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「幽霊屋敷」テーマ(一部変種もあるが)のアンソロジー。テーマ別に限らず各種アンソロジーで頻出の定番作品が殆どで、収録14編中自分が未読だったのは2編(A.ビアス「幽霊屋敷」とPランドン「サーンリー・アビー」)。
本邦初訳で今回の目玉の一つでもあったはずの「サーンリー・アビー」は“英語で書かれた最も恐ろしい小説”ってな評もあるらしいが、そんなに怖いか、これ?
その一方で(既読のハズなのに忘れてた)ワイルド「カンタベリーの幽霊」は、御伽話的な雰囲気を装いつつ、この手のテーマ話を茶化していて案外に面白い。
そしてギルマン「黄色い壁紙」は何度読んでも、怖い。
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『幽霊屋敷』をテーマとする、英米古典中心の、なかなかに豪華なアンソロジー。有名作家・作品を押さえていて既読も多くなりますが、こういうテーマでまとまって読めるのは嬉しい。新訳なのも嬉しいです。かなり読みやすくて既読作品も新鮮。
ポー『アッシャー家の崩壊』は、こういう話だったっけと思い出したり。
ブラム・ストーカー『判事の家』は好きな作品ですがやっぱいいね。なんと不吉な話。
シャーロット・パーキンス・ギルマン『黄色い壁紙』はすごく怖いし、解釈を考えさせられる。医師である夫が、精神的に疲れた妻の療養のため、安静に過ごせる屋敷に引っ越すが、妻は決め付けられた家庭内役割や周りからの安静の強制に強く抑圧を感じている。そんな妻の手記として物語は語られるが、語り手が妙に惹きつけられる黄色い壁紙の不気味な存在感。これはどう解釈すればよいのか。語り手をどこまで信用してよいのか。今回のアンソロジーの中でも特に記憶に残る逸品。
サキ『開けっ放しの窓』もよいですが、いったい何冊のアンソロジーに入っているんだ。少し変わり種でちょっとした驚きもあり、アンソロジーに多様性が出て使いやすいのかな。
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歴史的な作品をまとめて読めるのはとても有り難かったけど、黎明期ゆえどうしても雰囲気が似てくる。前半は「またこのパターンか」と難儀したので日に一編としてゆっくり楽しんだ。そんな中でもギルマンの『黄色い壁紙』は時を超える不気味さを兼ね備え、決して映像化できない文字ならではの恐怖を堪能させてくれた。
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収録作家のラインナップが豪華。それ故、既に他の単行本やアンソロジーで既読の作品が半分ぐらい入ってましたが、手堅く面白い「家」に纏わるホラーを集めたアンソロジーでした。
流石上手いなと思ったのはワイルドの『カンタヴィルの亡霊』(幽霊噺についての諧謔味に溢れてて最高だった)と、ギルマンの『黄色い壁紙』(サイコホラーとして楽しめました)の2作。
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幽霊屋敷を中心とした、「家」が舞台のホラー小説アンソロジー。
序章 開けてはいけない扉がある ジョン・ランディス
「アッシャー家の崩壊」エドガー・アラン・ポー
「幽霊屋敷と幽霊屋敷ハンター」エドワード・ブルワー=リットン
「空き家」アルジャーノン・ブラックウッド
「赤の間」H. G. ウェルズ
「忌み嫌われた家」H. P. ラヴクラフト
「幽霊屋敷」アンブローズ・ビアス
「カンタヴィルの幽霊」オスカー・ワイルド
「サーンリー・アビー」パーシヴァル・ランドン
「判事の家」ブラム・ストーカー
「黄色い壁紙」シャーロット・パーキンス・ギルマン
「呪われた人形の家」M. R. ジェイムズ
「オルラ」ギ・ド・モーパッサン
「和解」小泉八雲
「開けっぱなしの窓」サキ
収録作家略歴・補遺、有り。
開けてはいけない扉があるが、あえて先に進みたいなら、
ページをめくり扉を開けよう。そこにあるのは・・・。
と、選者の「ブルース・ブラザーズ」の映画監督、
ジョン・ランディスが誘うホラー小説アンソロジー。
行かねばならぬ。確かめたい。興味がある。幽霊を見てみたい。
退治したい。幽霊に話しかけたい。壁紙が気になる。
結末が知りたい。住み着いたその存在の正体が知りたい。
彼女が待っているかが知りたい。
何故なら、そこに“家”があるから。
不条理な死、明かされない真相の不気味さ。
ゾクゾクするシチュエーションと真相までが迷宮の如くの語り。
「赤の間」の次から次へと消える蝋燭の怖さ。
幕間のような「カンタヴィルの幽霊」の可笑しさ。
精神を蝕む「黄色い壁紙」の狂気ともとれる気味の悪さ。
既読の作品も多いけど、新訳なので新鮮味があります。
ブルワー=リットンの作品は、平井呈一の翻訳では
後日談が加えられた版なので、比べてみるのも良いでしょう。
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いわく付きの家・幽霊屋敷などの怪談を14集めた、まさしくタイトル通り「怖い家」なアンソロジー。
収録作家・作品も豪華で、読み応えがあります。
ガチ怖なお話からクスッと笑えるお話、なんだか感動できるお話まで、幅広い怪談が楽しめる。
やっぱり幽霊屋敷がテーマだからか、イギリスが舞台の話が多いかも?
