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「税務署を恐れているうちは、うまい交渉などできません」というコンセプトのもと、本書では、正確な税務調査の知識をもとに国税と税務調査でうまく戦える方策が紹介されている。筆者は元国税調査官で書籍「税務署の裏側」で一世を風靡した松嶋税理士なだけに税務署内部事情に知悉した内容だ。「税務署の総務課では、雇ってもいないアルバイトを雇ったことにして国税局から予算の割当を受け、その給与相当額を税務署の裏金にする、といったことをよくやっていた」(P56)との話しは、うちの事務所の国税一筋40数年の人に聞いたら、「20年前は旅費をごまかして大目に請求したことがあったが、今は会計検査院のチェックが細かく行われているので無理」とのこと。しかし20数年前とは言え税務署でそんな水増しが行われていたとは驚き。
P112
なお、聞たところによると、金融機関との打ち合わせに参加していただけで、役員とみなされて、多額の法人税を課税された事案も過去にはあったようです。
あくまでも私見ですが、金融機関との打ち合わせに参加しているかどうかが重視される理由としては、国税が検証しやすいからだと考えています。国税の内規などを見ますと、経営を行っているかという点について、会社の重要事項などの意思決定に絡んでいるかどうかなどが重要になると解説されています。この点を検証するとすれば、会社の社内の会議の参加状況や発言内容をチェックする必要があります。しかし、同族会社である中小企業の場合、議事録や稟議書などの記録をあまり残さないことから、このような内容はその検証が非常に難しいです。
一方で、金融機関はトラブルの防止などの理由から、細かく応接の記録を残すよう指示されていますから、反面調査を実施すれば、問題となっている役員からどのような発言があったのかなど、検証することが可能です。簡単に言えば、証拠になりやすく攻めやすいから、金融機関との打ち合わせに立ち会っているかどうかを国税は重視するのでしょう。
このような税務調査の検証方法が正しい判断になるかは別にして、国税との無用なトラブルに巻き込まれないようにするには、予め分掌変更した役員は銀行との打ち合わせに同席しないよう十分に指導しておく必要があると言えます。
P142
私見を申しますと、税務調査において給与と外注費の区分で否認することは国税にとっても難しいという現実があることをまず押さえる必要があると考えています。総合的に見る、ということは決め手を欠く話ですから、実際のところは国税はあまり触れたい話ではありません。にもかかわらず、国税が頻繁に給与と外注費の区分を問題にするのは、外注先の支払としている個人について、確定申告をしていないことが多いからです
外注先とした個人事業主から確定申告がないと、その事業主の所得税はもちろんのこと、その事業者が納めなければならない消費税も納税されないことになります。その一方で、給与所得者については、確定申告することなく年末調整などで所得税をとれますし、消費税の経費も否認できますから、後日税金を追徴できます。
~こういうわけで、外注先に確定申告をさせていれば、給与と外注費の区��のリスクを非常に小さくすることができます。もちろん、外注先に確定申告を強要できないことが問題になるわけですが、その場合には、税務調査が実施された際、調査官に対して必ず遡って申告納税させることを申し出ましょう。実際に外注先とした個人から申告納税があれば、調査官としてもそこまで厳しい対応はしないと考えられます。
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いくつか参考になったので示します。
(a)調査官が更正を嫌うとは限らない
通常の税務署の調査は確かに嫌がる。
一方、国税局の調査の場合、更正するのに慣れているので例外。
(b)「とりあえず期限内申告」は絶対にやるな
下記、久保先生の説を痛烈に批判していました。
http://kachiel.jp/blog/%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%81%82%E3%81%88%E3%81%9A%E6%9C%9F%E9%99%90%E5%86%85%E7%94%B3%E5%91%8A%E3%81%99%E3%82%8B/
「確定」申告とは言えず無効であって、税理士免許にも差し支える話だから、とのこと。
→期限後が2回目となって青色申告が取り消される、と言う場合、完全には固まっていない論点を含んだままあえて申告する場合はあります。
今後もできる限り精度を高めた上でのやむを得ない場合の手段としてはあると考えています。
(つまり、気軽にやらないように、ということと理解しましょう)
(c)給与・外注問題を低減するためには、外注先にはちゃんと確定申告をさせるように
国税はそこにも注目しているので、リスクが下げられるとのこと。
→たしかにそう思う時がありますので、メンバーページにも追記しておきました。
(d)個人事業の交際費
800万の枠のある法人と違って青天井と言われることがあるが、事業への直接関連性がないとしてゼロという考え方もある。
→事業関連性には十分に注意べき。
(e)個人の足場レンタル
法人でやるのは問題ないが、個人だと雑所得なのでやるべきでない。
→その通りだと思います。
(f)軽減税率
「実際に税務調査をした身から断言できますが、調査官は軽減税率に関しては、真剣に税務調査はしません。
頑張っても取れる税金は10%と8%の差額の2%に過ぎませんし、軽減税率の線引きは難しすぎるため、税務調査の決着に必要になる修正申告を納税者に提出させることも難しいからです。」
→そんな気もします。
「導入前から問題が山積している以上、軽減税率は即刻廃止撤回しなければならない制度でしょう」
とのこと。
→その通りだと思います。
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税務署職員である期間が比較的短いからか、大村大次郎氏の本に比べると、調査官としての経験談や具体例が少し乏しい気がした。
コラムをまとめた、ということもあって、何か本全体としては若干とりとめがなかった。
ただその中でも、貸倒損失に関しては通達の内容が非常に国税側が有利であるなど、非常に参考になる記述も散見されたため、時々見返して勉強していきたい。