電子書籍
本当に素晴らしい
2022/07/23 10:39
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投稿者:麺殿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一話一話が胸にしみ、こたえる。
その余韻が惜しくて、次の話に進めない。
医療関係へ進む若い人の必読書
紙の本
医師から見た患者たち、医師に大きな影響を与えた物語
2022/04/18 22:02
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投稿者:hiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
患者から影響を受けた医師たちの記事をまとめたオランダ発の1冊、数ページずつの内容ですが、それぞれは奥深く、患者の命に関わる内容が多く収録されている。読んでいるものにも深く考えさせるドラマとなっている。
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こちらの話を聞かず、冗談にも笑わず、冷たくて、偉そうで、サービス精神がなく、話は専門用語ばかりでわかりにくく、高い金を平然とした顔でもらっていく人。
医師に対してはそんなイメージがあるかもしれません。
彼ら彼女たちは、私たちがどんなに苦しんでいる時にでも全く動じず、平然としているようにみえます。それどころかこっちが必死で訴えているのに、それを面倒くさそうに感じているように見えることもあります。
私たちの病気の体験は、体の変化から、受診するかどうかの悩み、実際の受診、血液検査、CT検査、結果報告と治療方針の決定まで、一切が非日常。医療には驚くほど生活感がありません。頼れる医者は目の前のただ1人だけです。
しかし医師にとってはどうでしょう。起きる、食事、医療、トイレ、寝る。医療は日常、医療は仕事です。医師はたくさんの患者と毎日毎日接しており、私達はその中の1人です。
医療と人生における関係の、患者と医師のこの圧倒的な差。
それが最初にあげた私達が思う医師のイメージを作っているのかもしれません。
本書はオランダの日刊紙のコラムで、医療従事者(医師だけでなく)が「自分の人生を変えたひとりの患者」として語ったものがまとめられた本です。
本書を読むことで、医師も目の前の患者としっかり向き合っており、そこには人間的な感情がしっかり存在するのだと安心することができます。
医者は苦しんでいる患者がいれば救いたいともちろん思っていますし、治療の過程では多くの悩みや葛藤もあるし、結果がよいものでなかった時には悲しんでいます。
そしてそういう経験から多くのことを得て、また次の一歩をすすんでいくのです。
この本を読んだ私たちは、医療をうけるときに医師に対してどのような態度で臨めばよいのでしょうか。
人生を変えるような特別な患者だと思ってもらうために、大袈裟に必死でアピールをする必要はありません。
そうではなく、医師がこれまで患者と向き合ってきたことでたくさんのことを得たのだと信じて、安心してそこにいればよいのではないでしょうか。
それにしても…
たくさん語られるどの物語も、あまり構成がうまくありません。あと文章中にところどころ「ここ大事なポイントやで〜」的な太文字の箇所があるのも余計なお世話だと感じます。
この原因は一つに、著者や翻訳者側の問題なのでしょう。
もう一つ、「医師は誰しも、語るべき物語をもっています」との医師の言葉が本書のはじめに引用されていましたが、そこにこう付け加えなければならないのかもしれません。「しかし、医師はうまく語る能力を持っているとは限りません。」
まあそうだとしても、それは単純な能力だけのせいではないのでしょう。
物語が非日常、病気、生と死などのテーマであるために、話す機会はなかなかなく、また話し方の技術に磨きをかけることに後ろめたさのようなものを感じて抑圧もかかるのだと思います。(あとそういうことを語っている自分に酔っちゃってる医師もたまに見かけます)。聴き手もその物語のテーマゆえ圧倒されて、内容が内容だけに批判的な��ともいいにくい、という状況になってしまうことが多いのではないかなと思います。
医師も語ることを磨かなければいけませんね。
といって、語るのがうますぎる医師もなんだか胡散臭い感じはするのですが。
そんなことを感じた一人の医師です。