海外小説の怪談あんまり読んだことないな〜という方にぜひおすすめしたいです。
全話読んだことがある玄人さんにも、収録作品が定番作品ばかりなので、有名な海外怪談をまとめて読み返したい時にはおすすめかも。
あと表紙絵含め、各話ごとにその怪談の内容のモチーフをふんだんに含んだ扉絵もとても素敵。
読み終わった後に見返すのも楽しい。
星野勝之さんという、たくさんの本の装画を手がけている方の仕事だそうで。すごく素敵だったのでファンになりそうです。
以下各話のタイトル・作者名、感想やあらすじ(あれば)を書きます。
・序章 開けてはいけない扉がある/ジョン・ランディス
このアンソロジーの編者の方による、めくるめく怪談たちへと導く序章。幽霊を見たことはないが、聞いたことはある。という編者の体験談も面白い。
・アッシャー家の崩壊/エドガー・アラン・ポー
言わずと知れたポーの有名な作品。トップバッターにふさわしい。
・幽霊屋敷と幽霊屋敷ハンター/エドワード・ブルワー=リットン
ハンター、というほど派手な戦いはないのだが、幽霊屋敷での得体の知れない不気味さに圧倒されつつも、冷静に対応・幽霊屋敷の仕組みについて考察する主人公が屋敷の現象に立ち向かうところが面白い。
結末もよき。
・空き家/アルジャーノン・ブラックウッド
珍しく屋敷ではなく、一般的な農家が昔住んでいた空き家が舞台のお話。短くも、しっかりと怖い作品に仕上がっててよき。
・赤の間/H・G・ウェルズ
海外怪奇小説としてとても有名なお話。
面白いです。
・忌み嫌われた家/H・P・ラヴクラフト
クトゥルフ神話で有名な作者による怪談話。
忌み嫌われた家のモデルとなった家はアメリカ・プロヴィデンスに実在し、作中で書かれていたように、その付近にポーが一時期滞在していたことも事実とのこと。
かなり読み応えがあり面白く怖いのでぜひとも読んでほしい。
・幽霊屋敷/アンブローズ・ビアス
・カンタヴィルの幽霊/オスカー・ワイルド
もうすごく面白い。イギリス現地の所有者の反対を押し切って幽霊屋敷に住み始めたアメリカからやってきた一家。先進的な考えを持つ一家は、夫婦と一番上の兄、その下の長女、末っ子の双子兄弟の6人家族。幽霊は己が幽霊であることに誇りを持っており、何度も一家を怖がらせようとするのだが…
途中の展開も面白いのだが、最後はまさかの展開。
絶対最後まで読むべき…。ウィットに富んだ感動作です。
この面白さゆえか、やはりというか人気が高く、何度か映画化されているらしい。
・サーンリー・アビー/パーシヴァル・ランドン
アビーは寺院を指すようだが、この幽霊屋敷は寺院とい��か、その敷地内にある別の建物らしい。
本作は「英語で書かれた最も恐ろしい小説」と評されるも、邦訳は初とのこと。
最も恐ろしい…いや普通に怖い話だなと思ったけど、私は忌み嫌われた家や黄色い壁紙の方が怖く感じたかも…?
単純に私の読解力が足りないせいかもしれないです…がみなさんどうでしょう?
それともお国柄の違いかな?
