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ラヘル・アイゼンベルクはイヤな女である。
アメリカかぶれのパワー系、キャリア系で、
金にならない仕事はしない。
名声にならない仕事はしない。
第1巻『弁護士アイゼンベルク』を読みながら、私は不快でならなかった。
ようやく好感らしきものが湧いたのは、話の半分を過ぎてから、いや、もっと後だったろうか。
ラヘル・アイゼンベルクは、仕事には真剣に取り組んでいる。
現場に足をはこび、前線に突入し、体当たりし、知的で、タフで、肝が座って、つまりは、"安い仕事はしない"凄腕の刑事弁護士なのだ。
次第に、彼女のイヤなところも、人間味ととらえられるようになる。
1巻の終盤には、ラヘル、がんばってーと応援できるようにもなった。
そんなわけで、第2巻、『突破口』である。
間の悪い時に、間の悪いところで、知ってはいるが好もしくは思っていない相手に、親しげに声をかけられて、適当に愛想をする――そんな経験は誰にでもあるだろう。
パワー系キャリア系であろうと、それは免れ得ないらしい。
しかし、ラヘルが並の人とちがうのは、そこからまもなく事件に出くわして、仕事を引き受けるはめになることだ。
すぐさま仕事モードになった彼女は、事件がなにかも知らないままに、すべて心得ているような顔で警察に対峙する。
さらに、依頼人にも毅然として報酬の交渉を迫るのだ。
まったくもって、安くない弁護士である。
法廷に向かうまでの準備、法廷に立ってからの応酬、ラヘルの仕事ぶりは容赦ない。
とにかく凄腕の女性だが、しかし、そんなラヘルも完璧ではないとみえる。
優秀な男性が好みなのはよい。
ただ、そのうえ"一見わかりにくい難あり"が好みらしいのだ。
ザーシャ・アイゼンベルクは夫だ。
優秀な弁護士で、アイゼンベルク&パートナーズの共同経営者でもある。
二人の娘ザーラにとってもよい父親だ。
ただし、彼は浮気をした。だから別居している。
今、彼は独身気取りのライフスタイルを楽しんでいるらしい。
ラヘルのほうも、恋人はいる。
レーザ・ハイム、こちらもまた優秀な弁護士である。
ただし彼はイスラム教徒だ。
ザーシャはユダヤ教徒で、
ラヘル自身はキリスト教徒だ。
別居はしているが離婚はしていない自身の今の状況は、ただでさえややこしいだろうに、なぜラヘルはここに宗教的な厄介まで加えるのだろう?
しかし、彼女がつきあった中で1番難ありだったのは、過去の恋人にちがいない。
その難ありの様相はこの『突破口』に描かれ、1巻にも書かれている。
そう、気をつけなければならない。
この『突破口』には、さらりと簡潔にわかりやすく、1巻の話が書かれている。
『突破口』を読んでから1巻を読むと、やはり興が削がれるだろう。
1巻には、ラヘルのいやなところが前面に出ているのだが、終盤までには、きっとそれに慣れてくるだろう。いっそ面白いと思えるかもしれない。
だから、やはり1巻『弁護士アイゼンベルク』から読むのをおすすめする。
私が感心したのは、ある男性が、ある女性に声をかけるところだ。
彼は、彼女が最大にコンプレックスを感じているところを誉めるのである。
もちろん彼女はいぶかしむ。からかわれているのかと鼻白む。
けれども、彼はさらに誉める。強い言葉で絶賛する。
それが本心からかどうかはわからない。口から出任せかもしれない。
けれども、彼女にそれが本気として伝われば・・・・・・
ああ、これは恋してしまう、それも人生の変わる恋だろうと、私は得心する。
皆に誉められるところを誉められても、琴線に触れることはない。
自分が短所欠点だと思い込んでいることを、そうではないと確信させてくれるのだ。
世の恋に悩む人々は、男であれ女であれ、知っておくべきことかもしれない。
あなたは素晴しく魅力的だと、彼/彼女に、たしかに伝えるのだ。
その重要な場面は66ページにある。
ぜひお読みいただきたい。
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凄腕の女性弁護士アイゼンベルクは、映画プロデューサーのユーディットから弁護を依頼される。ログハウスにプラスチック爆弾を仕掛け、滞在していた恋人を遠隔操作で爆殺した容疑で逮捕されたというのだ。無実を主張するユーディットの弁護を引き受けるが、彼女の自宅からは爆弾と起爆装置が発見され、さらに何かを隠しているようで……。
シリーズ第2作。やや展開にもたつくところがあり、一気に読み終えることはできなかったのが残念。
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どちらかと言えば単純な筋を、なんとか複雑にしようと本筋をぼかしたり、意味のない話を挿入したりしていて、読者にはいっこうに結末が読めない。作者はこれが現実だと強弁するのだろうが、読み物(ミステリー)としては面白くない。さらに言えば、聴き慣れない名前の登場人物が多く、ある時はファーストネーム、別の場面ではラストネームで記していたりするので、都度人名表に当たらねばならない。興を削ぐこと甚だしい。読み終わって正直ホッとした程だ。いずれにしろ、筋の割に冗長過ぎる。
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女性弁護士ラヘルは知り合いとは言え仲が良いとは言えない映画プロデューサーのユーディットから弁護を依頼される。恋人を爆弾で殺したという容疑。状況証拠は沢山ある。調べてみると、誰か別人が殺したと思えなくもないが、ユーディットも怪しい。彼女が5年前に参考人となった殺人事件も交互に描かれると・・・
面白いと言えば面白いし、事件がちっちゃいと言えばちっちゃい。