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医師や看護師などになる人に読んで欲しい1冊です。皆1人の人間であることを忘れてはいけない、医師も看護師も患者と同じなのだと思いました。日本には無い安楽死の話もかなり考えさせられました。安楽死にするもしないにも相当の苦難があることがわかって難しい問題だと感じました。
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89の医療関係者の声。
医師と患者の繋がり、そしてその家族も含めてさまざまな経験を経て、医療は成り立っていると実感。
やはり人と人のコミュニケーションや思いやり、お互いに成長し医療が向上する、とすべての人が理解できると願う。
オランダの安楽死について、もう少し知りたい、学びたいと思う気持ちも芽生えた。
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オランダの日刊紙の連載コラム『ある特別な患者』に寄せられた医療従事者たちへのインタビューをまとめた作品。文化や歴史的背景が異なっていても、オランダと日本の医療従事者が悩み葛藤する部分は同じなんだとわかった。ヘロインに手を出したことをきっかけに転落していく移民の患者さんを診ていた医師の言葉『素晴らしい資質を持った人でも「運」に愛されなければ幸せにはなれない。』は重く、現在自分が手にしている幸運に感謝しないといけないと思った。
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ある特別な患者
著者:エレン・デ・フィッサー
訳者:芝 瑞紀
発行:2021年12月10日
サンマーク出版
89人の医療従事者に、自分にとって特別な患者となった人との思い出についてインタビュー。著者はジャーナリストだが、各編はすべて取材を受けた医療従事者の一人称で書かれている。ほとんどが医師だが、看護師も少し、また、歯科医師、獣医師、医療ソーシャルワーカー、元医大生、救命救急士も各1名。日本と大きく違うのは、英語版出版に際して追加取材した人以外はオランダ人ばかりであるため、かかりつけ医の制度があること、そして、安楽死が認められていること。
医師として、看護師として、それまでの考え方や姿勢が変わったような強烈なエピソードや出会いなどが語られていて、どれを読んでもずしんとくるが、さすがに89編ともなると飽きてくる面もある。最も印象に残ったのは、生まれながらにして容姿が〝普通ではない〟患者の事例だった。
22.鏡の中~小児・頭部変形
7歳になるケイティは、母胎の中でいくつかのパーツに分かれるはずの頭蓋骨が癒着し、脳の成長が妨げられていた。眼窩の容積が小さく離れた位置に。上顎が後退し正常な呼吸ができない。既に数々の手術を受けてきたが、顔を完全に作り変えることに。額と眼窩と顎を二つに切り離し、中央に寄せながら結合させ、同時に前方に(顔の中心部を)引っ張り出す。
無事成功。「とても可愛くなったでしょ?」と彼女の新しい顔をほめちぎった。両親も嬉しそうだったが、ただひとりケイティだけ幸せな気持ちになれなかった。鏡に映る全く知らない顔を見て、アイデンティティを見失ってしまった。「私はみんなとまったくおなじようにいきなくちゃいけないの?」と彼女。彼女はカウンセリングの結果、悩みを解消したが、医師たちは大いに驚かされた。以後、「見た目がよくなる」とは絶対に言わないようにしている。
これと似たようなエピソードはもう一つあった。
48.闘志~頭蓋骨異常
その子は生まれたときに眼窩が浅く、目が飛び出ていた。頭蓋骨のつなぎ目が通常よりも早い時期に癒合する病気。頭蓋骨の容積が狭く、顔の形も普通の子供とは随分異なっている。彼女は何度も手術を受けたが、どこに行ってもじろじろと見られた。一度、近くを通ったバスが道の真ん中で急に止まり、運転手と乗客が身を乗り出して彼女の顔を見ていたことがあったほど。彼女は周囲の人たちが自分の陰口を叩いているのに気づいていたが、とても明るい子でその表情からはこんなメッセージが伝わってきた。「見て、これが私の顔なの。何か問題あるかしら?」。彼女は看護師になった。
ミステリー小説のようなこんな話も二つあった。
54.早とちり~落下事故
夜10時頃に女性がERに運び込まれる。8階のアパートから飛び降り(自殺だろうと彼女の夫)、全身血まみれ、顔は原形をとどめず、全身のいたるところが骨折。大規模手術チームが編成され、外科医たちが手術、かかりつけ医、血管外科医、形成外科医、耳鼻咽喉科医、神経外科医、歯科医・・・多くの医師が出入り。麻酔科医研修2年目のロブは、こんなことして何になるのだろうとい���考えが頭をよぎる。自ら望んで人生を終わらせようとした女性なのに。
