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脳内変換と妄想への移行。
目の端に写っているまたは写っていないものを捉えている。
「クスクス」ではなく「ニヒっ」。
そして驚くばかりの共感。
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『ちくま』連載のエッセイが単行本に。
この連載が単行本化されるのは、『ねにもつタイプ』『なんらかの事情』に続き、3冊目となる。面白いのが、1冊目から、『ノリ』が全く変わっていないということ。これって意外に難しいことだと思うのだが(テンションを維持する、という意味で)。
ところで、本書は、外で読む本ではない。電車の中で吹き出したらおかしな人でしかない。そして、仕事の前にも読むべきではない。ふとした拍子に内容を思い出して、肩を奮わせる羽目になる……。
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岸本さんのエッセイが大好きなので新刊である本作の発売を本当に楽しみにしていた。そして読むとやっぱり期待を上回る面白さ。「カバディ感」の話は私も人から普通大人がされない質問をよくされるのでとても分かる。あれは自分からにじみ出る人としての圧倒的な信ぴょう性の無さだったんだ。次回も楽しみ。
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少し前にドキュメンタリー映画「ドリーミング村上春樹」を鑑賞し、翻訳家メッテホルムさんの作業風景などを観る機会がありました。
同じ翻訳家という肩書きでも、作業の様子などは人それぞれなんだろうとわかっていながらも、岸本さんが深夜に1人で机に向かい、キシモトワールドとしか形容できない一連のエッセイを黙々と執筆している姿を想像すると、なかなかぐっと来るものがあります。(完全に想像ですが)
岸本さんのエッセイは第1作から全て読んでいますが、内容の面白さの陰に隠れて表には出てこないそういった孤独さ、みたいなものを感じてそこに魅力を感じます。
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「足もろもろ」は、俺だけじゃなかったんだ!と嬉しくなる。単行本化に当たり収録しなかった作品も多数あるとか。文庫化で収録作が増えるらしい。早く文庫化して!
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なんらかの事情ってタイトルだったと思う。前に、読んだことがある、この人のエッセイ。これは三冊目らしい。分類すると爆笑系のエッセイなんだけど、妄想がさく裂するタイプで、筒井道隆先生とかと発想が似ている気もしないでもない。神経質なのに、いい加減なよくわからない投げやりな話しの展開が癖になる。ダークマターを羊羹だと言い出し、その羊羹の詰まった黒の世界を読者に提示していく場面は、思わず想像してしまい。やばかった。とにかく、おもしろいので、騙されたと思って読んでみてください。
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エッセイの顔をしているけど現実と空想の隔てが曖昧で、読んでいるうちに「あれ?どっちだろ?」てなる感覚が楽しい。
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奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールド、みたび開幕!ちくま好評連載エッセイ、いよいよ快調な第三弾!