動機や方法などかなり読ませる。ただ背後に巨悪が潜んでいる感じがしながら読んでいたのでその辺は肩すかし。しかし、悪いわけじゃない。そんな期待をしていた方が悪い。巨悪じゃなく個人的な話だということを前提に読めば、相当面白いミステリーだった。
「論理的根拠はあるの?」
「ないさ。宗教の問題だからね。宗教は、おまえがなにをしてよくて、なにをしてはいけないか規定しているだけだ。カトリックは離婚を禁じ、ユダヤ人はエビが食べられない。そこに意味があるかどうかなんて関係ない。そもそも意味がないから宗教なのさ。意味のあることに宗教は必要ない。わかっていることじゃないか」
宗教に意味がない。確かに。昨今言われるマインドフルネスに近い、瞑想を提唱する仏教には意味があるので、宗教ではない、って言えるのだろうか。
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ノイハウス等の名訳者、酒寄氏が訳しているので期待して読み始めた。なるほど、映像化され易いスピーディな展開だったし、嘘でしょ、と突っ込みたくなる程、調子良く進んで行った。軽く読めるエンターテインメント的ミステリー。
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ちょっと予想できない真相。
これドイツミステリなんだが欧米や日本のミステリとしきたりが違う感じ。派手とか地味とかということではなくて。
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過去と今の二つの物語が同時進行するのが、このシリーズの特徴なのですね。前作に続き、この作品でも、その様な物語が展開されます。それと、最後にどんでん返しが起きる展開も、このシリーズの特徴です。
さて今回は、事件もさることながら、アイゼンベルク本人にまつわる驚く話も明らかにされます。ちょっとビックリ。
それと、相棒?の探偵も出てきて、今後の作品でも、その探偵が出てくることを期待です。そうすれば、話が広がるしね。
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弁護士アイゼンベルクシリーズ第2作
あらすじ
ラヘル・アイゼンベルクは、友人の逮捕現場に居合わせたことで弁護を引き受ける。彼女は映画プロデューサーで、恋人を爆破した容疑をかけられた。確かに彼女は浮気が原因で、友人に爆破を持ちかけられたが実行はしていない。恋人は事業を失敗しては人から資金をつのっていた。ラヘルは探偵のバウムとともに真相を追う。同時に、ラヘルの姉の真相についても周囲が騒がしい。
主人公ラヘルのイメージは、名取裕子とか、松下由樹だな。2時間ドラマの。仕事ができて、夫とは別居中。現在恋人がいるが、部下の男性からも慕われている。事件捜査では弁護士の範疇を越えた無茶もやっちゃう…。というところが。
本作はご当地ものでもあるらしい。ドイツの南が舞台で、確かにカフェや店なども詳しく描かれているなとは思ってた。まさに2時間ドラマの京都とか小京都とかに共通していると思う。適度にハラハラできるし、ラヘルチームの頑張りも見たいので、続編が出たらまた読む。
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いやあ、良かった。ドイツものは日本で読むのは難しいけど、これは読みやすいし、楽しい。謎解きも良いです。
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フェーア、2作目。前作と同じく、過去案件と原罪がクロスして行く・・見出しについている日付はかなりのキーになって行く。
更に弁護士の姉が30年前に眼前で事故死した心の傷も伏線に入ってくる。
弁護士のキャラは今回も好きになれず。
知的、やり手だけに男性と同じく「色を好む」の家、かつての恋人、夫、部下とも恋愛関係で股がけ。
独逸の刑事裁判の進行は日本と大きく異なり、法廷サスペンスとしての取引が作品の大きな魅力?面白さに繋がっている。
日本ではありえない「弁護士が探偵を雇い、独自に調査を進め、裁判中にも情報がどんどん入ってくる」のは驚かされる。でもこの探偵、地味に面白い存在。
公判前の拘留審査に大きく絡む証人尋問、そして被疑者の身柄拘束云々を巡る駆け引き、シーラッハものを思わせる流石独逸サスペンス。
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弁護士アイゼンベルク第2弾。
恋人を遠隔操作で爆殺した容疑で、映画プロデューサーのユーディットが逮捕されてしまいます。
偶々目の前でその逮捕劇に居合わせたラヘルは、ユーディットから弁護を依頼されて渋々引き受けますが・・。
ユーディットが容疑者になった件の事件の経過と、5年前の女性惨殺事件とが交互に展開されるという構成は、前作同様ですが、2つの事件がどう繋がり合うのかも含めてグイグイ読ませるものがあります。
そして、前巻で示唆されていた“ラヘルの過去”もこの巻で明かされます。
前巻でのラヘルの元カレのハイコの匂わせ具合から、かなり深い闇なのかな、と思っていたのですが(しかもこの巻ではラヘルの娘のザーラにチクるという陰湿っぷり)、実際は確かに重いといえば重いですが“でも、これは事故の範疇だよね?”という印象でした。
それはさておき、本筋の方は勾留審査での検察側とのスリリングなやりとりや、話が進むにつれて明かされる意外な背景や繋がりへの持って行きかたもお上手で、特に終盤の手に汗握る展開は目が離せませんでした。
因みに今回、ラヘルとタッグを組んで真相を追うのは、地味だけど敏腕な探偵のバウムで、彼の“危ないから止めておけ”という警告をほぼ無視して危険に飛び込むラヘル。という感じで、何だかんだでラヘルにイニシアティブを握られていましたが、なかなかええキャラだと思うので、今後もレギュラーで登場してほしいと思った次第です。