朝8時に彼は帰宅、午後6時にまた来ると手術はまだ続いていた。長時間麻酔は危険だと告げる。そのため24時間で手術は終了、彼女は人工呼吸器につながれたが、麻酔による後遺症はなし。ロブは彼女のことを少しずつ忘れていたが、2ヶ月後にまだ集中治療室で意識不明であることが判明、なんという時間と資源の浪費だろうと心の中でつぶやいたが、数ヶ月後に容体が回復し始め、人工呼吸器が取れそうになった。しかし、妙なことに、それから夫の来院回数が減り始めた。人工呼吸器が外された日、彼女は意識を取り戻して言った。「夫が私をバルコニーから突き落とした」。夫は逮捕され、殺人未遂を自供した。
80.ピーナツバター・サンドウィッチ
職場でとつぜん倒れた女性が運ばれた。脳のスキャンをしても異常なし。しかし、心停止。両親とボーイフレンドも駆けつける。ボーイフレンドが彼女のカバンをかき回してドナーカードを探し出し、臓器提供の意思表示、両親もなんとか納得。
臓器を取り出す前に、瓶10本分の血液を採取し、大学病院に送って彼女の「組織型」を確認してもらう。臓器適合者を見つけやすくするため。毒性学者にも血液サンプルを送った。すると、謎の物質を採取した形跡が見られると連絡があった。法医学研究所に遺体が移されたものの、遺体に血液が残っておらず、それ以上調べられない。でも、「組織型」用の血液サンプルが大学病院にまだ残っていた。調べると「シアン化合物」が出た。ボーイフレンドが作ったピーナツバターチョコのサンドウィッチに毒が盛られた疑い。しかし、シアン化合物はそこからは発見されず。やがて、彼が自白した。彼が研究室で使っていた防腐剤を入れたのだった。そこに含まれる化学物質が体内でシアン化合物に変化することを、化学者である彼は知っていた。サンドウィッチからは防腐剤が検出され、彼は逮捕。彼には境界性パーソナリティ障害があった。彼女の臓器提供の意思が、彼の完全犯罪を見抜くきっかけとなった。
一歩間違えば・・・という体験も
66.内なる声~帝王切開
タンザニアで牛車に乗って村から病院に運ばれた妊婦。足の間からは真っ青な手とへその緒が垂れ下がっていた。牛車に乗せられてすでに10時間。へその緒に脈拍はなく、胎児の心音もなし。念のため助産婦にも確認、やはり同じ結果。帝王切開で出す場合、土や砂で汚れた胎児の手を子宮内に押し戻さないといけないが、子宮内感染の恐れあり。残された道はおぞましい方法、膣から取り出せるように胎児の身体をぐしゃぐしゃに潰す方法。
しかし、考えを変えて帝王切開することに。お腹から取り出した胎児は、一度小さく息を吸ったかと思うと、大声で鳴き始めた。生きている!ようやく手の震えが止まったのは、最後の縫合が終わってからだった。
74.寝不足~大動脈瘤
あと1ヶ月で卒業という医大生、かかりつけ医の卵として活動していた。夜間の往診を終えてベッドに入りかけた朝5時に呼び出された。9時半まで待ってもらい、少し寝て患者のところへ。腹痛は消え、顔色もいい。念のためにかかりつけ医で尿検査をしてくださいと言って帰ろうとした時、「ここに変なこぶがあるのだが」と患��から言われる。大動脈瘤の症状だった。破裂したら終わり、すぐに救急車で運ばれて手術は成功。外科医からも患者からも適切な診断と手配を称賛された。しかし、彼はあのまま帰っていれば死なせていたと深く反省、卒業して学位は取ったが、医師になることはやめて毒物学者に。
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5.自転車競技選手グレン
10ヶ月前に大腸癌の手術、他の臓器に転移。医師に全く敬意を払わず、率直な物言いをする。しかし、彼の皮肉やユーモアに惹かれる。彼のお陰で、病院で行うエクササイズ・プログラムができた。非常に親しくなったが、安楽死を頼まれ、結局は引き受ける。以前にサイクリング用のジャージをくれると言ってきたことがあったが、患者からものをもらうことに抵抗があって断った。彼の死後、奥さんが小包を持ってきてくれた。中身はサイクリングウェア一式と短い手紙。「どうだ?今度こそ受け取ってくれよ」と書かれていた。
6.適応力~虐待
家庭内暴力の解決が難しいのは、被害者が加害者を「愛している」場合が多いから。
20.お人好し~強迫性パーソナリティ
婦人科医ミークはその女性の出産後になにかと親切にしてあげたら、VIP待遇だと勘違いされた。病院の受付に手紙を置いていくようになった。お誘いの手紙。ミークは一線を引き、病院法務部と相談して手紙のやりとりを終わらせた。すると、性的なニュアンスを感じる内容の想像を絶する量の匿名メールが届くようになり、不安を越して恐怖を感じ、警察に届けると言うとやっと止まった。1年ほど続いた。彼女からだとは夢にも思っていなかったが、あるとき、その女性の主治医である精神科医から連絡があって、彼女と一度だけ話し合って欲しいといわれた。彼女はストーカーしていたことを告白した。
