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ホラーだけどミステリー社会派の物語
歴史と思想の隙間に忘れられた場所から
現代につながる
人と違うものが見える、滴原美和は
雪のなか不思議な道に迷い込む。
こちらを見つめる不可解な姿と視線、
その中で一点を見つめる老人を見つけるが
近付いても老人は美和に視線を向けない。
偶然ぶつかってしまい倒れた姿をみて
老人が死んでいる知る。
美和が偶然、老人の死体発見者に
なったところから話がはじまる。
老人の死を解明のするための警察は動くが、
土地の過去の歴史、隔離された人の歴史に
話は繋がっていく。
人の世界とは隔離された、忘れられた人と場所、
大多数の人々を守るために虐げられた人の
真実が解き明かされていく。
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前作から8年近くの時をへて2021年5月に出たばかりの、七重町シリーズ最新刊。
……といっても、わたしはSFマガジンを通じて、倉数茂さんを知ったばかりなわけだけど。
著者自身もインタビューで語っているように、今作は、「七重町シリーズ」とはいっても「仕切り直し」の1作で、滴原兄妹はやや背後に退いている。それでも美和はやはりこの世ならぬものを見てしまい、そこから物語がはじまる。
美和が第1発見者となった殺人事件を捜査するのが、主人公である盛岡県警の若手刑事、麻戸で、本作はテンポのいい警察小説になっている。地元警察とのめんどくさいやりとり、コンビを組む上司との確執、マスコミにリークされた責任を負わされての謹慎、など、いずれも「警察小説あるある」かもしれないけど好感の持てるリアルな主人公なので、入れこんで読める。
そして麻戸は、この謹慎期間中、事件に別角度から光を当てることを思いつき、その結果、思いがけない社会問題と葬り去られた過去の悲劇が浮上する。
“浮上する過去の歴史"というのがこの七重町シリーズのひとつの肝なのかな。前作『魔術師たちの秋』ではそこらへんが少しごちゃごちゃして印象に残りにくかったけれど、今作は主筋がくっきりと心に刻みこまれて、サイドストーリーである美和の体験もそこにきちんとからんでくるので、とてもよい。一気読みできて、しかも頭にくっきり残る本でした。
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決してつまらなかったわけじゃないんだけど、「その描写いる?」という部分も多かったかな。
主人公?の刑事・浩明の同僚である絵美。シングルマザーの女刑事ってことで結構深堀されてたけどそんなに感情移入できるわけでもないし設定がそこまで物語に活きてなかったような。
美和目線の話も、大間知家の闇や差別・迫害についての別視点を描いているんだろうけど、、美和の兄とかなんであんなに攻撃的なのか終始意味不明だったw
「人ならざるものを見てしまう」美和の能力も、そこまで必要だったのかな?という感想。
【追記】
読み終えてから知ったんだけどこれ「七重町シリーズ」っていうシリーズものなのか~
他のシリーズ知っていたらまたぜんぜん違う感想かも?
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本格的な社会派ミステリーと神秘的な幻想ホラー。
両者が巧みなバランスで作中に並存しつつ、互いの闇を照らし合う。
――この読み味、僕はとても好きです。
――綾辻行人
人ならざるものを見てしまう高校生の美和は、雪の中道に迷い、見知らぬ街に迷い込む。その一角に、割られた窓ガラス越しにじっとこちらを見ている男がいた。男は死体だった。
一方刑事の浩明は、死体発見の報を受け、現場に駆け付ける。被害者の斗南という男性は、数日間体の自由を奪われ、食事も与えられないという残虐な方法で殺されていた。浩明は同僚の絵美とともに斗南の過去を探るのだが、予想外の事実が浮かび上がり――。
『名もなき王国』の著者が放つ野心作!
