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大きめの書店を2つ回ったのに、芥川賞候補作が売り切れていて、帰りに寄った図書館でこちらを。
『生き方の問題』『最高の任務』の中編が二作。まず、いずれもタイトルのがカッコイイ。読後、タイトルを見返すとさらに内容がグンと生きてくる。
二作とも「書き手」がそれぞれ従姉妹、叔母、という絶妙な距離感でありながら、しっかり結びついた親類との軌跡を、時にエグいほどの深い情感と、温度湿度もが伝わってくる情景描写をからめながら追っていく。
なかなか読みづらいところもあったけれど、なんだか読みやすすぎるなあ、という小説が売れちゃうなか、読後は久々に充実感があった。はよ、候補のも読みたい。
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これからしっかり書きたいのですが、
とりあえず作者の文学に向き合う誠実さが
ひしひしと伝わってきます。
レトリックがつぎつぎ魔法のように紡ぎ出され、
しかし少々過剰にも感じられて疲労困憊しました。
文学に星などはつけたくありませんが、
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とてもとても感動したので、まとまらないと思うけど引用を交えて感想を残しておこうと思う。
というか、「残したくなる」そんな小説でした。
さて、アラサーである。
小さいころから「人がいきなり死ぬ」ということが怖い。
掘り下げると「いきなりこの世からいなくなり、なにも残さないのでは、生まれてきた意味がないのではないか」みたいな
焦りをずっと抱えてきており、それは年々強まる。
しかし凡人である私は「書けない」。
ので、だからこそ読書は好きというより「任務」という感じがあり、先人の残したものを受け取らなくてはという思いがずっとあった。
(活字中毒の人って少なからずそういう思いを抱えていると思うのだけどどうだろう。
「読まれない文章があるのがもったいない」みたいな。
隣の庭の蛇口が開けっ放しになっているのにいてもたってもいられない、みたいな気持ちに似ている。)
と、そんな私なのでタイトル回収となるフレーズにつかまってしまった。
「スパイという職業が私の興味を引いてやまないのは、最高の任務が、あらゆる任務および活動の後ろに隠され続けているように思われるからだ。
最高の任務が念頭に置いてある任務であるかはわからないが、その一環であることは確かだという確信の中で動き続けること。
「あんた、何者?」と問われ続ける緊張の中で死ぬまでを生きること。それは、じぶんに向かって「あんた、何者?」と絶えず問い続けることと同じになる。」
これから、私は毎朝自分に「あんた、何者?」と問いかけるだろう。
「見るものに何を見たかを書くばかり」なのは「孤独」だという。
読み手のいない文章は、すなわち受け取り手のいない思いは、膨大な時間の中に埋もれて消えていってしまう。
ならば。私は見つめていきたい。それを任務とする者でいたい。
敬愛する北村薫先生の「空飛ぶ馬」のあとがきに、こんな言葉がある。
「小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度であることへの抗議であるからだと思います」
私は今まで読むことばかりで、書く側のことを思ったことがなかった。
だから作品を口を開けて待ち、甘い蜜を吸っているようなうしろめたさがあったのだけど、
書く側の希望にもなりえているのかもしれない。
「生活の中の「これは大切に使おう」なんてとてもささやかな、でも確かな喜びを、自分が死んで土に埋もれてすっかり骨も溶けてしまった二万年か三万年後に、
その物だけを手にとってちゃんとわかってくれる、そのために人生を捧げるたった一人の人間が現れる。それは、それだけで何も心配いらないくらいの希望です。」
そう、読書感想文に書いていた叔母さんはこうも言う。
「書かなくたって、それらは書かれなかっただけで、確かにお話しの中にあったでしょう。」
こうやって読んでいる私たちは、確かにあった思いを、書かれなければ消えていった感情を今手にとっていられる。
小説にも描かれることなく、背��となってその他大勢として埋もれていく人間でも、
読み、受け取るという「最高の任務」を抱えて生きていけるのなら。
それはこの世から消えてしまっても何も残さないことにはならない。
「私は、お話の中にまぎれたこの世のものについてどれほどのことを、強く優しく礼儀正しく考えられるだろう?」
この文章を読むあなたの心にも、どうか今日の私の感動を手に取ってもらえることを願って。
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うーん。
ちょっと波長が合わなくて、残念。
ま、読んでみてわかることなので
そういうこともあります。
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久々に辞書を片手に意味を調べながらの読書になりました。
集中して読まないと途端に迷子になるこの小説。
唐突にでてくる名文に酔いながら
これは一筋縄ではいかない
何度も読んで噛み締めながら味わう本だなぁと
ところどころメモをとりながら読みました。
まずは1回目。
次もう一度読んでみよう。
山に登るような感覚で楽しむ小説も好きです。
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「最高の任務」、最高。後から分かるとか、回収できるあの日の出来事とか、まま現実には滅多にありえないけど。読み進めるうちに、主人公同様の高まりを感じた。感じられるってことは、信じられること。「旅する練習」での直感は当たってた。久々に出会えた作家さん。穏やかさの中に強く渦巻くものがある。堀江敏幸さんとやや通ずるものを感じる。
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うーん、ライトな文章ばかり読んでいた私には、文章が精巧すぎて、読みにくかった…。
響く人には響くと思う。
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「生き方の問題」
告解のようであくまでも独善でしかないという
強烈な自覚を持ちながら(それはおためごかしとはちょっと違う)、それでいてこの小説が「手紙」というテイをとりながらもあくまで「小説」であるという前提によって結局は「生き方の問題」についての告解として成立している。
「手紙というテイ」という設定を以てメタ視線を挿入する→一度書いたことを取り返しがつかないとする/一度書いたけど4万字消したと書くことは"作家"である自分もしくは"作品"であることから逃げようとしているのか?面白がっているだけか?
