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これは喪失の物語。
自分勝手な愛を押し付けられた子の幸福と不幸を描いた物語。
相変わらず凄まじい作品を書いてますね(^◇^;)
一卵性母娘という言葉があるぐらい母と娘は近くなって、それでいて憎悪の対象に簡単に変わる。
コマコの人生は半分以上ママのマコのもの。
それが苦しみの元。
まるでスイッチが入ったように集中して一気に読んでしまった。
こうした苦しい母娘関係をしている親娘は多いのかもしれない。
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若く飛び抜けて美しい母と5歳の口のきけない少女は、ある日突然、長い長い旅に出る。
一つの町や村に慣れた頃、また次の場所へ。
マコはその美貌と母たる存在感で娘のコマコに無償の愛と忠誠を植え付ける。甘く悲しい母娘の関係はコマコをずっと縛り続け‥。
逃亡先のどれもが奇妙な風習があったり怪しく閉鎖的だったりする集落のせいか2人の逃避行は夢の中の出来事のようだ。
それはコマコが高校生になっても、文壇バーに出入りするようになっても、その先もずっと続く。
幻覚や空想、コマコの作品世界‥どれもコマコが特殊な生い立ちであることの現実的な痛ましさを忘れさせ、マコとコマコの物語を物語として読む余裕を持たせてくれる。
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駒子はよく頑張った。複雑な家庭に産まれても、母親から受けたものが愛だと信じ、裏切りや絶望があっても生きていく。狂気的な部分もあるけれど、かっこいいなぁ。
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ひさしぶりに文芸作を読んだ。とても面白かった。
前半の母との逃避行は、大人の筆致で子供のころを書いている体裁なので少し読みにくい。深く沈んだ澱のような暗くよどんだ内容。なにか危うさが漂っていてはらはらしながら読み進んだ。後半の母から離れて一人の女の子・女性として生きていく姿は、はっきりと描かれ、前半の危うさは薄くなり没入しやすかった。
父親との関係、弟との確執が面白い。
作中作が多く挿入されており楽しかった。クレーンガールが面白かった。
ラストがとても印象深く締めくくられている。
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前半と後半で異なる話を読んでいるような感覚。コマコさんの人生といってもまだまだ前半戦なので、その後の話も気になる。
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眞子の業は深い。
眞子だけが全てだった小さな駒子が大人になって、自分をこうした眞子と向き合い、痛みを吐き出す過程を見ていくのはつらかった。
初めて読んだときより、駒子の人生がそうなった理由が分かった。
駒子が自分そのものである太郎を痛めつけ、その太郎が紫陽花を食べて入院するところがやけに心に残っている。
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『呪いのように。親子、だもの。』
冒頭から、これは大好物だなと期待を膨らませました。
マコとコマコの逃走劇。冒険ファンタジー。行きずりの町町の奇妙で唆られる風習。コマコの成長。『双頭の弟』『葬式婚礼』と、どうしたらこんな単語が頭に浮かぶのか。神が降りてる。悪魔かも。
頽廃的な二人の旅に、読者も没入していく。
『駒子も、くる?』の言葉に心躍りまくる。ワクワクしてしまう。次はどんな町なのか。一生続いて欲しかったこの旅は唐突に終わりを迎えます。唐突と感じてしまうほど、この旅に心を奪われていました。終わりは来るべくしてやってくる。分かってた、分かりたくなかった。そんな風に思える第一部でした。読者である我々も、マコに置いてかれてしまった。
そして、第二部。正直、第一部がぶっ飛んでいたため、過度に期待はできなかった。長編小説は、必ずダレる時期がある。前半が凄すぎたため、後半はもう全て後日談くらいの気持ちで読み始めた、が。
桜庭一樹にやられました。この物語の後半は惰性です。コマコも、母と旅した10年の後は余生だ、と明言しています。陳腐で堕落的なお話になる。なのに、最高でした。どこにいっても『マコ』がついて回る。『手下は、ボスに絶対服従』。ボスが死んでも。手下を置いていっても。忠犬。この世の終わりの日まで、ずっと一緒。この呪いは、コマコと共に読者へかけられるのです。
作中コマコが物語を作ります。クレーンに育てられた話、哲学が原動力の船になる話。(言葉だけだとなんのこっちゃ、ですね笑)
ただこの話の完成度が高すぎる。これだけで満足してしまう程の充実感。ファンタスティックですよ。ここの短編だけでも、読んで欲しいくらいに。
私個人としては、マッチング100%の作品でした。歯車が寸分の狂いなく噛み合いました。なんて脳内をぶっ飛ばす物語を作ってくれたんだと、桜庭さんに感謝しかありません。
堕ちた心は、どんなに社会的に成功しようと、蝕み続けます。この作品のラストは、呪いから脱しない。呪いと共存もしない。呪われ続ける苦しみは消えない。だが苦しむこととは、生きることだ。
