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ル・グウィンの短編集、印象に残ったのは次の二つの短編「九つのいのち」(原題:Nine Lives)、「帝国よりも大きくゆるやかに」(原題:Vaster than Empires and More Slow)
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Ursula K. Le Guin; The Winds Twelve Quarters (1975)
オメラスから歩み去る人々; The Ones Who Walk Away from Omelas
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10年間に書いたものをほぼ発表順に収録した短編集。
17編も収録されており、読みごたえはかなりある。
解説が非常に的を射ていて、
『これらが何の説明・先入観もなく雑誌に載ったとしたら
はっきりいって、文句のない完結性を備えた短篇はほんの数篇』
だが
『各短篇が”アーシュラ・K・ル・グィン”という大長篇の部分を切り取った』
ものであるという表現が適切。
正直、彼女の世界観がとても好きな自分でさえ
受け付けられない部分や、理解し辛い部分があった。
短編としてその作品だけ読むには表現しきれておらず不完全な物が幾編かある。
ただ、こうしてまとめて読むことで多少なりともそれが緩和され、
ル・グィンという世界の空気感を味わうことが出来る。
個人的にはゲドの2巻の、あの陰鬱とした暗く混沌とした、
それでいてどこか美麗さを感じるあの雰囲気を
増幅したように感じる文章だった。
ファンタジーとしてとても素晴らしいし、発想もまた秀逸。
私は、『冬の王』『九つのいのち』『帝国よりも大きくゆるやかに』
が特に好きだった。
冬の王では、退位させること・させないことのどちらが陰謀なのか
どちらとも考えられることに気付いたとき、さりげない空恐ろしさを感じた。
帝国~ではエンパスの描き方に興味を恐怖を掻き立てられた。
クローン実験について一家言あるつもりの自分は
九つのいのちの
「君は自分にむかって、おやすみを言うか?」
という言葉が胸に突き刺さった。
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「革命前夜」のみ再読。
「所有せざる人々」作中において無政府主義社会の革命論を打ち立てた偉大なる先駆者だったオドーですが、この短編ではひとりの血肉の通った女性として登場します。
ル・グィンの長編と短編はセットで読んでこそ味わいが増すのだなぁとしみじみ。
ル・グィンの世界には革命家はいても神も英雄も存在しない、という解説はなるほどと思いました。
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短編集。ル・グィンが書いたファンタジーおよびSF短編、計十七篇を集めた本。中には、ゲド戦記や闇の左手、所有せざる人々、ロカノンの世界など、ほかの長編のもとになった短編がちらほら混じっていて、ファンには嬉しい一冊。
抽象的すぎたり、文章が固くてとっつきにくい作品も、なかには若干混じっているのですが、同時に、胸をうった印象深い作品も、何本もありました。クローンを描いた「九つのいのち」、エンパシー能力をもっているせいでたえず他人の悪意にさらされつづける青年を描いた「帝国よりも大きくゆるやかに」、火星の表面に何者かが残した施設によって、常人とは異なる視野を手に入れてしまった宇宙飛行士を描いた「視野」。読んでよかったー。
ル・グィンのSFに、すっかりはまりつつあるのですが、すでに国内では手に入れにくい本、あるいは未翻訳の本もけっこうあって……ぐぐっ。
いつ続きが翻訳されるかわからない海外小説を、しばしば自力でがんばって原書を読む、気合のはいった友達がいて、見習いたいなあという気持ちだけが、いつもココロのどこかにります。しかし本気で真似する根性がありません。語学だめなんだ……
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「もの」「記憶への旅」「オメラスから歩み去る人々」など興味深い物語はあったが
基本的に終わり方がグッと来ない。尻すぼみ型?
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まず「ゲド戦記」を高校の図書室で読んで、だいぶしてから「闇の左手」を。そして本作、神保町で探した「コンパス・ローズ」。うすうす思っていたけど、「夜の言葉」を読んで、ああこの人はすごく真面目な人だ、真摯な人だ、と痛感。それが時につまらなさにつながることもあるのだが、基本的には面白いです。この短編集は、「オメラスから歩み去る人々」「九つのいのち」「地底の星」「セリムの首飾り」「冬の王」など、読み応えあるのがずらりですので、楽しく読めると思います。SFやファンタジーといった物語の問題、ジェンダーの問題なんかにも、とても意識的な人ですよね。
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「四月は巴里」は皆が必要とされる関係になって温かく終わり、良い気分。「暗闇の箱」は元ネタの作者の息子のエピソードが秀逸。「帝国よりも大きくゆるやかに」では圧倒的な「他者」が存在することへの恐怖を描き、その他者が植物であるってとこがルグウィンらしいのかもしれない。
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<オメラスから歩み去る人々(短編)>M・サンデル教授著『これから「正義」の話をしよう』でも取り上げられていた、この「オメラスから歩み去る人々」。オメラスという幸福な都市のその幸福は、たった一人の子どもの犠牲の上に成り立つものだった。ほとんどの人がそれを享受する中、オメラスを去る人々が・・・ さあ、あなたならどうする?
