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浅利慶太は知っているけど知らない人でした。知っていることは劇団四季の総帥であり、日本でcat'sのロングラン公演を成功させ、自前の劇場を造り、チケットシステムを持ち込んだことぐらい…あとは長野冬季オリンピックの演出をしたとこと、あとなんだか政治家や経済人のコミュニティに属しているイメージも。そうそう、岩谷時子の伝記の中にも越路吹雪まわりで重要なキーマンとして出てきたっけ。なんとなく知っている演劇人イメージとは一線を画す存在感でした。なんとなくの演劇人イメージは「新劇」というものから生まれるものであり、浅利慶太は始めっからアンチ「新劇」からスタートしていることを知りました。それは師、加藤道夫の蹉跌を受けての戦いでした。そういう意味では非常にロマンチックな思いを相当リアルに実現した人生だったのですね。そのリアル部分がビジネスっぽく見えていたのかもしれません。演劇になじみのない自分のような読者が氷山の尖端としての知っていることの下にある水中の見えない大きな塊を見せてくれる本でした。新型コロナウィルスによって、すべての舞台芸術がストップしている今、ロマンティック・リアリスト浅利慶太だったらどんな行動をするのでしょうか?