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最後まで読んでタイトルの意味を痛感しました。「貧困」ゆえの親が口減らしの為に子供を身売りし、挙げ句臓器が抜かれ殺される。何だかやるせない問題でした。中国では田舎に行けばあり得る話っぽくて、かなりリアルでした。娘が臓器提供を待っている犬養にとって、何が正しかったのか苦しい逮捕だった気がします。
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犯人の一人は紛れもなく『貧困』だった。日本、そして中国。巨大な闇。潜む闇。掴んだ闇と広がる闇。犬養にそして私たちに突き刺さる現実に震えた。犯人は途中からなんとなく予感はしてた。やっぱりね。
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やっぱり中山七里作品は、面白い。
そして、犬養シリーズも好き。
臓器移植の問題点というか、ジレンマというかそういうことについて考えさせられる。
犯人も一筋縄で行かない感じが良かった。
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犬養シリーズ第5弾。
石神井管内で、まだ10代の少年の変死体が発見される。検視に当たった御厨から指名を受け、犬養も事件の捜査に当たることに。
その変死体には以前犬養が対峙した「切り裂きジャック」を思わせるような開腹した後があった。しかも、内臓が一部取り出せれており、身元をたどってみると中国の貧しい家の出身の少年だったことが判明。人身売買の疑いが浮上する。
そんな中、大田区でもお腹に同じような傷を持つ少年が遺体で発見される。
何者かが不当に臓器移植を行おうとしていると考えた犬養たちはある大学の医学部にたどり着く。
犬養シリーズはほぼ医療系のミステリーで、医療の視点から人間の尊厳を描いている。今回も違法な臓器移植だけでなく、貧困の少年たちの命の重さなども丁寧に描いている。
前作「ドクター・デスの遺産」でも命の選別の意味を問われた犬養。今作でも透析を受けなければ生きていけない娘を持つ父親としての顔と刑事の建前との間で心が揺れる様子が描かれる。
一件落着とみせかけておいての、ラスト20ページ足らずでのどんでん返しには「また、やられた…」の一言。
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もうすぐ映画も公開される警視庁捜査一課の刑事・犬養隼人のシリーズ最新刊。子どもの遺体を発見されるところから物語が始まる。貧困層を狙った臓器売買、結末もスッキリしない。立場によって意見が分かれるかもしれないけど、やはり、そこを狙い撃ちするようなやり方には納得できない。犬養、『あなたは間違っていない』人としては、迷いながらも刑事として前へ進んでほしい。
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犬養刑事シリーズの5作目。このシリーズはどれも面白いが、本作はお得意のどんでん返しよりも最後に非常に重い問題提起をして終わるところが非常に良い。読後感が圧倒的にいい。貧困と医療と尊厳のディベートを聞いているようで、エンターテインメントがベースだが、一筋縄ではいかぬところが非常に良かった。
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中村七里氏の作品は、自分の知らない世界をリアルに表現していて、最後まで興味深く読めた。
犬養刑事が真犯人にたどり着くまでが少し順調すぎる気がした。
ただ、終わり方はひねりが効いていて良い作品だと思う。
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犬養刑事シリーズ。発見された少年の遺体からは、肝臓が摘出されていた。臓器売買グループの線を探るうちに突き当たった、少年たちの貧困問題。やりきれない思いが詰まった社会派ミステリです。
貧困家庭の子供たちをターゲットにした臓器売買グループは、もちろん許せない気分になります。それで死者まで出ているとなればなおさら。だけれどその一方で、臓器を売ることで生き永らえた子供たちがいることも確かなのでしょうね。となると倫理の問題はさておき、損をする人は誰もいない、という犯人の言い分は正しいとも思えてしまうのが苦しいところです。実際のところ、貧困の彼らがほかに救われる手立てはないのですから。
