投稿元:
レビューを見る
短めの文で淡々と書かれているけれど、どこか引き込まれる。
「べんり屋、寺岡」シリーズもそうだけど、この作者さんの日常の書き方、好きです。
冒頭、主人公の名前の意味から始まる。
「お兄ちゃんのための名前みたいではないか」とショックを受けた主人公だったが、最後にそれは、母親自身の経験を悔やんでの母の願いだったのだとわかるところは、同じ母親として痛いほどだった。
育児書やメディア情報に頼るばかりでなく、こういう児童書を子育て中の親も読むと、いろいろ気づくことがあると思う。
病気がちだったハルおじさんの言葉
「自分の本当に好きなものから広がる世界には、終わりがないんだ。どこまでも広がっていく」
を受けて主人公が作文に書いた
『わたしの好きなことは本を読むことです。本からどこまで世界が広がっていくかと思うとドキドキします』
という文が特によかった。
そして、妹が怒られて泣いているときにそばに来てかける兄の言葉
「あのね、お母さんが怒っているときには、自分がダンゴムシになったつもりになって丸まっとくといいよ。オレはいつもそうしてるんだ」
も、大人としてハッとさせられる。
ピリピリした家族関係が、今後少しゆるくなっていきそうな予感がする終わり方もよかったです。
投稿元:
レビューを見る
友人とのこと、親とのこと、小5年の睦子の気持ちの揺れが丁寧に描かれている。
こういう気持ちの時あったなぁと切なくなる。
睦子の母親は困ったところがある。が、母親の気持ちもわかってしまう、私も親だから。
子どもの為と思って一生懸命やってるのに空回りして、認めてもらえない不安に落ち込んで…親になったからといって急に聖人になれる訳じゃない…つらいよね。
そんな親を子どもは「あきらめる」という言葉で、親との距離をとり、自分で考えることを選択し自立してゆくのだろう。
ここには親以外の身近な大人の存在もある。
『好きなことから広がる世界に終わりはない』素敵な言葉を伝えてくれる魅力的な大人。子どもはこういう人から大切なことを受けとるのだろう。
『真面目』は、本来の意味とは違うニュアンスで使われがちで、『真面目な子』と言われるのが嫌だった睦子が、ラスト「大丈夫だって。だって、わたし真面目だから」ときっぱり言った。この子は大丈夫だと思えた。
冬の終わりの雷のあとには、新しい季節が始まるように、この家族は大丈夫。
投稿元:
レビューを見る
「いい母親」であることに囚われ、子どもたちを束縛する母と、息苦しさを感じてそこから逃れようとする兄妹の葛藤。前向きに「あきらめる」姿勢は切ないが、大切だと思う。
投稿元:
レビューを見る
表紙の色に惹かれて読んでみた。
睦子の母親の言動、私も同じようなことをしてたようで気になった。
兄弟との関係で大人になりきれなかったんだろう。
ここまでだと周りはしんどい。
嵐の夜がきっかけになっていく家族の関係が変わっていくといい。