に委ねられている面が大きいように思う。
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【信州大学附属図書館の所蔵はこちらです】
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