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火の鳥・大地編。
火の鳥の新能力が物語の核になっていくのは、この設定を作った以上仕方ないのだ、と思って読み進めていましたが、そんな原理主義なんてこだわらなくてもいいじゃないか、というぐらいに読み進む速さが衰えずに最後まで読めました。
火の鳥の力と権力に取り憑かれた人々と、人間の意思を信じぬく人たちの戦い。何度も理想の答えを求めてリセットする世界を経験してゆくうちに、なすべきことは何かをそれぞれが探し求め理解していく様。大きな力に逆らうことはできずとも、時代の流れを良い方向に変えて行くことはできるのではないか、それは自分一人ではなく、この生きている時代だけでなすことでなく、もっと多くの人間が集まって大きな力に対抗するべきじゃないか、というテーマは含まれていたように思います。
そして、どこまでも自分の欲望と意志の葛藤に苛まれてしまう猿田は悲しい。彼の業は、どの時代でもなくなることはなく、その時代の結末を見届ける役割を任されてしまう。それぞれの火の鳥の登場人物の全てを背負って、生き続けてゆく猿田は全編通しての語り部であり、主人公であ流のだな、と思います。
うまくいえてる感じはないのだけど、冒険譚であるワクワクと、人一人がなすべきことを任された時の覚悟と、踏み躙ろうとする暴虐。それらをひっくるめて流れ続ける大きな流れの壮大さと残酷さは、十分に読むことができました。
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20210322-0324図
下巻読了。
火の鳥の力で、最初は過ちを訂正する為に時を戻していたけど、戦争の勝敗を軸にいつしか富と名声と権力の私利私欲にまみれた欲で時を戻す様になる
延々と時を戻すこと17回。17回目の世界に
「ああ、なるほどな」と思いました。
結末は気分が良くなるものではなかったけど
面白かったです。最終章で人の弱さと強さを突きつけられました
これは『大地編』となっているけど、他のエピソードへと続くのだろうか?
日本の歴史、特に近代史に興味が湧きました
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面白かった……!強さと弱さ、意志を書くのが本当に上手だな……麗奈への緑郎の思いが分かるところ(語られてないけど、俯くところとか)しんみりしてしまった。あとヨシコちゃん!!
何が理由で生きても死んでも、どんな権力者でも、命と死は平等で皆同じで、強さと弱さは本当に一人一人違うんだな……緑郎と麗奈が好きです。
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初読。図書館。戦争の時代を描きながらそこにある人間を描くことは容易ではないだろう。多方面から重箱の隅をつつくような揚げ足をとられ、作品の本質が追いやられてしまうことが想像される。戦争の時代を何度もタイムリープするという設定で類似した描写を繰り返すことが、不思議な効果を生んでいる。歴史的事実への冷徹さというか、無力感というか。だからこそ余計に登場人物たちの業の深さが哀れでもある。火の鳥を8月6日の広島に運んだラストには驚愕した。
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火の鳥の力は、手にしてしまうと持ち主の心を掻き乱す。
過去をやり直せる、それはきっと抗い難い魅力なのだろう。
だから、ある者は求め、ある者は捨てようとした。
しかし、誰が大いなる力を簡単に捨てられようか!
自分がこうありたい、そう願った未来を作り出せるのに!
私が幸せなら、他の誰かがどこか遠いところで家族を失っても、命を落としても、構わない!
ああ、それが許されるのか?!
私は正しく生きていたいと望んだのに、かくも弱かったか!
本書に登場する者たちは誰もがそんな苦しみを、悲しみを、弱さを抱えている。
三田村財閥がどんな手を使ったとしても、緑郎が野心にまみれていたとしても、ルイや芳子がかつての王国を取り戻そうとしても、それは、どこかで納得し、理解できてしまう行動ではないか?
上巻では奔放な悪女とみえた麗奈の悲しみも、敵味方不明な猿田博士の行動も、ただひたすらに幸せになりたいというたった一つの想いから始まっている。
だとすれば、本当の悪は火の鳥ではないか?
