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タイトルからも想像できるけど、2作の物語が収録されている。
「ぼくの父さん」では、小学校3年生のひかるが主人公。ぼくのお父さんは市の清掃の仕事をしている。台風の日も雪の日も、カラスにつつかれてちらばったゴミも、残さず集めます。夏には清掃車がとても臭くなるけど、お父さんは`大変だ`何で文句も言わない。朝が早いから、帰りも早いお父さんは、夕方、学校帰りのぼくと出会う事がある。そんな時、ぼくは嬉しい。お父さんと一緒に駄菓子屋でアイスを買って食べたりする。だけど、最近、そういうところを同級生に見られたくない、恥ずかしいと思うようになった。同じクラスのいじめっ子のバクダンが、お父さんのことをゴミや、ぼくの事をゴミ屋の息子だとからかってきたからだ。
仕事のこと、お父さんとの絆、そしてぼくの成長が感じられる物語。
「わたしのおかあちゃん」では、4年生のわたしと、幼稚園生の弟と、おかあちゃんの家族の物語。おかあちゃんは居酒屋で働いている。以前はスーパーだったけど、今はもっと給料のいい居酒屋に変わったのだ。夕飯時に慌ただしく帰ってきて、わたしと弟と一緒に1時間だけ過ごして、また仕事に行く。おかあちゃんがいるときは、姉弟でおかあちゃんの取り合いになるけれど、大抵はまだ小さな弟に軍配が上がる。でも、わたしも心の中では、おかあちゃんがいないときは自分がおかあちゃんの代わりだと思っている、幸せな家族だ。でも最近、私には気になる事がある。おかあちゃんのお店の店長さんは休み時間を便宜してくれたいい人なのだとか、おかあちゃんが店長さんを何かと推してくるのだ。おまけに、3人で動物園へ行く予定だったのに、その時のお弁当を店長さんが持ってきてくれるとか言うのだ。3人で水入らずのはずが、なぜ店長さんも来る?しかも、直前までおかあちゃんはそのことを隠していた。
死んでしまったお父ちゃんのことも忘れてはいない、子供たちを第一に考えて大切にしてくれる、生活のためにお給料のいい居酒屋で働いているおかあちゃん。そして、店長さんもいい人なのだ。おかあちゃんを支えてくれるし、私と弟の気持ちも尊重してくれる。
作者による後書きによると、この2作品は、小学生の詩から生まれた物語とのこと。その詩も収録してくれても良かったのでは?