『幸福とは怠惰』まったくもってその通りだ。
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毒親に呪われた少女が1人の人間となっていく物語。
あまりにも文学的で知性のない私にはちょっとついていけず…。
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読後どっと疲れを感じた。
読みながらも、かもしれない。
私の心の琴線に触れたのか、何を感じ取ったのか、とても切なくなり、孤独を感じた。
それを共有したいのではなく、何も言わずに誰かに縋りたくなった。
体温を感じて丸まって抱きついたまま眠りたいと思った。
作者の命を削って絞り出す言葉達が、物語はこうして造られていくのだと、思い知らされて打ちのめされた。
ひとつの体の中にもうひとつの体が芽生えて育つ、その過程を経て、もうひとつの命が生み出される。
その時点でもう別の個体であり、別の人生となる。
共依存の関係で、捻れて拗れて歪んでいたとしても、きっとそれも愛だったのだと思う。
そういう愛し方しか知らなかったのだから。
憎むでも恨むでもない。
お互いにお互いがすべてだったのだから。
その為に存在していたのだから。
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桜庭一樹さんの「ゴシック」シリーズが大好きで他の本読み始めたのですがあまりの温度差に風邪をひきそうなぐらいシリアスで薄暗としています
日本の各地転々とする生活はある意味羨ましくしかしあまりの生々しさにぞっとする桜庭一樹さんの表現力にどんどん引き込まれていきました
普段私は本読まず映画やドラマばかり見ていましたのでこのような映像化が難しく長大ですが誠実に紡がれた物語に出会えてとても嬉しい限りです
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友人の紹介で会った読書好きの方に紹介されて読んでみた。
前半はコマコとその母親・マコの逃亡劇が約10年にわたって続く。歪んでしまったマコから歪んだ愛情を受けるコマコの世界は、現実と幻想が入り混じりながら成長していく。第三者からみれば間違っているが、二人の間には確かに愛があった。が、父親に見つかったことによりマコはコマコの前から姿を消し、逃亡劇は終焉する。
後半はマコと別離し、現実の世界で生きることになるコマコの20年の物語。美しくも退廃的な高校を卒業し、出会いと別れを繰り返しながらひとりの小説家となっていく。この本を紹介してくれた友人曰く、「ママからパパにバトンタッチ」とのこと。なるほどと思った。育ってきた環境が環境だけに、家族や編集者、恋人たちとは衝突を繰り返すが、歪んだままで周囲と折り合いをつけながら、あるいはその歪みを許されながら、ひとりの人間として幸せになっていく。
ラストシーン、コマコが泣いたのはなぜだろう、と考えている。母親の死を受け入れたから、というレビューを読んだが、私には「幸せになっても逃れられない、マコという呪いに恐怖したから」というふうにみえた。どちらにせよ、間を置いてまた一から読んでみようと思う。
全く関係ないが、後半の大人コマコは(聞いていた曲のせいもあると思うが)Maison Book Girlのコショージメグミ氏で脳内再生された。
曲でいうと よだかの詩/酸欠少女さユり
小説で言うと 八日目の蝉 そして、バトンは渡された 流浪の月 あたりは近しい雰囲気を感じる。
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ママの名前は、マコ。
マコの娘は、コマコ。
すなわち、それがあたし。
あなたの人生の脇役にふさわしい。
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五歳のあたしに、ママは言った。「コマコ、逃げるわよ」。母の名前はマコ、娘の名前はコマコ。美しい母と、小さなその分身。老人ばかりの村や奇妙な風習の残る温泉街などでの逃避行の中でコマコは言葉を覚え、「物語」を知る。いつまでも続くように思えた二人の旅は突然終わりを迎え、一人になったコマコは無気力に成長し、そして「物語」を自ら紡ぎ始める―。母と娘の因縁を描く渾身の長編小説。
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「幸福から立ち直らなくてはならない」
母親マコと娘コマコの10年、その後のコマコの20年の物語。
コマコの20年は、瞬間的なオアシスがあっても、ずっと荒野にいる感覚。
それをコマコの独特な感性の視点で描かれる。
ラストシーンでコマコは泣く。30年の時間が一気に押し寄せる感覚になって、流れゆく時間に想いを馳せた。
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面白かった。
構成もテーマも良かった。
ただ、私自身の問題なのかもしれないけど、現代小説を最近楽しめない。問題が過剰に強調されている気がする。中学生の深夜に描いた日記を読んでいるような、深い悩みと苦悩、それを助長する舞台設定。そして、それを克服する救いの言葉、シーン。
子供の頃に読んだらハマったかも。
面白いとは思う、けどハマれない。