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こんな視点で物事を見ていたら、日々飽きないだろうなぁ、と思う。うらやましいくらいである。そしてときどき、うんうん、と同意したくなる。ここに引っかかるか、という些細なところに立ち止まり、観察し、掘り下げてしまう著者の可笑しみがじわりじわりと伝わってきて、身体の外側からじわじわと内側へと浸透していくような気がする。少しずつ岸本化していきそうである。クラフト・エヴィング商會の装丁とイラストが、これまた絶妙で、つい見惚れてしまうのである。文句なく面白い一冊だった。
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岸本先生はわたしの中では翻訳家さんではなくて、エッセイストの極みです。
今回もまた楽しいひとときありがとうございます。
だけど、こんなわたしのような読者がいるってこと、刷り込み済みで、少々あざとい感じがしないこともなかったけれど~
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前作、前々作と比べると、爆発力は低いように感じたが、本作はエピソードそれぞれの粒が揃っている印象。
何ともない日常でこれだけ突拍子もないことをつらうら考えられるのは、やはり稀有な才能なんだろうな。子供時代の話もいい。そういえば自分も子供の頃は、こんなヘンな感覚を持ったことがあったような…と思わせてくれる。
著者が年を経た分、世界はさらにさらに濃く、混沌としてきているようだ。次回作も楽しみに待ちたい。
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まあ全然関係ないんですけれどね、わたくしこの本を、アンナ・カヴァン『アサイラム・ピース』の直後に読み始めたのですが、岸本さんもなんだか正体のわからない敵とたびたび戦っていて、やっぱり生きていくというのはなんらかの敵とたたかうということなのだなと、おもったりおもわなかったりしました。不穏に愉快。
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翻訳家による、不思議+爆笑エッセイ。
運動不足の話、脳内の旅など、相変わらずの切れ味。ニヤリとしたり、呆れたり。
「分岐点」「カバディ性」「裏」「河童」が特に面白かった。
ソムリエが語るワイン蘊蓄。実は無色透明のワインが説明することでその味になるという妄想。もうこの人には敵わない。
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お久しぶりの岸本さんのエッセイ。今回も岸本ワールドは炸裂!どこまでがほんとうでどこからが妄想なのか…そのぐるぐるの合間を漂う独特の心地がなんとも言えない読後感を生む。しかもなんだかやっぱりというか、上品なのね。品格というのはこういうものに表れるのかもしれない。岸本さんエッセイは何度でも読み返したくなるのだが、本作も同様。決して一気読みできる類のものでは無いけれど、ジワジワ来るのでぜひオススメしたいシリーズである。
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20年近く続いている筑摩書房のPR雑誌「ちくま」に連載されている「ネにもつタイプ」を書籍にしたもので、本書が3冊目になる。
柴田元幸氏と並んでこの人の翻訳した作品には好きなものが多いし、この人のエッセーも肩の力を抜いて「ニヤニヤ」しながら読むことができる。
前2冊を「ニヤニヤ」しながら読んだのだが、今回も始終「ニヤニヤ」しながら楽しんで読んだ。
多分、この人の文章のリズムやテンポが僕にあっているのだろう。
いつものように虚実入り混じっている作品も収録されている。
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ここは宇宙だったのだ。自分はあの暗く冷たい何もない宇宙空間のただなかにぽつんと浮かんでいるのだ。夜、外を歩いているときにふとそのことを思い出すと、そのことをありありと感じて、首筋や背中のあたりがすうすうする。その首筋や背中のすぐ後ろから、もう暗黒の宇宙は広がっている。自分と宇宙が、いまじかに肌を接している。(p.52)
いつか『グズな人には理由がある、ただしグズは魂と直結しているのでグズを矯正すれば魂も死ぬ』と言うタイトルの本を書くのが夢だ。私の見るところ私のような人は日本にざっと500万人くらいはいるはずだから、もしかしたら100万部超えのベストセラーになるのではあるまいか。(p.88)
しかし成長は、いったんしてしまうとその後が存外つまらない。確実に人間として一歩一歩完成に近づいているはずなのに、なぜかその実感がわかない。そこで他の人をつかまえて「知ってた?台風ってだんだん大きくなるわけじゃないんだよ?」とか「完璧の“璧”のこと“壁”だと思ってない?」などと得意げにいって、人々の蒙を啓きつつ先に成長した者の優越感に浸ろうと試みる者の、驚くことにたいていの人は私より先にその事実を知っており、優越感どころか逆に見下されたりする。つまらない。(p.114)
誰にも、それを発した本人にすら見られることなく自己完結した呪詛は、言ってみれば純粋呪詛、観念としての呪詛だ。そして私が裏垢の存在を忘れることによって、それはアートとして完結したことになる。
ときどき、ネット空間のどこかに今も存在しているはずのあの裏垢のことを考える。誰にも聞かれることなく小部屋にいつまでも反響しつづける自分の言葉は、さぞや孤独だろうなと思う。(p.187)