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今ならよくある絵入り百科事典だが、江戸時代に自分の子供のために絵事典を作った人物がいた。その名は中村てき斎だ。商家の家に生まれたが、商売は合わず儒学の道に進んだ。
今ならインターネットを使って調べることができるが、江戸時代に絵入り百科事典を編纂するのは想像がつかない。
寛文6年(1666年)刊行された。よく売れたそうで、縮約版が出版されたり、元禄8年(1695年)と寛政元年(1789年)にそれぞれ増補版が出版された。明治時代になるまで重宝されるロングセラーだった。
子供向けとは言っても大人が読んでも十分役に立つので、大人の読者もいた。中には尾張徳川家の当主、本草学者、日本を訪れたドイツ人医師が読んでいた。お子さまの枠を越えた書物になった。
20巻14冊から構成されていて、森羅万象の事物を17部門に分けて説明した。
博物学者として有名な南方熊楠も「訓蒙図彙」にお世話になった1人だった。
色々な事物が載っているが、江戸時代の人には未知の生物だったものもある。その中にはワニもいる。上代の文献に登場するワニは、サメや鱶(フカ)と同じものと見なされていた。
絵を見るとぎょろっとした目、尖った歯、くちばしような口といったように今の時代のワニとは違っていたので、思わず「ワニッ」となった。
当時の人々が世の中の事物についてどうとらえていたの垣間見ることができて興味深いなあ。
こちらは、国立国会図書館デジタルコレクションで20巻見ることができる。いい時代だな。
訓蒙図彙 20巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)