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Twitterで著者の方のツイートが流れてきてホームを覗いてみたらちょうどこの本の発行にまつわるインタビュー記事が公開されていて、そこから興味を引かれて手に取った本。
https://note.com/poplar_bungei/n/n17be3b0f5a76
個人的に障害者差別について学ぶ必要を感じていたところ、この記事の中で著者の方がハンセン病にまつわる社会問題や津久井やまゆり園の事件について語られていて、それらがどのような形で作品に繋がるのだろう……と、そんな動機だったのでこの作者さんの本を読むのは初めて。
この作品は七重町を舞台としたシリーズの3作目とのこと。今回は然程目立たない滴原兄妹がそれまでのメイン登場人物だった、という点だけ把握できていれば問題なく読めた。けれど、読み終わる頃には前の2作も気になっていると思う。
一体この土地で何があったのか、兄の千秋は何を知っているのか……。
妹の美和のエピソードは前作までとの繋がりが深そうでやや流れを掴みづらいのだけれど、読んでいて引き込まれるのは美和の登場する場面が多かった。幻想的というか、少女の感性のフィルターを感じる描写が好きだなと思う。
美和は今作ではもうひとりの主人公という立ち位置でありながら話の本筋には絡んでこないのでどことなくぼんやりした印象を感じてしまうのだけれど、エピソードの端々に芯のしっかりした部分を感じられる。特に一番最後のエピソードで何らかの決意を感じられて印象深かった。前作までを知らないので何が起きているのかよくわからないのだけれど。でもあの一連のエピソードの幕の引き方はとても好き。
『忘れられたその場所で、』透明化されたその場所で、何があったのか詳細には語られない。
時間の流れや社会の変化、様々な人間の思惑が絡み合い、折り重なり、複雑な地層のように渾然一体となっていく。けれどそこには生きていた人がいて、生活があって、そのうちのごく一部を少女の見た幻覚を端緒に切り拓いて、覗き見る。そんな作品。
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岩手県の七重市(架空)で見つかった元ホームレスの男の遺体。体の自由を奪われ、食事も与えないまま、絞殺したという残虐な方法だった。色んな疑問がありながら、捜査は難航。そんな時、その男の過去を探るうちに意外な経歴が浮かび上がる。
読み終わった後が、気づいたのですが、この作品は続編だそうです。「黒揚羽の夏」「魔術師たちの秋」に次ぐ3作目ですが、単独としても、楽しめます。
ただし、登場する滴原兄妹の背景をより詳しく知りたい方には、1作目から読まれた方が良いかと思います。
何も知らずに読んだのですが、霊感のある妹と妹思いの兄がなぜそのような行動に至るのかといった背景が、あまり描かれず、主に警察の捜査を中心に描いています。
なので、ちょっとモヤモヤ感はありました。警察の捜査とちょっとずつ絡んでいくのですが、近すぎず遠からずといった位置付けなので、兄妹パートは必要かな?という疑問がちらほら浮かんでいました。
事件の方に着目すると、主人公は捜査一課では若手の浩明と女性刑事の絵美がコンビとなって捜査します。
捜査していくうちに様々なことが浮上し、それらが段々と線で結ばれていくので、その過程は読んでいて爽快でした。
様々なことの中で、重要な鍵を握るのが、ハンセン病や差別といった社会問題です。ちょっと前に発生した相模原での障害者による事件も扱いながら、被害者の過去に迫っていきます。
正直、ハンセン病といった言葉は聞いたことはありましたが、知らないことだらけで色々考えさせられました。
自分とは違う、普通とは違うというだけで、簡単に人を蹴落とすという行為に重い気持ちにもなりましたし、色んな人間の「闇」を垣間見たようで、憤りの気持ちにもなりました。
なぜ、車上暮らしだった被害者が、交通が不便の土地に住むようになったのか?
なぜ、残虐な方法で殺されたのか?
次々と事実が明らかになっていく先に見えてくる犯人の正体が、意外で衝撃でした。一つの殺人事件から犯人逮捕まで、背景となる要素が社会的で重厚だったので、読み応えがありました。
その分、兄妹の存在感がぼやけた感覚があったので、どんな背景が隠されているのか、前作品も読んでみたいと思います。
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いろいろな設定が空回り〜その設定、必要ですか?の連続。
社会派ミステリー&幻想ホラーね…
終わり方も唐突な感じ。
ハンセン病についてはとても勉強になりました…