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日本を代表するSF作家・小松左京(1931~2011年)氏の最大のベストセラー。1973年に光文社カッパノベルズから刊行され、同年末までに上下累計で300万部以上が売れ、社会現象とまでなったことは周知の通りである。
本作品は、太平洋戦争中の「一億総玉砕」という空気に違和感を持っていた著者が、「では、日本という国がなくなったら、日本人はどうするのか? また、国を無くすことによって、日本人とはなにか、日本文化とはなにか、そもそも民族とは何か、国家とは何かということを考えることができるのではないか?」というテーマを考えついたことがきっかけで、「日本列島の沈没」というのは、1960年代後半に広く認知され始めたプレートテクトニクス理論を使って、日本の消滅をよりリアルに描くための舞台設定であったという。そのため、著者には、難民となって世界中に散っていった日本人の行く末を描く第二部の構想があり、本作品の最後には「第一部 完」と記されている。(尚、第二部は、2006年のリメイク版映画に合わせて、谷甲州氏との共著という形で出版された)
ベストセラーとなった背景には、衝撃的な舞台設定に加えて、1970年の大阪万博に象徴される、高度経済成長期に日本を覆っていた「バラ色の未来」という風潮に対するアンチテーゼであったこともあるという。
出版後半世紀の間に、国内外の状況は大きく変化し、不幸にも数百年に一度という大きな震災を被り、また、公式に「相模トラフ沿いで、マグニチュード7程度の地震が、今後30年以内に起こる確率は70%程度」と推定されている今、年代・立場によって様々な読み方ができる作品なのだと思う。
尚、全体の構成は以下の通りである。<上巻>第1章:日本海溝、第2章:東京、第3章:政府、第4章:日本列島、<下巻>第5章:沈み行く国、第6章:日本沈没、エピローグ・竜の死。
【以下、上巻について】
科学者たちによるプレートテクトニクス理論に基づく日本沈没の可能性の発見、その情報を入手した日本政府の動き、列島各地で発生し始めた日本沈没の兆候現象などについて描かれる。
「バラ色の未来」に疑問を抱いていなかった社会に、突如として突き付けられた「日本消滅の危機」。。。そのとき、科学者、政治家、我々一般国民は、何を感じ、どう動くのか。。。
(2021年1月了)
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リアリティがあり、ただ被災するだけではなく、全日本人が難民になるというスケール感のあるストーリーだった。
ただ、男尊女卑な箇所も見受けられ、時代の流れもあるがやや違和感が残った。
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劉慈欣が影響を受けた作家の一人、小松左京の代表作。1973年3月の作品です。
日本が晒されている危機の正体、題名通り「日本沈没」なんですが、その一言を中々言わない田所博士にじらされます。自然災害を多く経験してきた日本の国民には、災害の度に面目一新し進んでいくというある種の楽観主義が培われているという考察は合点がいきました。
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読んだ本 日本沈没(上)小松左京 20230326
これは、昔映画を観たきりだったんですが、改めて手に取ってみました。映画では、藤岡弘が主役だったと思いますが、遠い記憶でエレベーターに閉じ込められて、やっと扉をこじ開けたら、高層ビルが崩れかけてて宙吊りだったってシーンを鮮明に覚えています。後、断層に見立てた新聞紙にブスブス穴を空けて破くシーン。パニック映画仕立てでしたよね。
小説では、地球物理学っていうんですかね。結構緻密な理論が展開されていて、読み応えがありますね。50年前に書かれたとは思えない。言い換えると、地震のメカニズム解明ってこの頃からあまり進んでないってことですかね。
私の書いた海竜でも、地震を舞台設定にしていますが、とにかく分かりやすくというのを意識して書きました。そのメカニズムが様々な現象を生じさせるために、理解してもらうのが前提だと思ったからです。だから素人に教えるシーンを作ったんですが。
でも、日本沈没を読んでみると、読者に媚びることなく理論を展開していて、圧巻ですね。この頃の知的水準って、ひょっとして今より高かったのかもしれませんね。
今のところ、映画とはギャップを感じる内容ですが、下巻でどうなるのか。楽しみです。
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内容が難しい、、、
けど、災害が起こった時の臨場感や悲惨さはひしひしと伝わってくる
これからの展開どうなるんだろう、、
日本の未来は??
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★評価は読了後に。
何となく敬遠してきたこの作家でして、初読。
いや、濃厚です、敬遠してきたのは損でしたね。
しかし阪神・淡路、東日本、そして能登の一連の出来事を見ていると、「想定以上」のことを自然は軽く超えてくる。
人間の想定はその程度のことなのか、それとも日本に住む人間に想像力が足りないのか、この小説を読んでいると考えてしまいますわ。
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冒頭の潜水艦の描写、緊迫した政治的なやり取りの数々、科学的な考証のわかりやすさで、ぐいぐい読ませてくれます。
大地震の描写にいたっては、よくもここまでリアルに考えられたなぁ、と作者のシミュレーション力、想像力に感服しました。