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『イヴの七人の娘たち』の続編。こちらはタイトルの通り男性が持つY染色体に焦点をあて、Y染色体のDNAから父系を遡ろうとした話。だが面白かったのはY染色体のDNAから父系を遡る話よりも、そもそも性とは何か、性はどのように決まるのかを人間だけでなく様々な動物の事例から説明している箇所。遺伝学よりも性科学的な記述の方が興味深く読めた。後半はY染色体の数や活動量が年々減少しており、そのことを「アダムの呪い」として説明しているが、そのあたりは「遺伝学から見るとそう見えるのね」といった程度で読むのがよいのではないかと思う。
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「イヴの七人の娘たち」がmtDNAに焦点を当てていたのに対し、本書では、性染色体、特にY染色体を巡る探究の旅が描かれる。
なぜオスとメス、男と女の二つの性別が必要なのか、イヴと同じように、Y染色体から祖先に辿り着くことができるのか、男と女で、家系によっては発生率に有意な差がある場合があるが、それはどうしてなのか、といった疑問に、一つ一つ回答を見出していく。
また、農耕の広まりから、所有が生まれ、不平等化、性の従属化が始まるという文明史につながる話となる。さらに精子の減退という現況からY染色体が衰退し、遂には男性の消滅、人類の消滅の未来があり得ることを予測していく。
この辺りになると、自分の理解力ではついていけなくなってしまったが、遺伝子学に関する様々な事象や取組みの歴史が興味深く描かれており、人類というものを何万年のスパンで考える必要があることを知らされる。
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サイクスという同姓の人との偶然の出会いから、全く同じY遺伝子を持つことを知り、共通の先祖を探すところから、多くのサイクス氏への協力依頼と続き、いきなり面白さに曳きこまれる。そしてモンゴル帝国の元の版図に多く見られるY染色体にジンギスカンを同定するところは興味深い。前著の「イブの7人の娘」は人類誕生の過去に迫る興味があったのとは全く異なり、遺伝子学への興味が尽きない内容だった。生物の性別は必ずしも固定されているわけではなく、無性生殖も含めいろんな生殖があるとの紹介があるが、これが実はY染色体の絶滅の危機。男性が途絶える危機はすなわち人類の危機と思うところが、将来的には女性同士の卵子の結合から生命の誕生の可能性まで!興味は尽きない内容だった。同性愛者の男性、あるいは若くて死んでしまう遺伝子を持った人がが子供を設けることができないのに、なぜ遺伝されていくのか?その解説も謎解きの面白さがある。