この鳥さえいなければ誰も苦しまなかったはずなのに。
幼い頃漫画を読んだ時から思っていた。
火の鳥がそもそもこんなにも弱い人間の元に現れなければよかったんじゃないか、と。
だが、おそらくそれはそういうことではないのだ。
火の鳥はあくまでもきっかけに過ぎない。
争い難い力の前で、あなたはそこからどうするの、と火の鳥(作者)は問いかけている。
私たちは失敗から学ぶ。
でも1人ができることは多くはない。
だから代わりに作者は示す。
こうしたらこうなる、だから、正しいと思う方を、と。
そんなメッセージを受け取りつつ、純粋に私は本書を読めたことが嬉しい。
これこそ手塚、これこそ、桜庭一樹、これこそが、物語、小説!
乱世編から始まった私の『火の鳥』は何度でも繰り返しやってくるだろう。
そして過去には戻れなくても何度も私の間違いを正すだろう。
火の鳥!それは、きっと、私自身なのだ。
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火の鳥がもたらすものは「罰」、それも人間の内面にある「欲」を増幅させ「醜さ」を露わにするもの、だからこそ人の持つ「やさしさ」や「すがすがしさ」が際立つ物語。
それは「生命とは」を描く手塚治虫の『火の鳥』の一貫したテーマの一つであった。
おそらく、賛否両論だろう。セリフ回しは大げさで舞台のナレーションのような説明色の強い文章は好き嫌いがあり、まるで映画のようなコマ割りの漫画『火の鳥』を新たな物語で小説化するのは無理があるかもしれないが、江戸川乱歩の冒険小説のようだと思えば、昭和の雰囲気になる。好き嫌いのでる緑郎(ロック)のキャラも、私は手塚漫画らしいと思う。
なにより『火の鳥』がまた読めることがとても嬉しい。
激動の昭和初期を生き抜く人々の群像劇の舞台で、手塚治虫の作ったキャラクターが歴史上の人物と共演する。
猿田博士、緑郎、正人のほか、冒頭の人物紹介画では手塚漫画でお馴染みのキャラが登場し、拍手喝采!
もう一つの物語
1900年の遺跡発掘と女性ミイラの発見から、一躍有名となった「彷徨える湖 ロプノール」と「消えた楼蘭王国」の物語は、ともすれば暗くギスギスした昭和史に、ほんの少しロマンの香りを添えてくれる。
劇中で三田村要造が「生命とは記憶だ」という……ならば「忘却」もまた「生命の定め」なのか……。
「私ならもっとすごい『火の鳥』が描ける」という人、チャレンジしてみてください……物語の記憶をつなぐために……。
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原作を冒涜する駄作。
あの名作と手塚治虫ならではの世界観のノベライズはやはり無理があるだろう。
セリフが漫画調なのでとても頭悪そうだし、説明風のため嘘臭い。
舞台化ならまだましかも。
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手塚治虫氏が書き遺したわずかばかりの「火の鳥」の構想原稿。これを基に、桜庭一樹氏が書き起こした小説「火の鳥 大地編」。桜庭氏が登場人物に、手塚氏の作品に登場するキャラクターをイメージして充てているのが嬉しい。(手塚プロダクション作画)
小説の方は、やはり「ラノベ感」が拭えない。マンガなら、これでいいのにと思う。文章にすると、ちょっと違うかな。
東条英機、山本五十六など実在の人物も登場する。そして日中戦争下の中国大陸を主な舞台に、火の鳥、タイムループ、核の火、楼蘭の美女をキーワードにして上手くまとめていると思う。
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素晴らしい「火の鳥」でした!ロックと麗奈さん、ロックと正人、川島芳子とルイくん、川島芳子とマリア、マリアと博士....... それぞれの関係性に胸が熱くなり、どう終わるんだろう?という期待を裏切らない、悲しくもあり切なくもあり、でも確かに未来へ.......という希望のある、なんとも心に残るエンディングでした。
ロックが最後に出会ったのはどろろでしょうか?