犬養のしたことは刑事としても人間としても間違っていないと思うのだけれど。だからこそ彼が結末で突きつけられたある現実があまりにもつらいです。「ドクター・デス」の事件といい、彼の心理的ダメージが心配になってきました。
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犬養隼人シリーズでした。言いたいことは分かる。私も娘が当事者なら何でもしてしまうと思う。その意味で犬養さんはとても強いし、何も恥じることも無ければ、負の気持ちを背負うこともない。親としての立場と、職業上の立場は明らかに違う訳で、そこをひっくるめて、弱いところを突いて、彼に何を問おうというのか…何様だ?と思う。私情はおいておいて、罪は罪。殺しちゃいけない。まぁ、私も小説だから綺麗事が言えるのかもしれませんが。
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8月-5。3.5点。
犬養警部シリーズ。アジア人の少年が殺害、埋められる。遺体からは臓器が抜かれていた。
臓器移植の闇を描く。哀しい結末だが、スピード感有り一気読み。
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違法な臓器売買の検挙は、形を変えた殺人だ―。練馬区の公園で、少年の死体が発見された。調査の結果、少年は中国人だと判明。しかも死体からは臓器が持ち去られていた。捜査一課の犬養隼人は、後輩の高千穂明日香と共に捜査に乗り出す。少年の生家は最貧層の家庭だった。日中の養子縁組を仲介する不審な団体の存在も明らかに…。その頃、都内では相次いで第2、第3の死体が見つかる。やはり被害者たちは貧困家庭の少年で―。背後に見え隠れする巨大な陰謀。それに立ち向かう犬養たちの執念と葛藤。驚愕のラストが待つ、医療と社会の闇にも迫った警察ミステリ。
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犬養刑事シリーズ最新作。臓器が取り出され、荒く縫合された少年の遺体が連続して見つかるという、痛ましい事件である。事件の実行犯を逮捕すればそれでめでたしめでたし、とはいかない事件でもある。現実に目の前で起こったことの裏にあるのは、あまりにも巨大な組織であり、ネットワークであり、さらに言えば、ごく個人的な気持ちでもある。犬養も、けいじとしての立場と、病児を持つ親としての気持ちのはざまで、どれほど葛藤し、心を揺さぶられただろうか、と思うと、他人事ながら胸を締めつけられる。真実を暴くことが、誰かの命を絶つことになるという究極の選択は、人に迫られるべきものだろうか。読み終えた後でもなお、心が揺れ続ける一冊である。
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臓器売買がテーマ。倫理的な立場でものを考えがちだが当事者となったらどうなんだろうと最後に突きつけられる場面が印象的。犯人が誰かとわかった段階で物語を振り返ってみるとやりきれない気持ちになってくる。利害と弱みに漬け込む嫌らしさとやるせなさがないまぜになった作品。
胸が締め付けられる思いが深く尾をひきそう。
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シリーズものと知らずにうっかり最新から読んでしまった。
しかし面白かった。みっちりした警察もの。
臓器を一部だけ切り取られた遺体から始まる事件。
臓器移植に関しては「正しい」のあり方がしんどくて、なかなか切ないラストでした。
あとこういう映画あったなあと思い出しました。
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肝臓の一部が切除された若者の遺体が連続して発見されるという、著者得意の連続猟奇殺人事件で、中国の組織も絡むスケールの大きさなのだが、身近なところで決着するという「ヒポクラテスの試練」にも共通する尻すぼみ感が惜しい。
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現状、社会保障のシステムは万全ではなく、どんなセーフティーネットからも零れ落ちる者たちが必ずいる。制度の条件が仇となり、制度から見放される者が一定数存在するからである。窮状を考慮すれば救済しなければならないはずの対象なのに、制度の欠陥が彼らを突き放してしまう。貧困は犯罪を生み彼らの苦衷につけこんでくる。そして、生活のためには売ってはならないものまでも売らせてしまう。犯人の一人は紛れもなく貧困。しかし、これをさせない家族もある。一人ひとりがちょっとずつ思いやりの心を持てば犯罪はもっともっと少なくなる。激しく思わされた。