いつも思うけどどうしてここまで自分というもの、というか作家であるという自分の特権を引き摺り下ろそうとするんだろうと思う。それは反転してやはり強烈な創作欲望への自覚があるように思うし、なんだか苛烈ですらある。
グラビアイメージDVDが文学に登場するのを見たのも初めてだし、グラビアイメージDVDの映像をプロの小説家が本気を出して描写するとこうなるんだとワロタ。その筆致はほとんどテクノロジーに近い。
「最高の任務」
「書く」という行為に依る過去性を以て、複数の時間軸で描かれる "遺す"ということ。
遠回りだけどもヒントを与えなくても、きっとあなたなら自分の跡を見つけるはずと信じて、ただ、"遺す"。
そして仮に、自分の跡が後に発見されないとしても、だからって自分の跡というのは、それ自体が無かったことには絶対にならない。
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生き方の問題
言葉の力でエロを昇華させてます!
よくまぁ、ここまで 笑
最高の任務
また、いつか読み返したいと思う。
今はまだ、しっくりこなかった。
が、なんか爽やか。
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乗代雄介はとても好きな作家で、最初に読んだのは『本物の読書家』だった。
早く芥川賞を取って欲しい、取らないとおかしいと思っている。
描かれる女の子が魅力的なのがひとつの特徴。
そして文学関係の蘊蓄も多く、何というか、知的欲求も満たされる。
ミステリー的要素も織り込まれて、面白すぎるから芥川賞を取れないのか、と思ってしまう。
この小説集の二篇も、魅力的な少女〜女性が登場する。
「読者は再読することしかできないとナボコフが書いている。その全体で何が起きるかを知る過程を乗り越え、二度、三度、もしくは四度、さらにもっと読み返すことで明確に把握して、味わうのだと。」(最高の任務より)
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この本には二作入っていて、前に載っていた「生き方の問題」で進めなかったのですが表題作の
「最高の任務」は読み初めからぐいぐい引き込まれて素晴らしいの一言❣️
主人公の女の子がずっと近場に遠足?に行ってた、なんでも物知りの叔母さん
そのおばさんの死後日記をたどって同じコースを一人で歩く。
そこで見つける過去の叔母さんの欠片…
そして家族で出かける卒業旅行
どれも感動です。
途中に挿入される痴漢に対する対処は‼️
次の作品、前の作品、続けて読みたくなります。
この作品、芥川賞にノミネートされてたんですね!
今回も「旅する練習」でノミネートされてたのですが残念。
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私には難しくて、これはしばらくして再読必須だなと思っています。
乗代さんの文体は、不思議な書きぶりで、こんなに語彙のあって独特な表現をする作家に初めて出会いました。情景描写がすごく繊細で丁寧で、それでいて読者の想像力が試される余白があって、面白かったです。
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文体が複雑で読みづらかった。
「生き方の問題」ひたすらに独りよがりなエロだった。そこまで思い続けることもそれを逐一手紙に認める行為も最早恐怖でしかない。終わり方もかなり独りよがりな感じで怖かった。男性特有の感情だろうか。
ただ、お話の根底にある苦しさとかやるせなさとか、ひょっとしたらとか、本当は、とか、様々な感覚が行間から読み取れたような気もした。
「最高の任務」分かるようなわからん様な小難しいような単純なような文章をタイトルの回収だけを目的に何とか最後まで読んだ。
隣におっさんが座ったシーンの描写はやはり男性が書いた文だよな、という印象。
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書くことにより全てを発散している感じが好き。こんなに巧みに言葉を使いこなせたら、いろんな感情の解像度があがるんだろうな。
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『最高の任務』
大学の卒業式には家族で行くという母。
「小学五年生以来のね」という
謎の言葉を発する。
亡くなった叔母が関係しているらしい。
その叔母から渡された日記帳。
「私に読まれないようにね」という言葉と共に。
家族で「最高の任務」に向かう。
叔母と姪という関係以上に強い繋がりがあり
羨ましいような哀しいような。
『生き方の問題』
従姉弟という微妙な位置。
子供の頃の関係のままではいられない。
それは彼女の問題なのか、彼なのか。
お節介で厳しい祖母の問題なのか。
繊細で、透明さの中に少しの澱みがあり
笑ってしまうシーンも。
(『最高の任務』のお父さんがいい)
楽しい読書の時間でした。