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・CND:調整・根回し・段取り
■担当役員をすっ飛ばしてトップとダイレクトにつなげる
KYな人間をうまく活用した事例としては、日産自動車のクロスファンクショナルチーム(CFT)が参考になる。
カルロス・ゴーンさんが一九九九年に日産に来たとき、部門の垣根を取り払ったCFTをつくって問題解決をはかったことは知られているが、CFTが最初から機能したわけではない。大きな組織なだけに、部分最適のセクショナリズムが横行していて、一つのCFTに八人ぐらい各部門から集まってくるのだが、それぞれ部門の利益代表という意識が強く、部門同士の罵り合いから始まったそうだ。
では、どうやってそれを機能するようにしたかというと、一つには、たとえば生産に係るCFTのレポートを生産担当役員に提出する、ダイレクトにエグゼクティブコミッティに提出するようにしたのである。要するに、担当役員も部分最適になっているから、それをすっ飛ばしてトップに直にレポートを上げるようにしたため、担当役員から槍が入るのを防ぐことができ、風通しがよくなって、わりと何でも言いたいことが言える体制ができたのだ。
また、ゴーンさん本人の働きかけも強かった。CFTのメンバーを集めて、とにかこのチームの働きが重要だと熱く語り、なかには本当に涙を流す人もいたそうだ。トップの継続的なコミットメントほど、現場のチームを勇気づけるものはない。
もう一つは、メンバーの年齢である。全員四十代の課長クラス。二十代、三十代だとまだ全体を見るだけの経験が足りない。かといって五十代の部長クラスになると、あちこちにしがらみがあって身動きが取りにくいし、十年先、二十年先のことはあま真剣に考えられない。その意味で、四十代というのはちょうどいい年齢なのである。
部門内で同化現象が起きるのは避けられない。研究開発部門の中で同化が起こり、製造部門の中で同化が起こり、販売部門の中で同化が起こるだから、日産は部門横断的なCFTを仕組みとして導入したわけだが、それと同じことが会社全体でも求められている。
■毅然とした態度で在庫を燃やす
良品計画名誉顧問の松井忠三さんには、パート3の対談でも登場していただくか、在庫の話が強烈に印象に残っている。
松井さんが二〇〇一年に社長に就任したとき、良品計画は三十八億円もの赤字を計上した。これをなんとかしなければいけないという状況で、松井さんは象徴的なことをいくつかやっている。そのうちの一つが、売れ残りの在庫の山を全部かき集めて、社員の目の前で燃やしたのだ。在庫といっても、デザイナーにしてみたら、自分が手がけた作品を目の前で燃やされたわけだから、涙を流す人もいたそうだ。普通に考えれば、赤字でお金がない状況だし、セールをすればいくばくかの現金になる。それを一切認めず、中途半端なことはしないということを、在庫を燃やすことで社員全員にわからせた。
それまではマーチャンダイザーが欠品を嫌って多めに発注したりして、いろいろムダがあったのだが、そういうのはダメだ、認めないということを身をもって示したわけだ。しかも、一度ならず、二度同じことを��た。それでようやく会社の体質が変わったのである。
結果的に、二〇〇〇年に五十五億ぐらいあった在庫が、数年後には三分の一の十七億円まで減った。荒療治だが、印象は強烈だ。嫌われる覚悟がなければ、とてもできないことである。
松井 サラリーマンですから、やっぱり上から怒られるのは嫌なんです。出世にも響くでしょう。そうすると、みんな上を見て仕事をするようになる。だから、僕の二冊目の本「無印良品の、人の育て方」(角川書店、二〇一四年)には「いいサラリーマンは、会社を滅ぼす」というサブタイトルがついている。そうやって根回ししながら上を見て動き回る人が出世する会社だった。上手に根回しする人と、上手に提案書を書く人が出世するという文化でした。そういう政治力学を変えていかないと、会社として健全な会社には絶対になりません。
当時、部長以上が三〇〇人いたので、その人たちを対象に、アメリカで開発された「センシティビティトレーニング」というきわめてハードな意識改革研修をやりました。ところが、この研修で意識が変わることはありませんでした。意識というのは、根強く残っている会社の価値観ですから、これを変えるにはエネルギーが要る。結論からいうと、意識は行動を変えないと変わりません。意識を変えてから行動が変わるのではなく、行動を変えることで意識を変えるのです。この順番は逆ではいけない。
行動は日々の政策で変えていくしかない。日々の政策で変えていって、ようやくこれに納得してくると意識が変わってくる。したがって、意識改革運動は最初には絶対できない。当時の西友の間違いは、意識改革運動を最初に持ってきたことでした。僕は先兵で頼まれてやりましたから、ダメだということがよくわかるんです。
たとえば、月曜日の午前中に営業会議が行われる。いちばん大事な会議です。ここで決まったことを、午後から部会で、部長が部員にかみ砕いて説明し、さらに自分の方針を加えて今週の作戦を考える。ところが、営業会議で決まった内容を部会で伝える段階で、伝わる内容が半分以下になってしまう。部長が自分の興味あることしか伝えないからです。
部会で部長がそんなことをやってもらっても困る。だから、営業会議が終わると、本社の全社員のパソコンに情報が流れる仕組みになっています。四つの頭文字をとって「DINA」と呼んでいますが、この画面を見れば、「締め切り(Dead line)」と「指示(Instruction)」と「連絡(Notice)」と「議事録(Agenda)」が全部見られるようになっているわけです。これを閲覧した人のところには○がつくようになっていて、部員全員が見たら、部のところに○がつく。×がついているということは、まだ見ていない人がいるということなので、部門長は誰が見ていないかをチェックして、その人に見るように指示を出す。こうしておくと、営業会議で決まった内容を部長がわざわざ伝える必要はなくなります。会議終了後、三十分ぐらいすると見られるようになっているので、上から下まで直接コミュニケーションする形に近づいて、五合目社員や粘土層の問題は発生しなくなるわけです。
木村 いわゆるポジションでマネジメントするのはもう機能しなくなっていますよね。
松井 そうです。そうすると、みんなが納得してくれるようなことをきちんとやる人、行動で示してくれる人。カリスマ的な人望はなくても、普段の言動が正しくて、信念がブレない人。要するに、どこにでもいる市井の人。ただ、チームをまとめる力だけはしっかりもっていて、基本を疎かにしない人。そういう人が大事で、そこに個性が乗ってきます。したがって、経営のスタイルは個性の数だけあるんです。でも、昔のように、一将功成りてというか、ガツガツやっていくだけの人たちがリーダーでうまくやれるかというと、決してそんなことはない。そんな時代ではないということです。
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ブライアントスキル=ロジシンや会計知識など→わかってもらうスキル
ダークサイドスキル=組織の中での立ち回り→動いてもらうスキル
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題のイメージとは違い、中間管理職の考え方を論じている。
読んでみて、自分には得たものが多い。
ただ気になるのは、良品計画の元代表、松井忠三さんとの対談が要らない様に感じる。その内容が素晴らしいからこそ、本論の主張を邪魔している様に思う。
でも、良い知見を得られたので、星5つ。
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今求められるミドルエイジリーダーの資質を
紹介している。
トップと現場のどちらも見えるからこその動きかたがある。
いわゆる中間管理職の大変さが増していると感じた。
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官僚的な組織を前提に読むと、立ち振る舞いなど改められる。冨山さんのCXと重ねると、より理解が深まる。
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ダークではない。大半、普通の大人の仕事の仕方。在庫を燃やす、みたいな話はおもしろい。極端にやれ、徹底的にやれ、ってことで。