鹿児島大学 : ササニシキ
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「オメラスから歩み去る人々」は色々と考えさせられる。私たちの幸せは他人の不幸によって保障されている、これは意識しないようにしているがじじつであろう。
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ハヤカワ文庫2014年復刊フェア書目。
『ゲド戦記』で有名なル=グウィンの短篇集。但しハヤカワではル・グィン表記。
若い頃に何冊か読んだ記憶があるが、本作は未読だと思う。長篇の元になった短篇あり、それだけで完結しているものあり、作風のバリエーションも広く、面白かった。
初期の短篇を発表年代順に並べたもので、各短篇の冒頭には序文がついている。序文の長さは様々だが、作品を書くきっかけになった出来事や、簡単な解説になっていて、こちらも興味深い。
自分でも理由はよく解らないのだが、不思議なことに、ル=グウィンとタニス・リーがだいたい同じカテゴリにいて、何か共通点があるようにずっと感じている。考えてみたがやっぱりよく解らない……どちらも女性でファンタジーを書いている、とかそういうことじゃないのだけは確かだw
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本書は、著者がデビューした1960年頃から1975年頃までの軌跡が概観できる短篇集です。全17篇。
読んでいて真っ先に感じたことは、この作風、コードウェイナー・スミスやジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、あるいはハーラン・エリスンの作品を読んでいるときの感覚に似ているということ。それは、読者を置いてけぼりにして勝手に物語が進んでしまっているということ。意味のわからない言葉が出てきても、何の解説もなし。時には脈絡もなく、情景や描写が一転していることもあり、何度も読み返すことに…笑 しかし、作品を読み終えた後には、何となく物語を理解できていて、だからこそ、この作風には魅力を感じるのです。
さて、肝心の内容はというと、これが総じて面白い。特に「冬の王」以降の作品は読み応えが抜群。「九つのいのち」、「もの」、「帝国よりも大きくゆるやかに」、「地底の星」、「視野」、「相対性」、「オメラスから歩み去る人々」、「革命前夜」といった作品はどれも優劣つけがたい傑作ばかりです。
作品のなかでも「九つのいのち」や「もの」、「地底の星」といった作品は、情感に訴える作品で、どこかヒューマニズム的な側面も感じるのですが、全作品を通じてとにかくドライな筆致を感じます。そして、「冬の王」以降は、このドライさが研ぎ澄まされている感があります。
解説で安田氏が「”神”あるいは”人間を越える超次の存在””絶対者”なる概念は完全に欠落しているのだ」と語るところが、もしかしたらドライさを感じる要因なのかもしれません。安田氏の言葉を踏襲すると、本書では、そういう”神”あるいは”絶対者”による救済が見受けられません(「視野」のラストでは、そのような存在が登場しますが、ヒューズがこの存在を拒否したことからも、肯定的には描かれていないと思います)。「現実なんて、そんな都合よく都合のいい存在に救われたりしないんだよ。それは物語でも同じ。良くないことをすれば良くないことが起こるし、希望をもてば良いことがあるかもしれない」…なんてドライな言葉を著者が発しているような気がしつつ、本書を読み進めていたところ、「革命前夜」のなかで「希望以外に何もないがゆえに希望を喰いつぶして生涯をすごしてくると、勝利に対する味覚を失ってしまうものだ。真に勝利の実感を味わうためには、真の絶望という前菜がなくてはならない」という一節に出会い、思わず苦笑。辛いなぁ。
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ファンタジー、サイコミス(というのか?)風味のものなどさまざま。どれもSF味がちょうどよくて、作品の世界にすぐ入り込めた。普遍的な問いをSF仕立てにしたようなものが多い。人間と人工知能の違いとは何かを考えるとき、「九つのいのち」ほど適切な小説はないんじゃないかと思う。「視野」はまさに我々の視野の不思議さ、視野という枠がある故に不可能であるものの見方について。ハムレットの下りははっとさせられた。
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オメラスから歩み去る人々、のために借りた。
タイトルになってるくらいだから主題は歩み去る人々なんだろうけれど、とらわれている子供を救うでもなく歩み去る人々はどこへ行くのか?
中央図書館Bル
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文化人類学的SFの泰斗、ル・グィンの短編集。初期の作品をほぼ発表順に収録しており、作家本人に寄る解説もそれぞれに添えられていて、ある意味贅沢な短編集です。
これ、鴨は10代の頃に旧版を読んでおりまして、ファンタジー系の「解放の呪文」「名前の掟」はいまでも覚えております。子供の頃は「ファンタジーなのに暗い話だなぁ」と感じた記憶が残っております。底の浅い子供時代だったなぁヽ( ´ー`)ノ
この歳になって改めて読んで、短編としての評価は難しい作品が多いな、と思います。といっても読む価値がないかと言うと全然そんなことはなく、要はル・グィン作品の「分厚さ」を理解できるようになったこの歳にして、短編だけでは世界観が完結しないのがル・グィンなんだなー、と肌感覚でわかった、ということかと。
直球のファンタジーや、SFの名を借りた寓話も多数納められていますが、意外とエッジィでパンチの効いたSFもあって、鴨的には新鮮でした。「九つのいのち」「帝国よりも大きくゆるやかに」あたりは、ティプトリー作品と並べて読書会の課題に出したいぐらい。
どの作品も、「誰でもすぐわかる明快な結末」はありません。読者なりに努力して消化しないと読み切れない物語ばかりです。そういう意味で、万人にお勧めできる本ではありませんが、ある程度こなれたSF者には肩幅を広げるためにもぜひ挑戦していただきたいですね。