(話が逸れますが、ふくやま先生の「メルモちゃん」が大好きな私にとっては、どろろがロックについて行くという場面がかなり胸熱でした。)
ロックは他作品で不幸な終わりが多かったので、生存エンドで感無量でした...。
小説ですが、終始各場面が鮮やかな映像となって頭に入ってきて、味わったことの無い没入感で一気に読んでしまいました。
最初から最後まで、素晴らしい作品でした!
また、作者さまのあとがきもどこまでも謙虚で、感銘を受けました。
他の作品も読んでみたいと思います。
現代に、新たな「火の鳥」に出会えたことが本当に嬉しかったです。ぜひ読むことをオススメします。
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日中戦争期の大陸を舞台に描いた、歴史SF巨編。漫画家・手塚治虫が残した「火の鳥」続編の構想原稿に、作家・桜庭一樹が新しい命を吹き込む。
懸念していた通り、だんだん読むのが苦痛になった。一方、巻末にコクヨの400字詰め原稿用紙に書かれた手塚治虫直筆の「火の鳥 大地編」の構想が綴じ込まれていたのは興味深かった。
(D)
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火の鳥を小説にしたら、確かにこうなるかもというセリフや描写。初めは少しとっつきにくさがあったけど、後半から桜庭さんらしいノスタルジックな描写が漏れ出てハッとする。誰もが愛を探して、でも、少し上手くいかない。それでも前を向く。
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せっかく著名な歴史上の人物が出てきているのに、ちゃちな悪役にしかなってなくて残念。ストーリーが堂々めぐりで途中で飽きる。
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正直期待外れ。手塚の人気キャラを呼び水にしたが、あまり連関できてない。
作者が女性のせいか手塚にある色気や暴力性がなく、思想のぶつかり合いも生命の尊厳を問う仕掛けがやや弱い。
タイムリープで歴史の修正はありがちな素材だからキャラの掘り下げをしてほしかった。三田村の回想シーンが冗長すぎて、コミカルで幼稚に見えるのが難点。反戦意識で書いたのだろうが教科書で見かけるレベルの文士は登場させる必要があるのか?
戦局を資料を写してダラダラ描写した後半部も飽きたし、この著者ならもう少し踏み込んで書けたはず。残念だ。
脚本家に修正してもらってアニメ映画にしたほうがいいかも
読了しての結論。
回想を除けばスピード感があり、脇役に救いがある。
最終章でうまく纏めているが、間久部兄弟の泥くさい対立がもっとあればよかったかな。惜しい。
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楼蘭遺跡で明かされる、緑郎の義父・三田村要造の過去。そして探検隊メンバーはそれぞれの思惑を胸に抱き始める。
上下巻を通じて火の鳥そのものはほとんど登場せず、あくまで火の鳥の力をめぐる人間ドラマが中心。
要造が山本五十六の死に臨んだ時の言葉、「人間とは記憶だ」の通り、大事な人が記憶から消えてしまうことの悲しさとはかなさが描かれていて、切ないエンディングは、まさに火の鳥。
火の鳥はそれまでの原作にはない力を持っているが、さもありなんという内容で納得できる。(作者のインタビューによると、火の鳥は毎回新しい力を備えているので、新しく考えたとのこと)
ウイグルでの人権弾圧の報道を受けてのことと思われるが、満州国でも統制が強まり、憲兵による身分証、荷物の検査、イスラム教の礼拝と土葬の禁止、火葬の強制、再教育施設への収容などが実施される場面があり、胸が痛む。
以下はインタビューのメモ。
手塚治虫が遺したのはたった原稿用紙2枚と5行の構想だけだったが、それだけの原稿に必要なものは全部入っていると言い、そこから火の鳥や手塚キャラの分析と合わせてストーリーを組み立てていった。「それでも生きていく」という芯の部分に忠実でなくてはと意識したという。
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壮大さがない。
″火の鳥″ならではの不老不死や生命の尊さを感じない。ただのタイムリープものになっている。火の鳥が登場しなくても成立する物語。
もとは手塚治虫氏が残したたった1000文字程度の構想原稿(下巻巻末に収録)なので、落語の三題噺と同じと思っていいです。