51.難題~腸壁破裂
妊娠20週目の胎児がエコー検査の結果、腸壁破裂を起こしていることが判明。心臓異常も判明。婦人科医はその若い夫婦に「妊娠を終わらせるつもりはありますか?」と聞くと、怒りのこもった声で「妊娠を終わらせるなんて論外、二度とそんなことを言わないで」と返した。医師は、働き盛りの若い夫婦が障害のある子を受け入れるはずがないと考えていたが、それは大きな間違いだった。何事も第一印象で判断してはならない、他人がどんな船体をするかは誰にも予測できない、ことを学んだ。
61.透明人間~胃縮小手術
肥満解消に胃の縮小手術をせざるを得ない患者。外科医アーノルドが手術した7番目の患者(女性)が、手術1年後に60キロ減量して訪ねてきた。彼女の変貌ぶりにびっくり。職場の人にさえ「新人さん?」と声をかけられるほどになったとのこと。しかし、残酷な真実も。周囲の人々が、太っていたころの彼女の存在に気づいていなかったということが明らかになった。減量したため、彼女のことなど知りもしなかった人たちがとつぜん積極的に近づいてくるようになった。「太っている人は、他人の目に映らないんです」と彼女。アーノルドは1000人以上にその手術をしている。
78.死の予言~パラチフス
畜産業を営んでいた初老の男性がパラチフスで入院、看護師のアーノルドは彼から死の予言を聞かされる。「私は7日以内に死ぬ。そのとき、きみは私の近くにいるだろう」。不安になったが、命に関わるほどの症状ではなかった。やがて、「明日の朝6時までに私は死ぬ」と。内科医に相談し、診てもらうが特に異常なし。6時15分前に呼び出しがあったので行くと、彼はベッドで白目をむいて苦しそうにもだえていた。そして、本当に死んだ。
85.囚われて~遺伝子異変
遺伝子疾患で段々体が動かなくなる少年。彼は勉強して美大にいきたいと。しかし、今のままではむり。何もできない医師。そんな中、看護師が自動車メーカーに何通も手紙を送り、彼のために手動運転装置を備え、音声操作も可能な自動車を手に入れた。彼は優秀な成績で美大へ、さらに大学院へ。会社を立ちあげて大活躍。患者の人生を変えるためには、薬や治療ではない「別の何か」が必要なことも。彼にとっての最高の治療は1台の車だった。
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医療スタッフ達にとっての特別な患者たちの話。どのエピソードも感銘するところがあるが、全体を通して感じた事は「相手(患者、あるいはその家族)の話を真摯に受け止めて、彼らの背景に想いを寄せる」という気づきがあったこと。かつ、私情を挟まないという客観性も必要。命を扱う現場は、即断即決が求められることがあるが、こういう経験を経験としてしっかり振り返る力のある人が身につけていけるのかも…と。
いざという時に、そういうスタッフに当たりたい。
自分としても人と対峙する時、その人の背景に配慮できるようになりたい。
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オランダ、イギリス、アメリカの医師たちが語る、自分にとっての「特別な患者」にまつわる89のエピソード。
患者の年齢も、病気の種類も様々なケースを見るにつけ、時にギリギリの選択を迫られる医療従事者の過酷さを思う。
「ほとんどの医師は、心のなかに“墓地“を持っている。これまでに亡くなった患者たちが眠る場所だ。
彼らの重みを背負う事は、私たち医師に課された義務だといえる。たとえ自分にミスがなかったとしても、医師はすべての患者の死から何かを学びとろうと努めなければならない」
最後の言葉が重く響いた。
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各話が少し短いので 一冊に89人の話になっているのが できれば 20人ぐらいで1冊ぐらいがよいのかなと思う。翻訳はよいのが、腸壁破裂は腹壁破裂の誤り。これは校正ミスだろうか。サブタイトルの〈医師たちの人生を---〉というのは 医療従事者たちの に直したほうが良いと思う。
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一つ一つもっと詳しく知りたいと思った。それぞれの話の気づきが結局よく聞く内容になってしまうのが惜しい。