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異なる医術でも導き出される答が一致するところ、源流を辿れば同じところがある。異なる流派でも病の苦しみを癒したい考えは同じである医師たちが、お互いの術を学びあいたい、と盛んに交歓していくことを期待させる終わりで良かった。
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続編というよりは長めのエピローグ。宗教と科学、伝統と進歩、政治的立場などの対立軸と主人公二人の恋愛が複雑に絡みつつ、気持ちのいい結末に収束してくれた。
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医学の存在意義とは何か.これを通底させた物語を紡ぐことが如何に困難か.作家とは嘘を付く人種であるが,人として自らの生に真摯でなければ,本作は決して描くことはできまい.上橋先生だからこそ描けた,唯一無二の世界なのだと,読了後に強く噛み締める.あとがきに書かれた,物語の有り様に深く首肯し,真の読書とは,作者との対話なのだと思わずにはいられない.
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2020.9 速読の私が丁寧に丁寧に、一語一語を噛み締めながら読みました。とてつもなく複雑に絡み合った思惑と謎解きも楽しめました。
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『鹿の王』本編では大活躍はするものの、どことなくいけ好かない印象だったホッサルが主人公という、続編というか外伝的な作品。
それにしても感動した。ファンタジーやミステリーとしてはもちろん、ポリティカルな要素もあって読み応えがあった。歴史的な潮流と思われていたものが、意外にも近年勃興してきたものだったりとか、現実社会のメタファー的な要素も読み取れて興味深かった。
もちろん、ホッサルとミラルの関係もライトなモチーフとして絶妙なさじ加減で織り込まれていて読みやすさにつながっていたように思う。
なんにせよ本編も含めてコロナ禍の今、ぜひとも読むべき作品だなと思った。
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鹿の王は読んだんだけど… 大分忘れている…
一人生き残った少年を連れて旅する話だったか…?あまりきちんと覚えてないので読みなおそうっと。
とりあえずホッサルさん?がキライなタイプの男性でどうにもこうにも。医者としての信念があるのもわかるし、良い人なんだろうけど独りよがりだよなぁ。ま、いい所のオボッチャマだし仕方ないのかもしれないけど(ちょっと違うかもだけど)。
男女関係において、優しい人ってのが一番始末に負えないな、と個人的には思いました。ま、本当に優しい人ならばどう考えても結ばれない(と双方知っている)ミラルさんと恋人関係にならないようにするだろうから、優しくないのかもしれませんが。その時に自分が快適に過ごしていれば後先は考えない(ようにしている)感じが見ていてイライラするというか、彼女の立場が変わった途端気後れしている感じがさらにイライラ度が増すというか。でもこういう人居るよな~、うん。で、そういう理想を追う男性に弱い女性も多いよな。私には理解できませんが。
医療と終末期医療というのは考えさせられる重いテーマだな、と思います。ホッサルさんよりも難しい名前の…候の方が好きかなぁ。イヤダイヤダと言っていても時間は過ぎていくのだから、守れるものを守るための努力をする姿に好感を持ちました。策士策に溺れたところはありましたけれども。
あとがきのコロナの話も重たいですねぇ… 今現在、欧米諸国のような医療機器は日本では起きておりませんが今後はわからないし。私たちはどうやってどのように病気と医療と対峙していくのか。重たいなぁ…と思いながら読み終えました。
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ホッサルとミラルは、同じものを目指しているのだと思っていた。2人の目指しているものが違っていても、それぞれの場所で頑張っているところが良かった。
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「水底(みなそこ)の橋」はミラルの父ラハルが長年橋職人として見てきた橋のなかで忘れられない橋について、娘ミラルに語る時に出てくる。沈んだ古い橋は、泥をかぶって藻に覆われているけれど..川底を横切って対岸まで繋がっている..橋だった頃の姿を残して水底で繋がっていると言う。父が娘に伝えたい色々なことが想像できる。
最後にこの本をお持ちのかたは、文庫版あとがき部分まで是非とも読んで頂きたい。新型コロナ感染のなかで、いかに生き延びるか上橋氏の熱いメッセージが記されている。
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鹿の王、凄く良かった印象が残ってたので、読んでみた。
架空の国名、あまり聞き慣れない名前が、頭に入りにくく、ちょっと読みづらかった。
もしかして老化のせいか…
全ての部分を理解できたとしても、全体を理解できるかどうかはわからない。
だからといって、分析的に見ることより、全体を俯瞰することに注力したから、全体の理解が促進できるということも言えない。