・判事の家/ブラム・ストーカー
有名なドラキュラの作者によるお話。
この作者の怪談は他にも読んだことがあるけど、本作は初めて読みました。
数学を研究する学生(男)が、勉強に没頭するためにある家を借りる。それがタイトルの判事の家。
その家に住んでいたという判事は、相当な極悪人だったようで。幽霊なんて信じない学生は気にせずその家に滞在し続けるのだが…
話の持っていき方といい、結末といい、なかなかに不気味で面白いお話です。
・黄色い壁紙/シャーロット・パーキンス・ギルマン
医者の夫を持ち、精神疾患を疑われている女性による語りで進むお話。療養のために滞在している屋敷で彼女に与えられた部屋には、見れば見るほど不気味な黄色い壁紙がある。
この壁紙が嫌で部屋を変わりたいと夫に訴えるも笑って取り合ってもらえず、仕方なくそこで過ごすことになる女性。
その黄色い壁紙の描写のおどろおどろしさと、次第にその黄色い壁紙に魅了されていく女性の語りが恐ろしさに拍車をかけていく。
壁紙が怖いのか、人間が怖いのか。
ラストのおぞましさは、本書収録作で個人的ナンバーワンかも。
・呪われた人形の家/M・R・ジェイムズ
本作で呪われているのは、人の住む家ではなく、タイトル通り人形のための家。
この人形の家を買い取った男に起こる現象とは…
・オルラ/ギ・ド・モーパッサン
系統としては黄色い壁紙と同系統なのかな。
とある男の日記形式で進んでいく物語。
目に見えないものが存在しないとは限らない…?
そのような思考に取り憑かれ、どんどん狂気をはらんでいく手記は、最後の一行でうわっ!となる。
オルラ…オルラという存在について、あまり本気で考えてはいけない。
ところでこの作者の作品は読みたいと日頃思っていたが、まさかここで初めて読めるとは。
作者の他の作品も読みたい所存。
・和解/小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)
日本人にはかなり馴染みがある作者ではないだろうか。まさかこの本に小泉八雲が収録されてるとは思わなかった(日本人によるアンソロジーではないので)。
このお話はとても短いながらも分かりやすく、怖いというより哀しさとある種情愛の強さを感じられる作品。
・開けっぱなしの窓/サキ
このお話を読むのは2度目。別の怪談アンソロジーで読んだのです。(例によって作者の他の作品をぜひ読んでいきたい所存)
このお話はとても短いながらも、ちゃんと怪談であり、伏線とオチがすごくきいていて、最後はクスッと笑える作品。
ここまでたくさんガチ怖なお話が連なるなかで、このお話をラストに持ってくるのに、編者の手腕を感じた。締めとしてとてもいいお話です。
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家が舞台のホラー小説です。海外の作品ということでじわじわ来るような恐さというよりかは、背筋がゾクリとするような怖さがあったように思います。
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家・屋敷にちなんだ怪談話を集めたアンソロジー。
トップバッターが、ポーの『アッシャー家の崩壊』。このジャンルにおいて、いかに大ポーが世に与えた影響が大きいのか……。
O.ワイルドの作品が、このジャンルにしては珍しく、コメディ+ハッピーエンドで、面白かった。おすすめ。
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西欧の「家(館や屋敷を含む)」にまつわる短編小説を集めたホラー小説です。
怖くて恐ろしいものから切なく悲しいものがメインですが、中には心温まるものや、思わず笑ってしまいたくなるものもあります。
自分としてはブラム・ストーカーの「判事の家」とギ・ド・モーパッサンの「オルラ」が一二を争う恐怖ストーリーで、ゾクゾクしました。
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ちょうど、併読していた村上春樹の「レキシントンの幽霊」にアッシャー家の崩壊にかけたジョークが出てきて、タイミングよく楽しむことができました。
怖さ、ということについて言うと、日本独特の、おどろおどろしい怨霊といった感じとは異なり、ホラーにファンタジー要素を含ませたような雰囲気の作品が多いかも。
とくに、オスカーワイルドのカンタヴィルの幽霊は怖さというより、コミカルさと悲哀が漂う物語でした。
「怖い家」という、家を主題にしているのに、私が海外知識に乏しく、地名や建築様式がわからず、間取りもパッとは想像できずに、検索しながらの読了。
海外古典作品は、当時の時代背景が自然と物語の中に滲んでいて学びも多く、19世紀のアメリカ社会の風潮や、女性蔑視などが本作の短編にも窺え、ホラー以外の側面でも読み応え充分です。