生命がなにか、ということを理解することは、困難なこと、ということだろうか。
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作者の頭…いや胸の中に今もなお眠る
膨大な量のストーリーを思うと
その膨大さに目が眩む。
ファンタジーは
一切の現実に縛られることのない
それゆえに 依拠するべき価値観すらも
作者の手に委ねられる難しいジャンルだと思う。
散文によるすべての芸術の中で
ファンタジーだけは何もかもが作者から生まれる。
上橋菜穂子さんが生み出したものは
すべて上橋菜穂子さんの中からのみ
生まれいづるものであることに 畏怖すら覚える。
今作も 何ひとつ現実には繋がらない物語の
どこを探してもほつれ一つなく
構築された世界観に もはや言葉も出なかった。
「水底の橋」という副題が これほどまでに
体現された物語であることに
読み終えて 本を閉じ 表紙を見返すまでは
恥ずかしながら気づきすらしなかった。
ホッサルとミラルの予想だにしなかった未来にも
唸らされた。凄い。
まだ終わらないでほしい。もっと読みたい。
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文庫版著者あとがきや文庫版解説のように、いまのコロナ禍になぞらえて読むもよしだが、単純にミステリーとしても読むもまたよし。
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架空の世界で繰り広げられる、病との闘いと権力争い、「鹿の王」のその後の物語。
独特の世界観の中で、現代の世界の問題を鋭く描いた作品だと感じました。
一つは生と死をテーマに病との闘いが描かれており、コロナウイルスとの闘いを思わずにはいられません。
そしてもう一つの権力争いでは、現代の世界の2大国の争いを想像してしまいます。
その中で一人一人の登場人物が生き生きと描かれ、人の思いが熱く伝わってきました。
さらに、医術の対立も描かれ、すべてはバランスが大切なのではないかと改めて感じました。
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今の世の中に刺さる本
定期的に読んで、世界と日本と自分の現状を見つめ直したい
生と死の価値観は人によって異なるが、環境に影響されるのがやっぱり大きい…
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上橋菜穂子の物語は、文庫本になった時に、いつも「この物語は今日のことを予見していたのか」ということが起きる。
「精霊の守り人シリーズ」の文庫本の最終巻が出る直前に3.11が起こり、山津波にのまれてゆく王国は、津波にのまれてゆく東北の姿に重なった。文庫本「獣の奏者4」が出る頃は、最終兵器王獣をどう扱うかが、原発再稼働に揺れる日本(2012年)と重なった。そして世界ではISが台頭し軍事的制裁の意味が世界的に問われた。「鹿の王」文庫化の時は、著者のお母さんの闘病と死亡の後に発刊され、命の意味を我々に問いかけた。そして図らずも、この本の文庫化の時には、100年ぶりの世界的パンデミックの最中だった。全て本編を描いていた頃には、想像だにしていなかったであろう事である。
ファンタジーであろうと、いや、ファンタジーであるからこそ、上橋菜穂子作品は社会の核心を突いて未来を予見するのだろう。
2020年3月28日に「文庫版あとがき 私たちはいま、歴史を作っている」を書いた著者は、日本が最悪の事態に陥った場合のことを心配している。感染症について、玄人はだしの知識を持っている著者の心配は充分根拠あるものだったが、専門家の誰もがわからない「要因X」によって今のところ医療崩壊は起きていない。
「感染症は社会的な病である」と著者は喝破する。だから、この「鹿の王」スピンオフでは感染症はテーマに選ばなかった、と著者は言う。話が大ごとになりすぎるからである。パンデミックを経験した我々には、十分に肯けることだ。その代わり、ここでは一つの食中毒症状が、次期皇帝争いにまで影響を及ぼす。一つの病が、貴賤関係なく人の人生に大きく影響を及ぼすのだから、社会的なインパクトを持ってドロドロとした権謀術数に利用されるのも仕方ないのかな、と思う。お陰で今までになくミステリな作品になった。
ミステリと同時に、医学の進歩と命の尊さについての重要な「哲学的な問答」が、全編にわたり為されるのであるが、ここで要約するのは到底できない。是非読んでほしい。
最後。主人公ホッサルの恋人ミラルの笑顔が、ミステリとしては意外なラストであり、哲学的には救いだった。
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8月全然読めてなかった…。
久しぶりのファンタジー!上橋菜穂子さん!
鹿の王、あんまり覚えてないけど大丈夫かなと思いながら読み始めたけど、全然問題なかった〜!最初は苦労する人名や地名も、気づいたら自然と読めるようになってるから不思議。
ホッサルとミラルの2人の、その先を思わせる終わり方でよかったな。お互いになくてはならない存在なんだなあ。
後書きも解説もこのご時世をすごく反映していて、何年も後に読み返すことがあったら、私はこの時をどう思い出すのか、気になる。だから、どれくらい後かわからないけど、またいつか読みたい。